もしInstagramの投稿に「いいね!」の数が表示されなかったら、どう感じるだろう? 妬ましい気持ち、恥ずかしさ、対抗意識は減るだろうか。Instagramは、そんなふうに考えている。カナダで始める実験では、投稿を見る側の人からは、「いいね!」の数がわからないようにしている。
投稿した人は、相変わらず「いいね!」ウィンドウを開けば、投稿にハートマークを付けたすべての人の名前を確認できる。Instagramは最近、プロフィールのデザインを変更して、フォロワーの数をそれほど目立たないようにもしている。これは、アプリの責任者Adam Mosseri氏からの情報だ。
たとえ表示されなくても「いいね!」の数の合計は、Instagramのアルゴリズムによるフィード内の投稿のランク付けには影響するはずだ。それでも、この非表示設定が全ユーザーに展開されれば、Instagramはもはや人気コンテストではなく、自身を表現するメディアとしての性格が強いものになる。
ユーザーも、「いいね!」の数が少ないからという理由で写真やビデオの投稿を削除してしまうことが少なくなるかもしれない。あるいは、いわゆる「フィンスタ」アカウントを使って、完璧ではないがフェイクでもないものを投稿しようという気持ちも薄れるかもしれない。友達やインフルエンサーが、自分よりも多くの「いいね!」をもらっているかどうかも分からなくなるので、妬みの気持ちに悩まされることも少なくなるかもしれない。そして、ちょっとゴタゴタしているとしても、本当の自分を表現しようと思うようになるかもしれない。なぜなら、もう「いいね!」の数で競い合うことはないのだから。
「今週(カナダ時間5月第1週)後半から、フィード、パーマリンクのページ、プロフィールで、写真やビデオに「いいね!」の数を表示しないようにするテストをカナダで始めます」と、Instagramの広報担当者はTechCrunchに明かした。
「このテストの目的は、『いいね!』の数ではなく、ユーザーが共有している写真やビデオそのものに、フォロワーが注目するようになってくれることです」。このテストに参加するのは、カナダのユーザーのごく一部だが、フィードの最上部に「いいね!の表示方法の変更」といった注意が表示される。今回の発表は、FacebookのF8カンファレンスで、多くの新製品の紹介と並んで明らかにされた。
1つ大きな懸念がある。インフルエンサーが報酬付きのプロモーションに抜擢されたり、スポンサー付きのコンテンツを投稿する場合、「いいね!」の数や「いいね!」を付けた人のリストのスクリーンショットで評価される場合が多いことだ。「それが多くのクリエイターにとって重要であることは理解しています。このテストはまだ予備的な段階にありますが、彼らがブランドパートナーに自分の価値を伝える方法については別途検討しています」と、Instagramの広報担当者はTechCrunchに語った。
TechCrunchは2週間前、Jane Manchun Wong氏の発見によって、Instagramが「いいね!」数を公開しないようなプロトタイプを作成していることを初めて記事にした。Instagramは、その機能が開発されたことは認めたが、まだ公にはテストしていないとしていた。そのニュースは、またたくまに、多くのユーザーからのコメントの嵐を巻き起こした。多くの人は、最初はショックを受けたものの、Instagramの利用が健康的なものになり、ちっぽけな数字に中毒的に囚われることも少なくなるだろうと思うようになったようだ。
ところで、なぜカナダでテストするのだろうか?「カナダ人は非常に社交的でテクノロジーに精通しており、毎月2400万人を超える人たちが、私たちのアプリのファミリーを通してつながっています。私たちは、Instagramの盛況なコミュニティの中で、デジタル慣れしたユーザーに対して、この機能をテストしたかったのです」と、Instagramの広報担当者は説明している。
いじめとの戦いをリードする
F8のステージでMosseri氏は、Instagramがいじめを防ぐだけでなく、いじめに対するインターネットの戦いを主導したいのだという決意を明らかにした。その考えに沿って、Instagramのアプリの中毒性を軽減し、憎悪を助長することのないものにするため、以下のような新機能のテストも発表した。
- ユーザーが何か攻撃的なコメントをしようとしている場合、新たな「ナッジ」機能が警告してくれる。この機能は、検閲には当たらないが、実際にいじめが起こる前に対処することができる。
- 「アウェイモード」は、ユーザーがInstagramからちょっと離れて一息つけるようにする。たとえば転校など、人生の重要な時期に設定することを想定したもの。アカウントを削除することなく、継続的な通知から開放され、人からどう思われるかを気にする必要がなくなる。
- 「交流の管理」では、ユーザーが特定の相手をやりとりする際の限度を設定できる。相手を完全にブロックする必要はない。たとえば、投稿にコメントして欲しくはないが、「いいね!」は付けてもいい、といった相手に使える。あるいは、投稿した写真が見られることは何とも思わないが、ダイレクトメッセージは受け取りたくないという相手にも有効だ。
こうした機能に、デジタル社会を健全なものにする効果があると認められれば、Instagramは全ユーザーが使えるものにするつもりだ。
創立者のKevin Systrom氏とMike Krieger氏が去った後でも、このようにInstagramが健全な利用を意識した新機能を追加しようとしていることは心強く感じられる。特にSystrom氏は、ソーシャルメディア上の妬みと偽りを減らすことの必要性を強く提唱してしていた。そのためもあってInstagramは、ユーザーが生活の中の飾らない自分を表現できる「ストーリー」を開発したのだった。昨年9月に彼が会社を去る前に、Instagramは「アクティビティダッシュボード」を導入して、1日あたりのアプリの平均利用時間を表示可能にした。さらに「コンテンツは以上です」の表示を加えて、過去2日以内の新規投稿がすべて既読になったことを明示し、それ以上スクロールしなくても済むようにした。
Krasnova氏らによる2013年の研究によれば、その実験に参加した人が、妬みが元になった状況に遭遇したうちの20%がFacebook上でのことだった。研究結果は、Facebookが有害な嫉妬を引き起こしていると結論づけている。
「ただ単に他人をフォローしているだけでも、長期的にはユーザーの人生の満足度を低下させる傾向にある。それが社会的な競争意識の引き金となり、不愉快な感情を刺激するからだ」としている。
Instagramの場合、イメージ作りや見映えを気にした外観に重点を置いているのだから、嫉妬の度合いはさらに強くなるかもしれない。「いいね!」の数を隠すことは、自分自身を判断し過ぎないようにすることへの、確かな一歩になるのだろう。
以下のバナーをクリックすると、Facebookのデベロッパーカンファレンスに関するTechCrunchの記事の一覧をチェックできる。
訂正:Instagramは当初、投稿した本人からも「いいね!」の数が見えないようにしたとしていた。しかしその後、「いいね!」数が見えなくなるのは投稿を見る側の人からだけだと訂正したので、それに合わせて記事も修正した。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)