山登りアプリ「YAMAP」運営のセフリがコロプラなどから総額1.7億円を調達

山登りの時に役立つオフライン地図や登山情報を提供するアプリ「YAMAP」を展開するセフリがコロプラをリードに、大和企業投資、ドーガンの3社から総額約1.7億円の資金調達を行ったことを発表した。また3月15日付で既存投資家であるサムライインキュベートの玉木諒氏がセフリの監査役に就任する。今回、セフリの代表取締役を務める春山慶彦氏に資金調達の経緯を聞いた。

YAMAPの特徴は電波が届かない場所でもGPSを使って経路を確認したり、登山にかかった時間などを記録する機能、そしてその登山記録や山に関する情報を他のユーザーと共有するできるオンラインコミュニティーの側面を持ち合わせていることだ。これまで登山に関する安全対策や登頂までにかかる時間や経路といった情報は、各学校の山岳部や山登りを趣味とするコミュニティーの間では盛んに共有されるものだったと春山氏は言う。YAMAPの目標はこれまで各登山コミュニティーの持っていた情報を一つの場所にまとめることという。自然の山の状況は刻々と移り変わっているため、YAMAPを見るだけで最新の情報が確認できる状況にしたいと春山氏は話す。例えばこの道は現在通行止めになっているといった最新情報が投稿されれば、他のユーザーはそれを見て危険を回避し、事故防止にもつながるだろうと話す。

2013年3月にローンチして以来、YAMAPアプリダウンロード数は26万を達成し、月間のPV数は900万に登ると春山氏は話す。今回の資金調達を持って、今後1、2年の間はアプリダウンロード数とユーザー数を伸ばし、コミュニティーを育てていくと春山氏は言う。まずは、YAMAPのユーザー同士がすれ違ったら通知が届く機能やユーザー間でオフラインでもコミュニケーションが取れる機能といったアプリの機能拡充を行い、ユーザーエンゲージメントを高めたいとした。

また、海外ユーザーにも積極的にリーチしていくと春山氏は言う。北米ではキャンプや自然とふれあう機会が教育の一環に取り入れられたり、社員研修にも行われたりしていると春山氏は言う。YAMAPのAndroidとiOSアプリも英語版をすでにリリースしていて、最近ではニュージーランドやスイスの山々の情報も追加し、海外での登山にも対応しているという。まず北米ユーザーを中心に海外ユーザーの獲得を目指すそうだ。

もう一つ、YAMAPが大きなテーマに掲げているのは地域創生の取り組みだと春山氏は言う。日本には多くの自然があるが、日本人でも知っている人が少なかったり、そもそも観光コンテンツだと思っていなかったりするのが現状と春山氏は指摘する。例えば、京都のような観光名所の場合、観光客は有名な寺院や仏閣を訪れることが多いが、京都の近くには大文字山、北山といった自然を体験できる場所も多くある。日帰りなどの消費型の観光ではなく、旅行客が数週間かけて観光するような施策を行う予定だと話す。具体的には自然を体験できる場所とその近辺にある温泉やご当地料理といった観光情報をまとめて提案できることなどを考えていると春山氏は言う。ただ、一方で正しい知識もなく登山や原生林などに入ると遭難する危険性もある。観光客を受け入れる自治体側も登山などを観光資源にしたいが、事故を増やさない方法を考えなければならない。YAMAPは自治体と協力して適切な情報発信や街づくりを行い、安全に配慮しながら、地域に人の流れを作れる事業を行っていきたいと話す。

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左から:コロプラ、コーポレート統括本部アドミニストレーション部投資育成グループマネージャー山上愼太郎氏、コロプラ取締役 Co-Founder千葉功太郎氏、セフリ代表取締役春山慶彦氏、セフリ監査役に就任するサムライインキュベートの玉木諒氏

今回のリード投資は、モバイルでソーシャルゲームを手掛けるコロプラが務めた。コロプラの取締役でCo-Founderの千葉功太郎氏は、コロプラも位置情報を用いたゲームで創業したため、位置情報を山登りに活用するYAMAPのアプリに親近感を感じたと言う。コロプラは、自社の強みであるソーシャルゲームの開発のノウハウからYAMAPのアプリをサポートするという。例えば、これまでゲームで培ったユーザー解析の知見やアプリにゲーム性を持たせる施策など、YAMAPのアプリ開発に活かせる部分があると考えているという。

YAMAPのユーザーの6割は山登りの中級者から上級者だと春山氏は言う。だが登山市場を見てみると、登山人口は微減傾向でその多くは年配の方なのだそうだ。今後さらにユーザーを獲得するためにも情報発信を通して多くの人に自然の魅力を伝えて、ユーザーと自然との接点を増やしていきたいと話す。自然を体験することは危険との隣り合わせでもあるので、YAMAPは登山するユーザーの「命に寄り添うサービス」であることを忘れずにサービス展開していきたいと春山氏は話す。

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TechCrunch Japan

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