非営利の団体であるMozillaが、広告主の企業やブランドとブラウザのユーザとの会話を助ける、と聞くと奇異な感じを受ける。そもそも、それが何らかのユーザサービスになるとは思えない…そんな会話をしたい人なんか、いないだろうし。でも世界では、奇異なことが毎日のように起きている。
Mozillaが今日(米国時間5/21)ローンチした”Suggested Tiles“は、ユーザが新しいタブを開いたときに、広告主に与えられる特別の広告スペースのことだ。そういう広告はまずFirefoxの次のベータに登場するが、多くはMozilla自身の広告になるようだ。ベータを終了したら、一般リリースにも登場する。
でもMozillaは数か月前からスポンサー付きの’Directory Tiles‘をやってるから、その次がSuggested Tilesなのは意外でもない。Directory Tilesは閲覧履歴のない新しいユーザの画面に出るデフォルトのタイルだが、Suggested Tilesは閲覧履歴に基づいて個人化された広告を出す。これまでユーザが訪れたサイトのカテゴリを見て、そのユーザの関心を推察するのだ。そのためのコードの例がここにある。(Engadget.comやFunkySpaceMonkey.comを訪れているとテクノロジに関心あり、とされるが、なぜか本誌TechCrunch.comはだめなようだ)。
Mozillaはユーザのプライバシーを守ることを鉄則としてきた団体だから、今回の広告サービスはそれを曲げるものにはならないのか? Mozilla自身は、広告主に提供するデータには一定の制限がある、と主張してはいるが。
“Suggested Tilesで、ユーザに関連性のある広告やコンテンツのリコメンデーションが可能にはなるが、ユーザは自分のプライバシーを守るために、そのために使われるデータをコントロールできる”、とMozillaのコンテンツサービス担当VP Darren Hermanが書いている。
ユーザの関心を推察するために利用するURLの数や種類が制限されている(少なくとも5つのURLを使用、二つのURLを組み合わせてSuggested Tileをトリガすることはできない)。どのURLを使うかは広告主が決めるが、Mozillaがそれを許可しない場合もある。Mozillaがユーザのプロフィールを作ったり、クッキーを使ったり、そのほかの追跡ツールを使うことはない。ただしユーザが広告をクリックしたら、その企業がそんなツールを使うことはありえる。しかしMozillaは、URLの集合、というデータを利用するだけで、ユーザの個人情報はいっさい利用しない。
Mozillaによると、この新しい種類の広告によって、広告主はユーザが閲覧を始める前に見込み客にアプローチできる、ということだ。
Mozillaが、ユーザつなぎとめ策として必要ならDRMをサポートする、としぶしぶ決めたように、やはり今回も、しぶしぶの決断だろう。独立の団体としての運営を続けるためにはお金を自分で稼がなければならず、検索パートナーとしてのYahooからだけでなく、ブラウザも収益源にしなければならない。
これをもっとユーザフレンドリな広告事業にすれば、より適切なプライバシー保護ができるのではないか、とも感じる。ただし、今でも、オプトアウトしたければほんの数クリックでそれはできる(右図)。