日常誰も空気のことは考えないように、インターネットを使っていてもルータのことは考えないのが理想だ。それはどこかに座っていて、あなたが見たいYouTubeビデオをあなたのラップトップに持ってきてくれるだけだ。
でも実際には、インターネット接続の調子が悪くなったらルータをリセットする人が多いだろうし、ルータの設定を変えなければならなくなったら、すごく面倒と思うだろう。今では至るところにある装置なのに、今だにそのユーザインタフェイスは劣悪だ。そこでまた、Googleさんの登場となる。Googleがこのほど発売した200ドルのOnHubルータは、今日のルータの欠点をすべて直した、と言われる。そして確かに、それはほぼ当たっている。
このルータを数日試してみたが、もうVerizonが提供してくれたActiontecルータに戻る気はしない。OnHubのWiFi対応の広さとユーザ体験の簡便さは、これまで使ったどのルータよりも明らかに優れている。
何がOnHubをそうしているのか? GoogleはTP-Linkとパートナーして、現代的なルータはこうあるべきだ、というものの参照モデルを作り、それをかわいい円筒形のケースに収めた。だからまず形状からして、これまでの無愛想なNetgearのボックスとは違うぞ、と主張している。その中では小さなコンピュータが、ルータの仕事をすると同時に、通常のルータよりも多いアンテナをはじめ、その全能力によって、どんな通信チャネルの上でもベストのデータフローを確実に実現する。
ベストのWiFi接続はOnHubが見つけるから、自分でWiFiを指定する標準のルータよりもずっと良い接続が得られる可能性もある。あたりにアクティブなWiFiがとても多い地域なら、とくにそう言えるだろう。
家庭内のWiFiネットワークがほしいだけの人に対しても、OnHubはいろんなおまけをくれる。
ぼくのMacbook Airは現在、約25のネットワークを拾うが、その数が増えるに伴ってネットワークのトラブルも増えた。とくに夜は、誰もが自分のラップトップやタブレットでネットに接続しているから、たとえばNetflixのビデオを見ていると、ひんぱんにバッファリングをするし、完全にホールトすることもある。
でもOnHubに換えてからは、ネットワークのスループットは上がり、ビデオは始動がはやくなっただけでなく、バッファリングという問題はまったくなくなった。もちろんユーザの住んでる場所などで違いは大きいと思うが、すくなくともぼくの場合は、自宅のWiFi接続が驚異的に性能アップした。
しかしOnHubは、ハードウェアだけの製品ではない。ルータのセットアップと管理は、AndroidまたはiOSにインストールしたアプリから行う。スマートフォンとルータはなんとオーディオで接続し、ネットワークの名前とパスワードを指定すれば、それだけでセットアップは終わりだ。
OnHubにはあの失敗作Nexus Qを思い出させるようなLEDのリングがあって、その色でルータのステータスを知らせる。ブリンクはしない。
モバイルのアプリを使ってWiFiのパスワードをほかの人と共有したり、特定のデバイスにネットワークアクセスの優先権を与えたり(たとえば今遊び中のXboxとか)、どれぐらい帯域を使ってるか調べたり、またルータの基本機能をすべて管理したりできる。
標準のルータに比べるとオプションは単純化されているが、簡単であることもOnHubのねらいのひとつだ。それでもWANやDNSの設定にはアクセスできるし、ポート転送(port forwarding)やUniversal Plug-and-Playのセッティングもできる。ルータだから当然だが。
家庭のWiFiネットワークの管理は誰もがやりたがらないが、でもOnHubはそれを、できるかぎり簡単にしている。柔軟性はすこし犠牲になっているが、それはほとんどの人にとって無縁な部分だ。しかし家庭内のWiFiネットワークがほしいだけの人に対しても、OnHubはいろんなおまけをくれる。
家のWiFiに問題がある人は、ぜひOnHubを試してみるべきだ。
ただし構成オプションは、かなり端折(はしょ)られている。Ethernetポートは一つしかない。ほとんど完全に、WiFi専用機だ。デスクトップがリビング以外の部屋に一台だけなら、あまり問題ないが、WiFi非対応機が複数あるなら、OnHubはあきらめよう*。Googleは今、ほかのパートナーと、これと同じようなルータを開発しているから、その機なら、複数のポートがあるだろう。〔*: WiFi対応Ethernet分配器(switch)は使えないのか?〕
OnHubは、弁解の余地なく未来を向いている。その点では、初期のChromebookなどと同じだ。たとえば、接続はWiFiのみ。物理ラインはない。しかもWiFiルータ以外の機能もいろいろあるから、それは家庭に送り込まれたトロイの木馬でもある。
たとえばOnHubは近く、GoogleのIoTプロトコルWeaveをサポートする。IoT対応になればもはや、単なる優れたルータではない。それは家庭において、Googleのスマートホームシステムの、中心的なハブになる。そのためにはルータが、家中の機器と通信しなければならない。ルータのネットワークリーチを長くするだけでなく、リビングにふさわしいインテリアデザインも必要だ。ネットワークケーブルのリーチは別の問題だが、それは今ここでの話題ではない*。〔*: ルータを家の中心に置く、というイメージか。〕
未来の”Google On”の姿は、実際に見るまで分からないし、本当に”Google On”と呼ばれるのかも不明だ。現時点での現実的な問いは、この200ドルのルータは買う価値があるのか?だ。今OnHubは、まさにルータだから(まだスマートホームのハブではない)。
電波が混んでいたり、ルータのリーチが短かすぎて、家のWiFiに問題がある人は、ぜひOnHubを試してみるべきだ。何も問題がなくて接続が安定している人には、いますぐOnHubを買うべき理由はない…次の製品を、楽しみに待とう。ぼくの場合は、もう、昔のルータには戻れないけど。