11月16日、17日の2日間にわたって渋谷・ヒカリエで開催予定のテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」の登壇者がもうひとり決まったのでお知らせしたい。米GoogleでGoogle アシスタントのプロダクトマネージャーを務めるブラッド・エイブラムス(Brad Abrams)氏だ。Google アシスタントは、国内発売が間近とも言われるGoogle Homeに搭載される会話型AIの基盤そのもの。「モバイル・ファースト」から「AIファースト」へ比重を移すGoogleのビジョンと戦略、現在の取り組みについて語っていただこうと考えている。
すべてのデバイスに共通するUI:会話的な音声
振り返ってみて歴史上のある時期に一気に起こったように見えるパラダイム変化も、実際には5年とか10年かかっていることが多い。パソコンのCUIからGUIへの変化は1980年代半ばのApple Macintoshに始まり、1995年のWindows 95で終了したと考えると、実に15年もかかっている。
いま現在、GUIからVUI(Graphical UIに対してVoice UIの意味)への変化の兆しが見えている。これは5年かかるかもしれないし、10年かかるかもしれないが、かなり大きなマン・マシン・インターフェイスの変革となりそうだ。
AmazonがAmazon Echoで切り開いたスマートスピーカーという製品ジャンルは、声で買い物ができたり家電がコントロールできる、ちょっと便利なツールというふうに見える。ただ、Googleアシスタントについて語るエイブラムス氏の説明によれば、Google Homeはもっと大きな変化の一部分ということが分かる。
Google アシスタントは、「Google Home」やGoogle謹製Android端末の「Pixel」、Googleのメッセアプリ「Allo」などのすべての背後にあるソフトウェア基盤だ。アシスタントが作り出そうとしているのは「会話的インターフェイス」で、いま現在ググるときに打ち込む「新宿 安い イタリアン」などという検索クエリではなく、「ぼくの今日の予定は?」とか「空港まで行くのにUberを手配して」といった、より自然で対話的なインターフェイスとなるようなものだという。これは現在スマホに搭載されている音声検索とは異なるもの。
これは何もGoogle Homeだけのためのものではない。オライリーメディアが行ったインタビューの中でエイブラムス氏は、スマホやメッセアプリなど、デバイスに依存しない形で使えるようにしていくと話している。Google Homeからスタートしているのは、家庭内のリビングという利用環境が限られていて、アプリ提供やユースケースの洗い出しに適しているから、という面もあるのだそうだ。
Googleはすでに「Surface」という概念によってアプリ起動の制御を行おうとしている。あるデバイスには画面がなく、音声だけかもしれない。だからアプリ開発者は今後、どういうSurfaceのときにアプリがどう振る舞うべきかを考えるようになるのかもしれない。
音声が入り口になると新しいビジネスが生まれるかも
エイブラムス氏が挙げる興味深い論点として、「瞑想したいんだけど、おすすめは何?」というような問いかけにGoogle アシスタントはなんと答えるべきだろうか、というものもある。
これまでのGoogle検索ように10個のリンクを提示するわけにはいかない。じゃあ、1つなのかというと、それも違う。2つか? 3つか? どうユーザーに対話的に提示するのか―、この辺もまだVUI揺籃期の興味深い論点だ。
もしユーザーの問いかけに対して1つか2つの選択肢が提示される未来が来るとしたら、これはECビジネスなど、従来のネットビジネスがガラッと書き換わる可能性すらあるのかもしれない。現在、Google アシスタントに対して回答となる「discovery phrase」とういうのはアプリ開発者が登録することになっているそうだ。discovery phraseは現在のネットで言うドメイン名ようなもので、スクワッティング(不正な占拠)が出て来る可能性もある。エイブラムス氏は、いずれレビュープロセスやランキングを使うことになるだろうとインタビューの中で示唆している。
ともあれ、すでにGoogle アシスタントはSDKとAPIが用意されていて、Web上のシミュレーターを使った開発が開始できるようになっている。エイブラムス氏によれば、自分の端末だけで動くものを作りたいという要望が個人開発者からあるといい、イノベーター層が関心をもって遊んでいる様子がうかがえる。
国内発売が間近との報道も一部にあったGoogle Homeだが、未来のコンピューティングと、それが可能にするライフスタイルやビジネスに関心のある人は、ぜひ東京・渋谷のTechCrunch Tokyo 2017に足を運んでみてほしい。