法律関係の課題をテクノロジーで解決する“リーガルテック”。その中でも今日は、現役の弁護士が立ち上げたAI契約書レビューサービスを紹介したい。GVA TECHが提供するのは、AIとクラウドを活用して契約書のレビューを行う「AI-CON」だ。4月16日に正式サービスを開始。4月17日には約30社のコワーキングスペースおよびランサーズと連携することを発表した。
AI-CONは、AIとクラウドを活用して、契約書のレビューを自動化するAI契約書レビューサービス。サービスにログインし、WordファイルやPDFファイルをアップロードすれば、1営業日以内に条文ごとのリスク評価や修正案などが提示される。現状はAIで判定した原稿について、弁護士による目視での最終チェックを実施している。
月初には同じくAI契約書レビューサービスを提供するLegalForceを紹介したばかりだが、このAI-CONの最大の特徴となるのは、「契約書のリスク判定機能」だ。レビューする契約書は条文ごとに、「不利」「やや不利」「適切」「やや有利」「有利」の5段階で評価をする。不利な条文が会った場合は、有利な条文案の表示も可能だ。また、ユーザーと契約相手の力関係、契約時の立場などをあらかじめ設定して、状況に応じた評価ができるという。そのほか、通常含まれる条項がない場合にはアラートを出すなどして、法律に明るくないユーザーでも契約書のリスクについて理解しやすくしている。
2017年秋にクローズドベータ版を立ち上げて一部ユーザーに限定してサービスの提供を開始。同年末にはオープンベータ版を公開した。現在対応する契約の類型は秘密保持契約(NDA)、業務委託契約、人材紹介契約、システム開発契約、保守契約、ライセンス契約、販売代理店契約、アドバイザリー契約、コンテンツ制作契約、オフィス賃貸借契約、製造委託契約、広告代理店契約、SaaS利用規約など。正式版の価格は1通1万円で、スタートアップやフリーランサーの利用を想定している。
また冒頭にあるように、「co-lab」(都内5拠点)、「TSUTAYA BOOK APARTMENT」(東京・新宿)、「Creative Lounge MOV」(東京・渋谷)、「Katanaオフィス」(全国7拠点)、「Basis Point」(都内5拠点)をはじめ、約30社のコワーキングスペースと、クラウドソーシングサービスのランサーズと連携。期間を限定するかたちでそれぞれの会員向けに無料でサービスを提供する。
サービスを提供するGVA TECHは2017年1月の設立。楽天元代表取締役副社長の島田亨氏、Evernote Japan元会長の外村仁氏、チェンジ代表取締役兼執行役員社長の福留大士氏、楽天元執行役員の尾原和啓氏、ランサーズCTOの田邊賢司氏、セールスフォース・ベンチャーズ日本代表の浅田慎二氏ら6人がアドバイザリーボードとして同社に参画しており、これまでに一部のアドバイザーを含むエンジェル投資家とチームメンバーから約6500万円のシードマネーを調達している。
GVA TECH代表取締役の山本俊氏は2010年に弁護士となり、2012年1月に独立。GVA法律事務所(AI-CONの最終チェックも同法律事務所の弁護士が担当している)を立ち上げてスタートアップを中心とした企業の支援を行ってきた人物だ。その業務での課題が、GVA TECHを立ち上げるきっかけになったという。
「契約書レビューで1回で6万円程度とスタートアップやフリーランスにとっては高価なもの。また同時にベテラン弁護士でも若手弁護士でもレビューチェックは一定の経験が必要な一方、専門性が高くスピードを上げるのが難しい作業でもある。そういう意味で利用者、弁護士両面に課題があった」(山本氏)
GVA TECHでは今後もAI-CONの開発を進めるほか、新サービスについても準備中だという。「契約書業務は、大きく分けて(1)作成、(2)レビュー、(3)編集、(4)契約締結、(5)管理という5つのプロセスがある。AI-CONはレビューの領域のサービス。今後は作成や編集に関わるサービスも提供したい。契約書のプロセスは会社ごとに違うことも少なくない、さまざまなサービスとAPI連携して利用できるようにしていく」(山本氏)