Boomはスタートアップとしてきわけて野心的な目標を持っている。超音速旅客機の復活だ。Boomが開発しているのはコンコルドに似た機体だが、もっと大型で性能も優れており、何より経済性が高くなるはずだ。TechCrunchではコロラドの空港に位置するBoomの本社を訪れ、社員がまだ50人に満たない会社がどうやって超音速旅客機を実現しようとしているのか詳しく見てきた。
訪問した小さな空港には航空機関連の会社が散在していたが、Boomの本社は格納庫の一つを占領していた。一歩足を踏み込むと、Boomが開発中の XB-1デモンストレーター機のフルスケールのモックアップが目立った。この機体は有人操縦で、Boomが世界の航空会社に販売しようと計画している商用機の小型のプロトタイプだ。
CEO、ファウンダーのBlake SchollはBoomのビジョンについて熱意を込めて語った。またBlakeは巨大なモックアップやそれよりは小さいが空力特性が精密に再現された風洞試験モデルを見せてくれた。Blakeは開発チームが仕事をしている混雑した部屋(近くもっと大きいスペースに移らねばならないだろうという)も案内してくれたが、エンジニアのチームにも強い誇りを抱いているようだった。われわれはBoomの航空機テクノロジーやデザインについてあらゆる側面を知ることができた。Blake Schollが航空機産業の出身ではなく、ネットワーク・テクノロジー、広告自動化、eコマースなどの会社の起業家、幹部という経歴だったのは意外だった。
しかしSchollは自家用パイロットのライセンスを持つ熱心な飛行家であり、航空工学を自らも熱心に学んでいると同時に、才能あるエンジニアを選ぶ力も高いようだ。私はBoomの開発チームと話をした。その1人、ノートルダム大学を卒業してNASAでインターンをした経験もあるフライト・コントロール・システム開発の責任者、Erin Fisherによると、航空機、航空旅客運送ビジネスに強いインパクトを与える可能性がある点でBoomは非常に魅力的な職場だという。Fisherによれば、航空エンジニアがこれほど革命的な機体の開発にこれほど早い段階で関われるチャンスはきわめて稀だという。
きわめて革命的なBoomnだが、今のところ事業は質素なスタートだ。実際、われわれが訪問したときも、 開発チームはXB-1デモンストレーターのフルスケール・モデルの耐久テストを実施しているところだったが、カーボンファイバーのテスト用素材を作るオーブンはアルミフォイルを巻いた手作りの箱だった。カーボンファイバーの素材が「焼きあがる」と強度をテストする装置にかけられ、破壊するまで力を加えられる。これによって機体が十分に安全な強度を得るために必要な素材の量が決定されるという。シミュレーションにより予測された強度に達していることが確かめられるとXB-1実機に用いる素材の製造が開始される。デモンストレーターのテスト飛行は来年予定されている。
Boomの目標は遠大なので当然ハードルも高い。有人機機を飛行させるのはどんな規準からしても野心的なミッションだ。また開発チームが作業するのに適したスペースを見つけるのも大変だという。しかしSchollによれば、最近のラウンドの成功も含めて、XB-1を飛行させるための資金は十分確保しているという。
クライアントからの問い合わせも来ており、Boomはいくつも航空会社と話し合いを行っている。もちろんアメリカの上空を超音速で飛行することも含め、Boomが実際に飛ぶためには今後さまざまな法規の調整が必要となる。しかしどこからか始めるのでなければ何も始まらない。Boomの目標は現在のビジネスクラス程度の料金で世界の大都市間を超音速で結ぶというものだ。
画像: Darrell Etherington
〔日本版〕ビデオによれば、XB-1デモンストレーターに利用するエンジンはGE J85。1950年代に空中発射ミサイル用エンジンとして開発されたが、後にノースロプF-5などの軽戦闘機に採用された。近年ではバート・ルタンの宇宙往還機の母機、White Knight Iのエンジンとしても用いられた。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)