米証取委、Appleの元社内弁護士をインサイダー取引疑いで告発

Appleに少し傷がついた。SEC(米国証券取引委員会)は今日(米国時間2月13日)、Appleの元社内弁護士Gene Levoffをインサイダー取引の疑いで告発した。決算発表前に数百万ドル分の株を売却して38万2000ドルの損失を回避し、これとは別に、その前には24万5000ドルの利益を得ていたという。

Levoffは2008年にAppleで法務部門のディレクターとして働きはじめ、その後シニアディレクターになった。そして2018年7月に勤務停止となり、9月に解雇された。

告訴は2015年から2016年にかけての取引を対象としていて、これは2017年にAppleが時価総額1兆ドルに近づく前の業績が落ち込んでいた時期だ。

今回のニュースはなかなか皮肉だ。しかし、Levoffが裁量権を持つ情報を考えた時に、これは驚きではないかもしれない。Levoffは Appleの法務部門のシニアディレクターを務めていて、“社のインサイダー取引ポリシーの徹底と、四半期ごとの決算時の取引で従業員(自身も含む)がやってはいけないことを取り決める責任を負っていた”。

調査は別の方向にも向いた。SECは、Levoffが2011年と2012年にも市場に影響を及ぼすようなニュースの発表に先駆けて株取引をし、24万5000ドルの利益を得たとしている。

SECは、“訴状に記した行為で得た利益・回避した損失と同じ額”の罰金を支払うこと、そして公開企業の幹部職に就かないこと求めている。

SECの告発では、2015年から2016年にかけて“少なくとも”3つの取引を指摘している。この期間、Levoffは公開される前の決算情報を知り得る立場にあり、その後情報に基づいて取引を行なった、としている。

訴状に記された取引の一つを挙げると、LevoffはiPhoneの販売台数が市場予想を下回るという情報をAppleが公開する前に1000万ドル分の株を売却した。

SECは、Levoffの利益のための動きと、Appleでの役割の切り離しを明確に記している。Levoffは、Appleのディスクロージャー・コミッティーのメンバーだった。このコミッティーは、社の情報公開の正確さと適時性を監視する責務をCEOとCFOが果たせるよう、サポートするためにつくられた。 コミッティーはAppleの公開義務を決め、さらにはSECへ提出する書類の内容や、他の情報公開がタイムリーで正確かつ完全なものか、Appleの財政状況や業績を正しく反映しているかといったことを確認する。また、 Appleの情報公開の過程が適切なものかといったことも確かめる。

LevoffはAppleの機密部分にかかわっていた。彼はまた、Appleの多くのM&A案件にも名を連ね、彼はかつて議員に対し、Appleが欧州で密かに買収したスタートアップの法的書類を調査しているとも話していた。

Levoffはまた、Appleのオフショア口座に関する2013年の調査でも名前があがっている。調査に対し、彼は70ものAppleの子会社の役員会に関わっていたことを明らかにしている。オフショア活動に関する報告書によると、この子会社には“従業員はおらず、実在もしない創業30年の企業であるApple Operations Internationalも含まれる。この企業の運営は米国外で行われている。Appleの広範にわたるオフショアコーポレート構造の中核として2009年から2011年にかけて300億ドルもの収益を受け取っているにもかかわらず、Apple Operations Internationalは税法上の居住地を申告していない。つまり、過去5年間どこの国にも法人税を払っていない”とのことだ。

しかし今回の告発では、SECはAppleが株取引禁止期間や、株取引・財務の情報に関する一般的な合法・違法のプラクティスについて従業員に警告するいくつかのステップを踏んでいたと記し、Apple自体はインサイダー取引に関わっていなかったことを明確にしている。

「Levoffの違法取引に先立ち、AppleはLevoffが受け取った非公開の決算結果を含め、非公表の情報に基づく株取引を従業員が行わないようにするいくつかの措置をとっていた」と訴状に記している。「Appleは全従業員に適用されるインサイダー取引ポリシーを持っていた。Levoffを含め多くの従業員は“ブラックアウト”期間として知られる株取引を制限する期間になると通知を受け取る。ブラックアウト期間とのタイトルで従業員に電子メールが送られるこの通知でインサイダー取引ポリシーの周知徹底を行なっていて、少なくとも2015年からはインサイダー取引ポリシーへのリンクも含んでいた」。

今回のニュースは、Appleが固く口を閉ざしている企業の一つであり、またユーザーのプライバシーといった問題で抜きん出た姿勢を見せているだけでなく、競合する他社の製品に比べてプレミアム価格で製品やサービスを展開していることにプライドを持っているなど、Appleがモデル企業としての役割を果たしているという意味において、かなり議論を巻き起こすものだ。

我々はAppleにコメントを求めていて、何かわかり次第、情報をアップデートする。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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