Eメールが生き残ることを証明する3億6500万の理由

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編集部記 :Len Shneyderは、Message SystemsのIndustry Relations部門のディレクターを務めている。Eメールマーケティング、配信とデジタルマーケティング分野において10年以上の経験がある。

直近の5四半期の間で、投資家はEメール関連企業に対して前向きな姿勢を示してきた。アナリティクス、インフラ、広告やサービスまで、Eメール関連企業に累計3億6450万ドルの資金が流れ込んだ。新しく資金が投じられた企業の最近の成長ぶりは、Eメールがスタートアップやその他の法人にとっていかに堅実で、信頼されて重要なものであるかを証明している。

順に追っていくと、堅実な働きぶりが評価されたResponsysExact Targetは素晴らしいエグジットを達成した。Campaign Monitorは、巨額の資金調達ラウンドを行った。これらは、Eメール関連企業の価値を示唆している。

マーケティングクラウドの拡充

マーケティングクラウドだけでも、Salesforceのマーケティングクラウド (Exact Target)、Oracleのマーケティングクラウド (Responsys、 Eloqua)、Adobeのマーケティングクラウド (Adobe、 NeoLane)、IBMのExperience One [これもマーケティングクラウド](CoremetricsUnicaDemandTecXtifySilverpop)などがある。これらの取り組みから、法人向けのデジタルメッセージ技術に対する需要が高いことは明らかだ。各社が行った何十億ドルでの企業買収は、マーケティング分野への投資と同じ意味を持っている。投資家が今後も、自社のマーケティングフレームワークの拡充のために近い将来、企業買収を計画していたとしても何ら不思議はない。

モバイルアプリとソーシャルネットワークでさえ、Eメールの力を借りている。

StatistacomScoreによる2014年のモバイル端末での人気アプリの調査では、Eメールアプリ(主にGmailアプリ)が10位以内に入っていた。他に10以内に入っていた固定通信アプリはFacebookだけだった。もちろん、その分野の覇者であるFacebookが一番で、Eメールは次点だ。とはいうものの、Facebookも自社サービス内で起きていることをユーザーに伝え、戻ってくるのを促すためにEメールを活用している。彼らが送信するEメールの量は、ひとつの企業のEメールトラフィックとしては他のどこよりも多いかもしれない。

他の例としては、LinkedInが挙げられる。彼らもサービスの至る部分で、ユーザーを自社サービスに惹きつけておくためにメールを活用している。LinkedInはユーザーがサイトに作成したコンテンツのエンゲージメントの獲得と拡散にメールを上手く活用したパイオニアだ。

LinkedInは、3億6400万人以上のユーザーを抱え、定期的なユーザーとのコミュニケーションで彼らをつないでいる。誰かがユーザーのプロフィールを見た時、ユーザーの現在の仕事と似た仕事の募集要項が掲載された時、その他のメールの自動配信の要件が満たされた場合もユーザーにメールで連絡している。

Eメールのプロバイダーはまだ重要

前述の3億6450万ドルの投資額の大部分は、Campaign Monitor(2億5000万ドル)、Autopilot(1000万ドル)とIterable(120万ドル)に渡った。これらの系統は多少異なるが、Eメールサービスプロバイダーやマーケティングを自動化するスタートアップで、企業がEメールキャンペーンの管理と配信を補助するサービスを提供している。

EメールのROI(投資対効果)は、1ドルの投資に対して40ドル から45ドルの効果と算出されている。企業は、一定の分野に特化したメールサービスへの投資に前向きだ。これらの企業や他のESPメールサービスプロバイダーが提供するサービスは多岐に渡っている。

例えば、プロの戦略マーケティングから、アトリビューションモデリング、マルチチャンネルのキャンペーンツール、更にはユーザーへのドリップマーケティングやキャンペーンの作成を簡単に自動化する、自社で使用できるフロントエンドのツールなどがある。このようにメール配信とビジネスを連携するのは専門的な分野であり、多くの企業がアウトソースしたいと考えるものだ。

クラウドへの移行

Eメールは定義上はクラウドテクノロジーではあるが、実際には、どこかで誰かが不規則なキューで動くSMTPサーバーを運営管理していた。オープンソースのソリューションでは、星の数ほど大量のEメールを送るための方法を開発しようと試みてきた。

しかし、大規模なメール配信の要求を満たすには、複数の受信ドメインとそれぞれの要件に関する専門知識が必要だった。Message Systems (2700万ドルの資金調達)とSendgrid(2000万ドルの資金調達)は、DIYが得意な世代の企業のために、APIで利用できる、クラウド上にEメールのためのインフラを構築した。彼らは、規模の経済を活用できるクラウドテクノロジーの開発に力を入れてきたのだ。

アナリティクスと、多種多様なEメールサービスの台頭

Eメールは、クロスプラットフォーム、クロスデバイスで、究極のクロスチャネルで通用する媒体だ。 Litmusによると、Eメールの半数は、モバイル端末で開封されるそうだ。これは、Eメールは、Eメールの内容に限らず、使用されたデバイス、開封後のメールのライフスパンとコンテンツ機会といった情報の全てが重要であるということだ。

Return Path(3500万ドル)のような企業は、送信したメールの強力なトラックと計測ツールを提供し、キャンペーンの問題の特定や効果を測定している。Eメール配信、計測と次の行動に結びつくデータ分析の三拍子揃った時に開かれる可能性が、投資家を惹きつけているということだ。

Email Copilot(130万ドル)は、配信の問題に焦点を当てている。5通に1通は、目標の受信者に届かない。全体のメールの開封率、直帰率やその他の指標の分析は、送信者が問題などを予見し、回避することにつながり、リアルタイムでの情報が手に入る。LiveIntent (2000万ドル)は、メール内広告のプラットフォームを展開し、インボックス内での動的な体験を提供している。モバイルのアプリ内のような体験をメール内のコンテンツに持ち込もうとしているのだ。

ベンチャーキャピタルによるEメールへの投資は、全体の一部にすぎない。Eメール市場は、それよりもずっと大きいだろう。今は巨大なマーケティングクラウドの一部となった、補助的なサービス、あるいはプロのコンサルティングサービス企業の買収額を足したら、マーケティングコミュニケーションとテクノロジーの分野がいかに大きいものかが分かる。

このような大型取引から分かることは、メール、アナリティクス、インボックスのパフォーマンスとユーザーエクスペリエンスがそれぞれ向上していて、投資家を惹きつけているということだ。彼らは、メール内の広告枠取引の可能性、またクラウドベースのメールのプラットフォームあるいはインフラへの移行における可能性を注視しているだろう。メールは死んでいないのだ。そして、ビジネスの対人間のコミュニケーション手段だけではなくなったということだ。

メールは動的で豊富なメディアの一部を担い、有効なコンバージョンの手段だ。メールが特別なのは、メールの投資対効果は、長い間他に類をみない水準であったということだ。これからもコミュニケーションツールの筆頭であるだろうし、その重要性は変わらない。Eメールへの継続した投資、グロース、拡充と進化が見込まれる。Eメールは健在だ。そしてこれからも生き残る存在だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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