インテリア写真SNSの「RoomClip」を運営するTunnelは7月3日、合計9社を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額8億円を調達したと発表した。投資家リストは以下の通り:
- オプトベンチャーズ
- いばらき新産業創出ファンド
- 三菱UFJキャピタル
- Spiral Ventures
- アドウェイズ
- エキサイト
- フェムトグロースキャピタル
- SMBCベンチャーキャピタル
- アイ・マーキュリーキャピタル
Tunnelは今回調達した資金を利用して、アプリリニューアル、人員強化、ECサイト向けの新サービス提供などを実施する予定だ。
RoomClipは、家具や雑貨などのインテリアの写真を投稿することができるSNSアプリ。写真を共有したり、その写真にコメントをつけてコミュニケーションをとることができる。現在、RoomClipのMAUは270万人で、累計で約240万枚の写真が投稿されている。投稿された写真の表示回数は1カ月あたり2.5億回だ。
この2年間はマネタイズにフォーカス
前回TechCrunch JapanがTunnelを取材したとき、彼らのテーマは“グロースからマネタイズへの転換”だった。2013年頃は10万件だった写真投稿数を100万枚までに増やし、これから収益化を目指すというフェーズだ。
Tunnel代表の高重正彦氏は、「これまではグロースに注力してきたが、過去2年間はマネタイズにフォーカスしてきた」と語り、現在Tunnelの売上高は「数千万円規模」だと明かした。
Tunnelのマネタイズ手段は大きく分けて2つある。
1つ目はアフィリエイト手数料だ。RoomClipでは、ユーザーが写真に写っているインテリアなどのアイテムをタグ付けできる。それぞれのアイテムページに設置されたリンクを通して商品が購入された場合、Tunnelに手数料が入る仕組みだ。現在、アフィリエイトの流通総額は数億円程度だという。
ユーザーに報酬が入ることはないが、それでも全体の20%の写真にタグがつけられている。高重氏は、「RoomClipのユーザーには“人の役に立ちたい”というモチベーションがある」と語る。2016年から本格化したこの取り組みだが、Tunnelはこの数字を早期に今の20%から100%に近づけていくことを目標にしている。「はじめは人力でタグをつけて教師データをつくる。そのデータでトレーニングした画像認識アルゴリズムでタグ付けを自動化する予定だ」(高重氏)
2つ目のマネタイズ手段は、インテリアや家具をあつかう企業やECサイトへの写真販売。これが同社にとってメインの収益源だ。
一般のユーザーが投稿した実例写真は、商品購入の決め手になるほど説得力を持つものだ。これらの実例写真が消費者の購買意欲をかき立て、クライアントのECサイトではコンバージョン率が3倍になった例もあるという。
RoomClipに投稿された写真の著作権は投稿したユーザーが保有しているが、二次利用権はTunnelにある。実際に写真をカタログなどに利用する場合はユーザーに確認をとるが、「これまで一度も断られたことはない」(高重氏)という。自慢のインテリアの写真が企業に利用されるということで、投稿したユーザーのモチベーションも上がるというわけだ。
ECサイト向けの新サービス開始
Tunnelは今回調達した資金を利用して、2017年8月よりECサイト向けの新サービス「おすすめショップ」の提供を開始する。
このサービスを利用するECサイトには、RoomClip内に専用のアカウントが与えられる。ユーザーはそれらのアカウントをフォローすることが可能だ。そして、RoomClipにそのECサイトが取り扱う商品が写った(タグ付けされた)写真が投稿されると、アカウントのフォロワーにその写真が自動で配信される仕組みだ。
これにより、ECサイトは集客プロセスを半自動化することが可能になる。
RoomClipと同様の写真SNSを手がけるInstagramは、Facebookに買収された。しかし、高重氏が目指すのは、M&Aによるエグジットではなく、上場だ。「2年後までに2500万人のユーザー数を目指す。また、同じく2年後の上場を目指すために動いているところだ」と彼は話す。
ステークホルダーへの責任を考えれば、サステイナブルな企業を目指すのは当然であり、それを実現する手段が上場であると高重氏は考えている。