PistonをCiscoが、Blue BoxをIBMが買収、OpenStack市場の整理統合が進む

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Ciscoが今朝(米国時間6/3)、プライベートクラウドとOpenStackの専門企業Piston Cloud Computingを買収した、と発表した。同社は昨年秋にはMetacloudを買収しており、このようにOpenStackのスタートアップを大企業が買収することによる市場の統合化が、始まっているように見える。

CiscoだけでなくIBMも最近、OpenStackによるプライベートクラウドサービスBlue Boxを買収している。OpenStackの支配をめぐる大企業間のタタカイが、いよいよ熾烈になってきたようだ。

OpenStackは明らかに成熟期を迎えており、成熟期を示す現象の一つとして、スタートアップたちのドミノ倒しが始まっている。そしてOracleやIBM、HP、EMC、などの大企業が、これらの企業の価値に着目して、OpenStackという成長市場の、なるべく大きな分け前を手中に収めようとしている。OpenStackの技術は人材が乏しいから、必然的に、自社で新たに部門を作るよりも、すでにあるものを買う、という選択になるのだ。

そしてCiscoやIBMなどの企業は、必要とする人材だけでなく、貴重な関連知財も入手する。

OpenStackは今年で6歳になるオープンソースのコンピューティングプラットホームで、最初はAmazonのクラウドコンピューティングサービスの急成長に対する対抗勢力として構想された。OpenStackでは、パブリックな、あるいはプライベートなクラウドを作る方法も最初からオープンであり、基本機能であるコンピュート、ストレージ、およびネットワーキングをはじめ、今日の現代的なクラウドコンピューティングプラットホームが必要とするサービスがすべて揃っている(顧客先の実装はプライベートクラウドが多いが)。また、Hadoopやコンテナなど、このところ使われる機会の多いソフトウェアパッケージを、その上で容易に動かすためのさまざまな方法も提供している。

OpenStackは最近とくに、関心と利用が広がったため、大企業の目にとまることになり、彼らもその市場に参戦してきた。大企業は複雑なプライベートクラウドを求める顧客を多く抱えているので、OpenStackのまさにオープンな技術に、開発の効率化や低費用化などの機会を見出そうとしている。そこでたとえばOracleは先月、廃業したNebulaから40名の技術者を拾い上げ、自社のOpenStack部門の増強を図った。EMCが昨秋CloudScalingをさらったのも、類似の例の一つだ。

皮肉なことに、Pistonの協同ファウンダで最初のCTOだったJoshua McKentyは、OpenStackの初期の支持者だったが、最近では“このプロジェクトは心を失った”と嘆き、隔年で行われるOpenStack Summitにも行かなくなった。彼がそう感じた理由は、プロジェクトの企業化だ。その彼が今回は、その憎むべき企業化に自ら手を貸したのだ。

Pistonのメインのプロダクトは、OpenStackのためのオペレーティングシステムCloudOSだ。それの主な利点は、サーバのクラスタ群をあたかも単一のリソースプールのように管理できることだ。Mesosphereが、そうであるように。

Blue BoxはOpenStackをベースとするマネージドクラウド(管理サービスつきのクラウド)のプロバイダで、IBMは同社のハイブリッドクラウド戦略を加速する方法の一つと見なしている。戦略というのは、IBMはいずれ、ハイブリッドクラウド市場を支配するつもりだからだ。Blue Boxの買収により、顧客はデータとアプリケーションを、複数の互いに異なるクラウド環境にまたがって、デプロイできるようになるだろう。

OpenStackプロジェクトの成長とともに、そのまわりにスタートアップたちの大きなエコシステムが形成された。しかしこれらの企業にとっては、エコシステムそのものの成長と充実が遅いため、その利用はまだあまり活発でない。

今年バンクーバーで行われた最新のOpenStack Summitでは、ComcastやWalmartのような優れた実装例が紹介されたが、でもまだ、OpenStackに関しては、小規模な試用、実験、あるいは様子見、という段階の企業が多い。OpenStackは、構造が大きくて複雑なため、実装が難しいのだ。

スタートアップから見ると、エコシステムの成長のペースは遅い。だからその反作用として、大企業への吸収も避けられないだろう。この休眠状態に耐えられるのは、OpenStackがメインの収益源ではない企業だけだ(たとえばOpenStack以外で稼いでいるストレージやネットワーキングの企業)。そのほかの、OpenStackをメインでやってきた企業、たとえばMirantisなどは、市場が十分成熟するまで持ちこたえることができず、今にも買収されそうな瀬戸際に立っている。

CiscoやIBMのような大企業は、この、実装〜実採用のペースの遅さから漁夫の利を得ようとしている。停滞している企業をさっさと買い上げて、自分たちのOpenStackショップを作るのだ。しかしそうやってビッグネームがOpenStackづいてくれば、小さなスタートアップしかいなかった時代に比べて、採用のペースが大きく上がることも期待される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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