トロントのSciencescapeは、協同ファウンダのSam Molyneuxが、癌の研究者という将来性あるキャリアを捨ててまで取り組もうとした、ある重要な問題を扱う。それは、学術研究、医学研究、科学研究など学問研究の全分野に関わる、とても大きな問題だ。学問研究のあり方全体が今や古い、抜本的な改革が必要だ、とSciencescapeは考えるのだ。
Sciencescapeがまず取り組むのは、科学研究における、コンピュータの登場以降起こった、研究量の爆発的な増大だ。その膨大な量を、研究者や学生にとって把握可能、理解可能、選別可能、そして管理可能にすること。それによって将来の学問研究が本当に有意な、“進歩”の名に値するものになること。Sciencescapeがねらうのは、専門誌等の上で日々増大する研究文献 を、有意な情報として研究者のもとへ流してやる、一種の“配管業”だ。
Sciencescapeによると、最近では1年に発表される研究論文の量が220億篇に達する*。またビジネスとしての学術研究の規模は、年商で450億ドルにもなる*。この大量の情報を研究者がふるいにかけるためのツールは、Pubnet.orgなどをはじめとしてすでにあるが、それらはどれも、非効率的であるという烙印をユーザから押されている。〔*: 原文におけるファウンダSam Molyneuxのコメント: “Slight misquote – The numbers were actually 22 million papers in biomedicine and $45 billion size for the life sciences tools market during my talk.” …220億ではなくて2200万だ。それでも、むちゃ多いが。〕
今の研究者や学者や学生には、重要な情報を逃している、あるいは、大地を塗り替えるかもしれないほどの重大な研究動向を、まるまる見過ごしている、といった危険性がつねにつきまとっている。Molyneuxは曰く、学問研究においては新分野の開拓が重視されるが、学生や研究者はつねに、車輪を再発明する、あるいは、文献の量があまりに多いので画期的な論文を見逃す、というリスクを抱えている。このリスクを避けるためにSciencescapeは、続々新登場する研究論文にAIベースの整列アルゴリズムを適用し、主題別にフィルタされたインテリジェントなフィードをユーザである研究者たちに提供する。‘主題’は、特定の研究者たち、遺伝子、障害、などなど、さまざまだ。
Sciencescapeのエンジンはもっぱら自然言語処理によりコンテンツをリアルタイムで集めるが、まず生物医学の研究分野からスタートする。Molyneuxによれば、他分野への拡張も迅速に行いたい、今後の対象分野としては法律なども候補にあがっている、という。そのシステムは重要な研究を集めるだけでなく、グラフやチャートを駆使してその分野の最新研究動向を視覚化する。またユーザに提供したコンテンツには、共有やブロードキャストのオプションがあるので、ソーシャルネットワークなどでの一般公開も可能だ。
Sciencescapeのような、特定学術分野の“蛸壺”を超えた学術情報サービスには今、投資家や研究者コミュニティの関心が集まっている。そう言う意味では、タイミングの良い登場だった。類似のサービスの中では、ResearchGateが3500万ドルを調達し、MendeleyはElsevierに巨額で買収されている。Sciencescapeすでに初期の資金として110万ドルを確保し、事業の急速な拡大を志向している。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))