国家道路交通安全局(NHTSA)が、運転中にスマートフォンに気を取られないようにするための、新たな自主規制ガイドラインを発表した。対象はAppleやGoogleを含む、スマートフォン関連ソフトウェアおよびハードウェアメーカーだ。
あくまでも自主的な努力目標のような意味合いではあるが、運転手が注意力散漫となり引き起こされる事故の増加をうけて構成されたものだ。車内で利用する際に、より操作しやすいインタフェースを実装した「ドライバーモード」の搭載などを訴えるものだ。
そうした動きについては既に耳にしたという人もいるだろう。Googleは新しくしたAndroid Autoに、タッチするボタンなどを大きくするなど、簡単なインタフェースで操作できるようにしている。車の中でダッシュボードマウントなどに取り付けて操作する場合でも、従来よりも簡単にナビ画面の操作や音楽再生操作が行えるようになっている。国家道路交通安全局としてはそうした機能をより多くのデバイスに対応させたい考えだ。さらに、発表されたガイドラインには、スマートフォンなどの機能を一部制限するような内容も盛り込まれている。
ちなみにこのガイドラインの冒頭に記された内容によれば、2015年の交通事故死亡者のうちの10%は、きちんと注意していなかったドライバーに起因するものであるとのこと。前年の8.8%から上昇しており、対応を急ぐ必要があると判断したのだろう。国家道路交通安全局としては、視覚的に集中力を削ぐもの、またハンドルから手を放さなければならない危険な操作を伴うもの、また認知能力を低下させるものについて、対応することを主な目的として、ガイドラインを作成したようだ。
今回発表された改訂版のガイドラインでは、スマートフォンを自動車の情報システムと連携させて利用する際に、特定の機能を使えなくするといった内容も含まれる。たとえば運転に関係のない動画や、無用な写真やグラフィック、ないし自動スクロールのテキスト(自動スクロール機能を使って本を読みながら運転する人もいるようだ)などを排除したい考えだ。また、音声によるのでない文字入力や、長文の文字情報なども表示させないようにすべきだともしている。
国家道路交通安全局の考えるガイドラインでは、ドライブモードでの利用中には上に記したような機能を利用できなくして、単純かつ簡単なインタフェースを表示するのをオプションでなく必須のものとして実装させたいとのこと。もちろん、同乗者の利用するスマートフォンについては、機能制限を行うべきではないとしている。すなわちドライバーと、同乗者を区別するための機能の搭載も、メーカー側に求めているということになる。
デバイスの機能制限をするということは、実現しようと思えば簡単にできることだ。ただし利用者の識別というのは難しい話となるだろう。車載情報システムと連動していないときにも、たとえばCarPlayやAndroid Autoの機能をオンにするのは簡単なことだ。ただし運転者と同乗者を区別し、そして運転中に運転者が利用している場合にのみ、自動的に機能制限を行うという仕組みは難しいものとなりそうだ。
もし技術的に実現可能となっても、利用者の自由な操作を不可能とする機能の実現については、スマートフォンメーカーは積極的には成り得ないだろうと思う。もちろん国家道路交通安全局も決定事項として通知しているわけではなく、広く議論・コメントを要望するというスタンスだ。まずはデバイスメーカーがどのように動くのかに注目したい。
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(翻訳:Maeda, H)