宇宙は人間には過酷である。慣れていないというだけでなく、ほとんどの人が人生のほとんどを過ごすこの地球と、あまりにもかけ離れているからだ。人間が宇宙で暮らしたり働いたりするとどうなるかを知るために、研究者が多くの実験を重ねているのはそのためだ。たとえば、5月24日に開始された新たな実験では、4人組のクルーが45日間宇宙船に隔離され、生活と仕事をともにした。ただし、この惑星の境界から外に出ることなく。
実際、実験に参加したBarret Schlegelmilch氏、Christian Clark氏、Ana Mosquera氏、およびJulie Mason氏の4人は、ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターから一歩も外にでていない。しかしそこがポイントだ。これは、火星のふたつの月のひとつ、フォボスへ行くミッションをシミュレートした模擬生活・仕事空間なのだ。この実験はNASAが “Human Exploration Research Analog”(人間探査模擬研究)と呼んでいるもので、わざとらしい頭文字のHERAはギリシャの家族の神を意味するが、要するに有人宇宙飛行ミッションのシミュレーションだ。
ちなみに、この実験に参加している「乗組員」たちは実際の宇宙飛行士ではなく、「NASAが宇宙飛行士に選ぶタイプを模倣する」ボランティアであると、人間研究プログラムの模擬飛行プロジェクトマネジャー、Lisa Spence氏が声明で語った。模擬宇宙飛行士たちは、模擬宇宙船ミッション期間中監視され、長期間の隔離ミッションの及ぼす生理的および心理的な影響を研究者が観察する。
このミッションは、研究者が同じ条件で適切なクロスサンプルを得るために行われる4つのキャンペーンのうちの一つであり、このキャンペーンでは特に、乗組員のスペースとプライバシーが制限された環境で生活し仕事をすると何が起きるかを調べ、他の実験セットの場合と比較する。
これは、NASAが2024年まで計画している人類を再び月に送るミッションの前にやっておくべき重要な実験だ。なお、人間的要素と同様に重要である技術面でも最近進展があった。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )