TechCrunch Tokyo 2013にAirbnb、Tinderから海外スピーカー来日が決定!

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すでに案内させて頂いている通り、TechCrunch Japanは11月11日、12日の2日間の予定で、今年もスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2013」を東京・渋谷で開催する予定だ(早割チケットの購入はこちらからどうぞ!)。

今年もスタートアップバトルを主催し、日本のピカピカのスタートアップが競い合うコンペを予定している。加えて、例年と少し異なり海外からのゲストを多く呼んで、スタートアップのメジャーリーグとも言えるシリコンバレーで成功しつつあるホットなスタートアップの人々にご登壇いただく予定だ。

ブームの火付け役、Tinderの創業者Sean Rad氏が登壇

まず、海外スピーカーとして紹介したいのはモバイルアプリとしてブームを巻き起こしつつある「Tinder」の創業者でCEOのSean Rad氏だ。Tinderは日本ではまだあまり知られていないが、SnapChatと並んで米国の若者の間で爆発的ブームとなっている。

SnapChatは「エフェメラルネット」(ephemeralは「瞬時の、はかない」という意味)と呼ばれる一定時間で消失するコミュニケーションがオンラインに取り込まれつつあるトレンドの兆しを感じさせる点で注目されている(この辺りはSarah Perez記者の書いた「The Rise Of The Ephemeralnet」という記事に詳しい)。私はエフェメラルネットには大きな潜在市場があると思っているが、SnapChat自体はぶっちゃけエロい面が若者に受けてる感じもある。数秒間だけ受信した写真を見ることができ自然消滅する、という前提だが、消えると思って撮影されたと思しききわどい写真がTwitter検索などでザクザク見つかる……。ともあれ、TinderもSnapChatも「ソーシャルデーティング」というジャンルのモバイルのセクシー系アプリという点が共通していて、いずれも非常にホットだ。

今さら出会い系? と思うかもしれないが、Tinderが違った点は2つある。単にモバイルということ以上に。

1つは、ほかのモバイルアプリへも影響を与えつつあり、いまや「○○のTinder版」という言い方を聞くことがあるほど受け入れられつつある独特のUIだ。

C2Cマッチングサービスが「愛犬家向けのAirbnb」とか「空き倉庫・ガレージの貸し借りができるAirbnb」、「自家用車向けのAirbnb」というように、「Airbnb」は、もはや固有名詞ではなく普通名詞として冠詞を伴って利用される語彙となっている。Airbnbは、登場当初は自分たちのことを「空きスペースのeBayだ」と説明していた。それが、今やeBayではなくAirbnb自身が、ほかの新興サービスの説明のための語句に使われている。これはAirbnbの成功を雄弁に物語っていると言えるだろう。

同様に、モバイルアプリのある種のUIとして、Tinderが1つのスタンダードを確立しつつあるのではないかと思う。

Tinderでは自分のいる場所から半径数キロ以内(ここは設定次第)の登録者の顔写真が次々と表示される。その写真を左右にスワイプするだけで「好み・好みじゃない」と分類できる。利用者はTinderを起動して表示される写真を次々に「右、左、左、右、うーん、これは右……、何だよコレ!猫写真かよ、左ッ!」などとやっていくだけ。自分が「好み」と分類した人(多くの人にとっては異性)が、自分のことも「好み」と分類したとすると、マッチングは成立だ。そこからコンタクト情報を交換することなく、まずはチャットができるという具合だ。

この左右にスワイプするUIは手軽で、とてもテンポ良く写真をめくることができる。これを書いている私自身は既婚者である上に、まだ東京にはTinderの利用者が少ないので想像の部分があるのは認めるが、Tinderを空き時間に起動して、ぼんやりと写真をめくり続ける若者の姿というのは容易に想像ができる。なんだか中毒性があるのだ。パズルゲームなんかと同じで、次々に処理して消していくこと自体にも小さな達成感があるからじゃないかとか、偶然の出会いへの期待があるかじゃないかと思ったりしている。

このスワイプ型UIには普遍性があって応用が効くように思う。例えばファッション系ECアプリで、利用者の好みを徐々に学習するようなものなら直感だけで左右にアイテムをスワイプし続けるというのはユーザーにとって負担が小さいアプローチだろう。Pinterestが1つのUIのあり方を示したように、Tinderは他ジャンルへも適用可能なモバイルのUIを示しつつあると思う。

Tinder創業者でCEOのSeanは、こうしたUIの良さを日本の開発者にも伝えたいといことで、11月のTechCrunch Tokyoではスピーカーとしてのステージへの登壇のほかに、1日目(11月11日)のハッカソン会場で日本の開発者との交流を楽しみにしていると言っている。コードを書く人、あるいはUI/UXハッカーであればTechCrunch Tokyoで併催するハッカソンへの参加も検討してみてほしい(通常チケットでハッカソンの参加も可能です)。

ちなみにロサンゼルス発のTinderは当初、平均年齢23歳の大学生の間で急速に広まったという。そして2012年10月のリリース以降、2013年1月には100万マッチが成立し、3500万レイティング(つまりスワイプ)を数えた。さらに、そのわずか4カ月後の5月には5000万マッチ、45億レイティングという凄まじい成長っぷりを見せている。ユーザーの半数以上が1日に1度はアプリを起動するというから、アクティブ率(中毒率)も相当なものだ。

