イギリスの鉄道チケットサービスTrainlineがフランスの競合Captain Trainをおよそ1億8900万ドルで買収

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Uberのような会社が車移動を変革しているという話は良く聞くが、今日は別のセクターで新しい動きがあった。鉄道サービスだ。Trainlineはイギリスの会社で、鉄道や長距離バス移動のチケットサービスを展開している。Trainlineはパリに拠点を置く、大陸側で鉄道旅行のチケットを販売する競合Captain Trainを買収した。この案件に詳しい情報筋によると買収額は1億ユーロ以上で、1億6000万から1億7000万ユーロ(1億7800万ドルから1億8900万ドル換算)ほどと推測していると話す。半分は現金で半分は株式での取引だ。

この買収は広く見ると市場の統合を示している。1つの会社が22の国、36の鉄道会社のチケット販売に対応するようになるのだ。低価格航空券といった他のヨーロッパにおける短距離、長距離移動業界と競争する力が鉄道業界に備わるだろう。買収の話はちょうど1年前の2015年3月から始まっていたという。

TrainlineのCEOであるClare Gilmartinは、私たちが知り得た買収額について言及しなかったが、彼女によると買収の元手となったのは、KKRがTranlineに投資した「数百万ポンド」から来ているという。投資後、KKRは2015年1月にTrainlineを買収した。金額は6億7100万ドルと推定されているが、今回の買収同様、金額は開示されていない。

買収時の株式取引の総数はしばらく前から確定していたものの、バリュエーションとユーロと英ポンドの為替はここ数ヶ月で変動していた。Captain Trainは総額およそ1070万ドル (960万ユーロ)を Index Ventures、Alven Capital、CM-CIC Capital Privé、TheFamily、そしてビジネスエンジェルの Xavier Niel、LiligoのファウンダーであるPierre Bonelliから調達していた。

TrainlineやCaptain Trainと協力している鉄道会社も自社のオンライン予約フォームを持っていることから互いに競合関係にあるとも言える。Captain Train(元々Capitaine Trainという名称だった)は、チケットの購入を圧倒的に早く、簡単にしたスマートプラットフォームを構築することで名を挙げた。これはTrainlineの現行サービスよりも早い。

TrainlineがCaptain Trainを買収したい理由は大きく2つある。一つは、Trainlineはイギリスでシェアを圧倒的に独占しているが、ヨーロッパの他の地域ではサービスを展開していない。(Trainlineはこれまでもヨーロッパ市場への進出を試みたが、上手くいかなかった。)Captain Trainはフランス、ドイツ、イタリアを始め多くのヨーロッパ諸国でチケットを販売している。フランスのスタートアップを買収することで、ヨーロッパ諸国の各鉄道会社と契約を締結するより早く各地に進出できる。

2つ目の理由は、Trainlineは自社の旅費計算システムを保有していない。Trainlineは毎年SilverRaillに何百万ドルと使用料を支払っている。将来的に、TrainlineはCaptain Trainのテクノロジーを活用し、内製したシステムに切り替えることだろう。これで年間何百万ドルもの節約ができる。

「現在、私たちはヨーロッパで出来る限り成長することに注力しています」とCaptain Trainの共同ファウンダーでCEOはTechCrunchに話す。「私たちは彼らにはないヨーロッパでのパートナーシップと旅費計算システムの専門技術があります。彼らはイギリス市場の大部分を押さえていて、マーケティング力を持っています」。Guyotは子会社のCEOに留まり、Trainline International Limited(Trainlineの国際部門)のディレクターを兼務する。

Captain Trainは現在、140万人の登録ユーザーを抱え、毎日5000枚のチケットを販売している。2015年、Captain Trainは8000万ドル相当(7200万ユーロ)のチケット取引があった。Trainlineは元々Virgin Groupからスピンオフした会社で、イギリスで5番目に大きいEコマースビジネスだ。470万人のアクティブカスタマーがいて、ウェブサイトには月に2100万回の来訪がある。Trainlineは年間23億ドル(16億ユーロ)のチケット取引がある。

両社のブランドはしばらくの間存続する。今後数ヶ月の間にTrainlineはヨーロッパのチケットを、Captain Trainはイギリスのチケットを追加する予定だ。

また、Trainlineは交通システムの案内アプリTrainを作り、使い勝手を向上し、低価格なチケットを提供したい考えだ。

「鉄道市場で大きなグロースが見られます」とGilmartinは言い、まだ現在のチケット販売の「大半はオフラインで行われ、その80%は、駅で最も高額な値段で購入されています」と指摘する。

KKRがTrainlineを買収した時、多くの人はこのイギリス企業は株式公開から遠ざかると考えた。現在、Trainlineはイギリスで販売するチケット毎に5%の手数料を得ているとGilmartinは言う。Captain Trainは利益率について開示していないが、それを考えると、今後さらなる成長が見込め、将来的に上場する可能性も見えてくる。

「KKRが最初にTrainlineに投資した1年前、私たちにはデジタルな鉄道利用におけるグローバルリーダーを創出するという明確なビジョンがありました」とKKRのヨーロッパにおけるテクノロジー・メディア・通信部門のメンバーでヘッドを務めるPhilipp Freiseは声明で伝えた。「TrainlineとCaptain Trainが一緒になることは、それに向けた重要な一歩です。これにより、鉄道、テクノロジー、プロダクト、マーケティングにおける世界で優秀なマネジメントチームの人材が一つに集まります」。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

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TechCrunch Japan

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