タトゥーシールのようなヘルスケアトラッカーに曲がるバッテリーがウェアラブルの未来を作る

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編集部記Don Basileは、Crunch Networkのコントリビューターである。Don Basileは起業家でベンチャーキャピタリストであり、テクノロジー、ヘルスケア、通信業界で20年以上の役員経験がある。

2009年にFitbitといったマス向けのウェアラブルデバイスが登場した時、多くの人はコンシューマーが歩数やカロリーを計測することに必要性を感じるのか疑問に思ったかもしれない。しかし、テクノロジーが進化し、デバイスもかっこよく使いやすくなるほど、ウェアラブル市場は急激に成長した。

世界のウェアラブル市場は2019年に1億2600万個が出荷されるまで拡大することが予想されている。2014年は1960万個が出荷された。ウェアラブルのアプリはフィットネストラッカーだけに留まらない。ここでは、ウェアラブルテクノロジー分野に革新をもたらすだろう、3つの先進的なテクノロジーを紹介しようと思う。

バッテリー革命

ウェアラブルのテクノロジーがスマートフォンやタブレットほどユビキトスになるほど、バッテリーも小型で長い時間持つようになる必要がある。それに加え、薄く、柔軟性に優れてなくてはならない。Samsung SDIやLG Chemはこの分野で一歩先を進み、ソウルで開催されたInterBattery 2015で新製品を出展した。

Samsungは2つの新しいバッテリーを発表した。0.3mmのStripeはとても薄くしなやかなバッテリーで、バッテリーのシール幅を最小限にすることで市場に出ている他のバッテリーより高密度なエネルギー電池を実現したとSamsung は主張する。薄く柔軟なStripeの実現で、ネックレスや衣類といった形のウエアラブルデバイスの可能性が広がる。

もう1つの製品Bandは、元のスマートウォッチのバッテリー容量に最大50%追加することができるものだ。バッテリーを5万回以上曲げて耐久性を検証したという。Samsungはこの製品を2017年頃コンシューマー市場に投入する予定だ。このバッテリーの形状と機能は市場に大きな影響をもたらすかもしれない。

2012年から開発を進めているLG Chemも新しいフレキシブルなスマートウォッチ用のバッテリー を公表した。このバッテリーは、半径15mmに収めることができる。これは、市場にある一般的なバッテリーの半分のサイズだ。ワイヤー型バッテリーで自由なスマートウォッチのデザインが可能となるだろう。

ウェアラブル・ヘルスパッチ

タトゥーシールのように肌に貼る薄いウェアラブルデバイスでバイタルサインをモニタリングすることができるようになる。SFの話のようだが、数年前から実用化が進んでいる。最近までこのようなトラッカーを制作するのには高額なコストと多くの時間がかかった。テキサス大学の研究者は「カット・アンド・ペースト」方式でトラッカーをお手軽な価格で制作時間も20分に抑える方法を開発した。

Don Basile Wearable Tech

(出展– Shutterstock)

ポリマー接着剤に乗せた金属片を切り取り、接着剤の上に電子回路を印刷する方法だ。このようなパッチはまだヘルスヘアの領域で使用されてはいないが、ゆくゆくはこの最新の技術革新で、医師が患者のバイタルシグナル、心拍数、筋肉の動きをトラックするためにいつでも使用できるようになるだろう。

ナノテクとウェアラブル

原子や分子レベルで物質を組み替える技術は、ウェアラブルテクノロジーにさらなる機能を与えることができる。Google Xは2年前、血中のがん細胞を検出するとスマートなリストバンドに光信号を送る磁気性のナノ粒子を開発した。今年の初めに、Nanoparticle Phoresis(ナノ粒子泳動)という名前で特許を申請している。Googleはがんや他の病を検出して治療する方法に革新をもたらすという非常に高い目標に向かって進みだした。

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(出展: Syda Productions – Shutterstock)

また、炭素を六角形格子構造で結合した1原子の厚さのシートである魔法のグラフェン素材は、研究所で作られた素材の中で最も薄く、強い素材だ。2003年に発明されて以来、2万5000の関連特許が誕生した。グラフェン素材の最新の使いみちはウェアラブルである。布をコーティングし、空気中の危険な気体を検知すると、着用している人にLEDライトの点灯でアラートを出すことができる。

韓国の韓国電子通信研究院と建国大学校の研究者がこの研究を牽引し、空気環境が健康に被害を及ぼす可能性のある業界での活用が期待される。計測装置を着用することで、そのような脅威に素早く対処することが可能になる。グラフェンはさらに、電子製品の熱を抑える機能があることが証明され、このナノ素材はウェアラブルテクノロジーにおいて次の大きなカギとなるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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