建築業界の請求と決済の処理は、今や破綻している。実際に払ってもらえるまで70日ぐらいかかるので、建設業者の多くは運転資本が枯渇する。そこで、Y Combinatorで育ったNet30は、その問題を解決しようと志(こころざ)した。
このプラットホームの上で建設企業は請求書を処理し、下請け企業などの銀行口座にオンラインで支払いを行う。これにより、今でも紙を使っていることの多い事務処理がデジタル化される(今はまだ、請求書をFAXで送り、支払いは小切手が普通郵便で送られてくるパターンも少なくない)。実はNet30のファウンダーは、実際に建設企業でプロジェクトマネージャーをやっていたCasey BellとAnthony Cirinelliで、元々は決済を早めるためのプラットホームとしてNet30を作った。
しかし実際に建設業者たちの話を聞いてみると、建設業界の請求決済問題には改善すべき点がたくさんあることが分かってきた。問題は非常に深刻であり、決済の遅れが建設企業の倒産の原因になることも多いのだ。
“すごく大きな問題だし、しかも業界全体に血液を送る心臓の部分だ。それなのに、請求と決済の業務を簡素化することに、誰も取り組まなかった”、とBellは語る。
建設のプロジェクトは通常、数十社もの下請け〜孫請けが関わり、各社が請求書を発行する。しかし個々の請求書は、複数の文書の束であることが多い。そこには、完了した仕事の詳しい科目分類や、署名入りの法的文書、コンプライアンス関連の文書などがある。そこに日付の間違いなど誤記がひとつでもあると、決済が遅れたりする。
建設業者が操業を続けるためにはキャッシュフローが必要だから、ちょっとした遅れが悪夢を招くこともある。Net30はひとつのプロジェクトに関わる企業をすべて集めて、すべての請求書が最初から確実に正しい、という状態を作り出す。そして下請け孫請けの透明性を高める。
建設業界の既存の請求事務ソフトウェアには、昨年Oracleが買収したTexturaなどがあるが、それなどはエンタープライズ級の企業が対象で、請求決済事務の現代化を誰よりも必要としている、膨大な数の中小建設企業のニーズに対応していない、とBellは語る。
中小建設企業向けのスタートアップとしては、青写真アプリのPlanGridや、コンプライアンス関連のソフトウェアを作るUpCodesなどがあり、とくに後者は、Y Combinatorの今のバッチの同窓生だ。
“一般的に建設業界は、ディスラプト(破壊的改革)が非常に後れている業界だし、テクノロジーの採用も遅い。でも最近では、ソフトウェアの実装と利用がそんなに難しくないことを、彼らは理解し始めている”、とBellは述べる。“これらのソリューションを利用すれば、建設業界はもっと先進的で生産性の高い産業になるはずだ”。