メッセージングアプリのLINE、四半期売上ほぼ1億ドル。IPOについては言及せず

過去2年半日本を席巻しているメッセージングアプリ、Lineは、四半期売上を1億ドル近くへと伸ばした。

今年2月に親会社のNHNから独立した同アプリは、9月末締四半期の純売上を99億円(0.999億ドル)とした。アプリストアやデベロッパーへの支払いを含めた総売上は、過去6ヵ月間で2倍以上に増え、156億円(1.576億ドル)を記録した。

来年にもIPOするのではないかとの報道について、同社は先週金曜日の会見で明言を避けた。しかし、同社に近い筋からの情報によると、2014年中頃の上場を検討しているという。

「もちろんIPOについて聞かれると思っています」と、Lineの元の親会社、NHN Japanの事業戦略・マーケティング責任者で現在同アプリの最高責任者である舛田淳氏は語る。「それはわれわれが考えている戦略の一つであり、Twitterなどのサービスを見れば特にそうだろう。しかし現時点では、今すぐやるべきだとは考えていない。現在われわれには十分な現金があり、IPOを行う切迫した必要性はない」

Lineは、韓国の検索最大手Naver傘下のNHNにおいて、社内の秘密プロジェクトとして生まれ驚くべき成長を遂げた。2011年に福島原発を崩壊させた大震災直後にスタートしたLineは、現在世界で2.8億人の登録ユーザーを持つ。月間アクティブユーザー数を公表したことはない。

同アプリは日本で4900万人の登録ユーザーを獲得して完全な飽和状態にすると同時に、日本のモバイルゲーム市場を一気にひっくり返し、古参のゲーミングプラットフォームであるDeNAのモバゲーとGREEを脅かしている。この2社は多機能電話時代を支配してきたが、現在DeNAのシェアは32.5%、GREEは41.5%と昨年から減少している。Lineに加え、TencentのWeixin(月間アクティブ数2.36億人)等のアプリの躍進は、モバイルSNS分野がいかに気まぐれであるかを象徴している。

今やLineは、ゲーム分野でも勢いを得て、39タイトルを提供し、海外のサードパーティーゲームの日本への導入にも取組んでいる。最近では、元Angry Birds開発チーム率いる、フィンランドのBoomlagoonとの契約を締結した。

ゲームプラットフォームに転じる以前、Lineはスタンプおよびスポンサー・アカウントを積極的に推進して売上を伸ばした(特にスタンプは、Facebook、Pathを始めとする欧米の多くのライバルたちが模倣した)。

しかし、現在Lineの巨大な売上成長を支えているのはゲームだ。Lineのゲーム事業は全売上の60%を占め、スタンプの20%がこれに続いている。スポンサー付アカウントおよび商品販売の売上はごくわずかだ。このゲーム中心戦略は、隣国韓国のメッセージアプリ、KakaoがGoogle Playのランキングを支配したやり方に近い。KakaoはGoogle Playの国内ランキングトップ10中全10アプリを提供しているApp Annieは伝えている

次に彼らは、ある種のEコマースあるいはマーケットプレイスを構築し、消費者対消費者、企業対消費者、両方の取引を扱おうとしている。これによって、楽天等の巨人やその他日本の中小Eコマーススタートアップとの戦いが始まる可能性がある。

日本の飽和後、同社の大型成長市場は台湾やタイ等の国々だ。その後はメキシコ、スペイン、ブラジル等、スペイン語圏あるいは中南米の市場に成長を求めるだろう。

米国に関して、同社は現地経営陣を雇用し、Snoop Doggなどのアーティストと提携を結び、ユーザー数の成長をはかっているものの、未だにこの国は困難で驚くほど競争の激しい市場だ。

「アメリカに進出する戦略も考えてきたが、現時点では非常に難しい市場だ」と舛田氏は語り、米国でのユーザー数は公表しなかった。

同氏は、WeixinやWeChatなどの新興勢力もいるが、最大のライバルは古参のWhatsAppであり、インドのような成長市場においては特にそうだと語った。

「あのアプリは、ネット環境の貧弱な地域や、あまり機能の高くないスマートフォンでも利用できる」と彼は言った。

Lineは非常に早く成長したがすぐに落ち込むことはないと舛田氏は言う ― GREEとDeNAが昨年来急落したのは違って。

「われわれと、モバゲー(DeNA)、GREEとの間には根本的な違いがある」と彼は言う、「彼らのSNS(social networking services)はゲームを中心にしているので、ユーザーは容易にサービスを離れられる。しかしLineはコミュニケーションが中心だ。ユーザーは毎日無料通話やメッセージのためにこれを使っているので、ゲームSNSより寿命は長いと考えている」

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(翻訳:Nob Takahashi)


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TechCrunch Japan

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