Tinderブームは、すぐに類似アプリの登場をみていて、例えばTinderと違って既存ユーザーからの招待制のみとし、紹介される人も「友だちの友だち」の範囲までに限定した「Hinge」(関連記事:DC Dating App Hinge Brings Its Romance Graph To More Cities)や、SnapChatとTinderを足して2で割ったような「Swipe」(関連記事:If Tinder And Snapchat Shacked Up And Had A Baby, It Would Be Called Swipe)など変化球を加えた「人発見系アプリ」が続々と登場している。TinderがSNSにおけるFriendsterとFacebookの関係のように、ジャンル開拓自体は一番乗りだが、その後に本命登場(Facebook)ということになるのかどうかなどは、まだ分からない。ただ、人類に普遍的な「出会い」というジャンルがモバイルシーンでどう進化しているのかを見るという意味では、Tinderこそが最も動向が注目されるアプリだろう。

もともとソフトウェア開発の歴史というのは「機械の都合を考えてプログラムする」という時代から、徐々に「ユーザーのことを考えてプログラムする」というマン・マシンのインターフェースの重要性が増してきた歴史だった。それが今や、人々のインタクラクションをデザインするフェーズへとシフトしつつある。Tinderは、ややもすると下世話な出会いアプリに見えるが、CEOのSeanは、これまでにバーやクラブで男女が出会って、周囲を見回し、そして近づいたり離れたり、挨拶を交わしたりしながら徐々に親密になったりならなかったりするという自然な流れ、そうした出会いをモバイルアプリで再現しているのだ、という立場だ。この点でも、Tinderの設計上の選択の数々と、その背後にある考え方は参考になることが多いと思う。

そんなわけで、今回が初来日となるSean Rad氏に会えるTechCrunch Tokyo 2013に、是非ご参加くださいませ

国際展開を視野にいれるAirbnbも最初は小さなサービスだった

さて、スピーカーをもう1人。

もはや、Dropboxと並んでY Combinatorの顔の1つとなった感もあるAirbnbだ。私自身、2009年5月にサンフランシスコ滞在のためにAirbnbを初めて利用し、そのときたまたま宿泊先に遊びに来ていた共同創業者らにインタビューしたことから大ファンとなったサービスだ。当時はちょっとクレイジーな野心家の若い2人がとんでもないサービスを始めたな、アメリカのスターアップは面白いな、という程度の認識だったが、わずか3年後の2012年6月時点で、世界192カ国の3万都市に26万件の登録物件を持つほどに成長。通算で1000万泊の成約があり、企業評価額も1000億円を超えたと言われるほど爆発的成長を果たしたサービスだ。

華々しい成功を収めつつあるAirbnbのことをメディアは「一夜にして大成功」と書き立てたが、実際には利用者数が全然伸びずに鳴かず飛ばずの時期が長く続いた。初期の1年半ほどは苦し紛れに大統領選挙キャンペーンにかこつけたシリアルを作って売り、その収入で糊口をしのいだりした時期もあったという。昨今、「ピボット」という言葉で、スタートアップのアイデアに「市場がない」と分かれば、少し違うアングル、もしくは全く違うアイデアにシフトすることが当たり前のように言われるが、Airbnbは全くブレることなく、「見知らぬ人同士が宿泊を通じてコミュニケーションできるプラットフォーム」を信じて育てた。ピボットが良いか悪いかは結果論のようなところがあるので一概に言えないが、Airbnbほど成功したスタートアップでも初期に低迷した時代があったという逸話は、安易なピボットよりも信念と粘り強い取り組みの重要性を物語っているように私には思われる。

ともあれ、そのAirbnbが今は国際展開に力を入れ始めている。もともとAirbnbはグローバルサービスの色合いが強く、各国都市部の人々が海外旅行で利用するケースが多かったというが、文化的要素の強く絡むサービスであることから各国へのサービスの展開では、その地域への普及を担当する人材が必要だ。今や、多くのスタートアップにとって一国の国内市場だけを見るのはナンセンスとなっている。日本発のスタートアップがアジアや北米へ進出することは珍しくなくなってきている。そうしたことからも、Airbnbの国際展開、ローカライゼーションの話は参考になることが多いのではないかと思う。今回、TechCrunch Tokyo 2013にはAirbnbで北欧・アジア・パシフィック地域担当のマネージング・ディレクターを務めるOle Ruch氏に登壇して頂けることとなった。Ruch氏は、これまでにグルーポンを始め、いくつかのスタートアップでマーケティングを担当した経験があり、Airbnbの歴史や広い視点に立った話が聞けるだろう。

今後も、まだTechCrunch Tokyoの海外・国内のスピーカーを発表予定だが、すでにチケットは早割価格の1万円(通常価格は1万5000円)で販売開始している。もしこの記事を9月20日金曜日18時以前にご覧頂けているようであれば、まだ超早割(8000円)の適用にも間に合うので、ご来場を検討頂いているかたは是非お早めにチケット購入をお願いします!


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。