TwitterのDeveloper Labsは設計し直されたAPIへのベータアクセスを提供

ついにTwitterは、7年間も放置状態だったコアAPIをモダンなものにするために動き出した。デベロッパーからの早期のフィードバックを求めている。

米国時間の5月14日、Twitter Developer Labsを立ち上げたのもそのためだ。アプリのデベロッパーは、サインアップすることでプレリリース版のベータAPIを使った実験が可能となる。中でも真っ先に挙げられるのは、設計し直されたGET /TwittsとGET /UsersのAPIだ。

それに続くのが、初めての機能的な変更で、そこにはTwitter Firehoseへのリアルタイムのストリーミングアクセスも含まれている。以前には、高額なエンタープライズ向けのAPI契約によってのみ利用可能だったもので、ツイートのフィルタリングに加え、インプレッションとエンゲージメントの計測機能も備えている。また、Polls(投票)のような新しい機能も、APIとして追加される予定となっている。

APIの再設計に際して、デベロッパーに十分に長い準備期間と発言権を与えることで、より多くのアプリメーカーがTwitter社とプレミアムAPI(たった1つのAPIで月額339ドル=約3万7000円から2899ドル=約31万8000円)やエンタープライズ向けAPI(さらに高価)の契約を結んでくれるようになる可能性がある。

それはまた、デベロッパーの手による分析、計測、広告ビジネスの創設を刺激する可能性もある。そうなれば、さまざまなブランドがTwitterを利用したマーケティングにより積極的に出費しやすくなるだろう。今回のDevelper Labsプログラムと、APIエンドポイントの最初の変更は、今後数週間以内に公開される予定だ。

このプログラムに参加するには、デベロッパーアカウントにサインアップし、最新情報を受け取るためにDebeloper Labsサイトでメーリングリストに参加する。また、TwitterDevアカウントをフォローして、フィードバックを返すこともできる。

Twitterの、データおよびエンタープライズソリューション部門のプロダクトマネージャであるIan Cairns氏は、Twitterが過去にデベロッパーにひどい仕打ちをしてきたことを認めている。突然に方針を変更したり、デベロッパーのビジネスの持続性を阻害するようなレート制限をかけたりといったことだ。

例えば昨年には、APIの変更により、多くのサードパーティ製のTwitterクライアントアプリが動かなくなった。「ここ数年の間に、たしかに何度か、私たちがAPIを管理し、変更してきたことによって、デベロッパーに対して破壊的な影響を与えてしまったこともあるでしょう。私たちがTwitter Developer Labsプログラムでやろうとしているのは、信頼関係を築き、双方向の会話を実現するためのしくみを作ることです。私たちのプラットフォームをいちばん使ってくれているデベロッパーの声が、将来を動かすようにしたいのです」。

TwitterのメインAPIは、2012年8月にリリースされて以降、手が加えられていなかった。その間にも、エンタープライズ用と、広告用APIには、多くの進展があった。もちろん手が加わらなかったことによる利点はある。古いAPIは下位互換性を保つという点では優位性があった。デベロッパーは、頻繁にアップデートする必要もなく、古いユーティリティがずっと動作し続けるからだ。

しかし、例えば「投票」のように、新しい機能をAPIとして実現することを阻んできたのも確かだ。Twitterは、より規則的なバージョン付けができるシステムに移行しようと計画している。その際、何らかの破壊的な変更を伴う場合には、デベロッパーが適応できるよう、前もって通達できるようにするつもりだ。

比較的最近のことだが、TwitterはAPIの合理化を発表し、2017年には有料のAPIも制定した。しかし昨年になって、Twitterのクライアントアプリを動かなくしたり、デベロッパー用ツールFabricをGoogleに売却した。それもこれも、コスト削減の一環であり、過去にはVineを終焉に追いやった実績もある。

そして今年になって、Twitterはスパムを生み出すAPIの悪用と、フォロワーを購入するサービスを取り締まる動きに出た。その伏線となったのは、Cambridge Analyticaのスキャンダルがデベロッパー向けプラットフォームの信頼を揺るがせ、安全性とプライバシーを保護するために機能を制限することを、プラットフォームのオーナーに強いたことだ。

Developer Labsは、この3月にリリースされた新しいアプリ「twttr」のベータ版と同じような、マニアックな路線を行くものとして、返信やフィードの動作がどのように変わるのかをデベロッパーが試せる場になるだろう。Twitterは以下のように述べている。「私たちがDeveloper Labsで最初に注力するのは、対話的なデータを扱うデベロッパーです。そこにはTwitterで何が起きているのかを研究、調査している学者や研究者も含まれます。また、異なる分野のビジネス向けに、ソーシャルリスニングや分析機能を開発しているような会社も対象となります」。

Twitterとデベロッパーとの関係は、これまでずっと不安定なものだった。その大部分は、コミュニケーションの不足が原因だった。デベロッパーが何かを開発しても、TwitterがAPIを変更して動かなくしてしまったり、Twitter自身が同じような機能を開発したりすれば、膨大なエンジニアリングの労力が無駄になってしまう。もし、Developer Labsによってデベロッパーとの透明な対話の道が開かれれば、Twitterはデベロッパーを広報活動にとっての重荷どころか、味方につけることができるはずだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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