Microsoft(マイクロソフト)の量子コンピュータは、まだ量子ビットが実際に動作するところまではできていないかもしれない。それでも同社は、将来の量子コンピュータをプログラムするためのツールの開発に熱心に取り組んできた。ここ数年の間に、量子コードを書くためのプログラミング言語Q#、その言語のためのコンパイラ、そして量子シミュレータなどを発表してきた。そして米国時間の5月6日、Microsoftはこれらの成果を今後数カ月のうちにオープンソース化すると発表した。
Microsoftによれば、この動きは「量子コンピューティングとアルゴリズムの開発を容易にし、デベロッパーにとって透明なものにする」ことを意図したものだという。さらに、オープンソース化によって、学術機関がこれらのツールを利用するのも容易になるはず。そして、もちろんデベロッパーは、自分たちのコードやアイディアを貢献できるようになるだろう。
当然のことながら、これらのコードはMicrosoftのGitHubページに掲載されることになる。実はMicrosoftのチームは、すでにいくつかのツールや使用例、さらには量子化学計算のサンプルのライブラリをオープンソース化していた。しかし、このプラットフォームのコア部分をオープンソース化するのは初めてのことだ。
「この業界の困難な問題を解決するための当社のアプローチには、新しいタイプのスケーラブルなソフトウェアツールが必要です。Quantum Development Kitが、まさにそれです。私たちの開発プロセスのすべてのステップをサポートしてくれるはずです」と、1QBitの共同創立者兼CEOのAndrew Fursman氏は、今回の発表の中で述べた。「私たちは、先進材料および量子化学の研究を加速する2つの重要なコードサンプルを提供することにワクワクしています。1つはVQE(Variational-Quantum Eigensolver)に関するもの、もう1つはDMET、つまり密度行列埋め込み理論を実証するもので、私たちのQEMISTというプラットフォーム上で動作しています」。
とはいえ、量子コンピュータに関するコードをオープンソース化するのはMicrosoftが最初というわけではない。例えばIBMは、量子コンピュータのプログラムを開発するためのオープンソースフレームワークQiskitを公開している。これにはAerというシミュレータも含まれている。またRigetti Computingも、同社のツールの多くをオープンソース化している。
ちょうど1カ月ほど前、MicrosoftはQuantum Development Kitが10万回以上ダウンロードされたと発表していた。その際には、Jupyter NotebookにQ#プログラミング言語のサポートも提供した。
このようなソフトウェアについての取り組みは、どれも賞賛に値するものながら、Microsoftの量子コンピュータのハードウェアに関する努力はまだ実を結んでいない。同社は量子コンピューティングに関して斬新なアプローチを取っている。それは長期的に見れば、競合他社に対して優位をもたらすかもしれない。しかし短期的には、すでに競合の何社かは、制限があるとは言え、現実の、物理的な量子コンピュータをデベロッパーに提供し始めている。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)