真贋鑑定で偽物撲滅へ、フィギュアを適正価格で個人間売買できる「4real」ローンチ

買取プラットフォーム「ウリドキ」を展開するウリドキは3月17日、フィギュアに特化した真贋保証付き越境売買サービス「4real」をリリースした。

真贋鑑定で偽物撲滅、取引には「板寄せ方式」を採用

4realはユーザーがオンライン上でフィギュアの未開封品を売買できるサービスだ。

運営元のウリドキが取引時に全ての商品を真贋鑑定し、偽物を排除する仕組みを取り入れていることが1つのポイント。サービス上で売買が成立した後、一度運営がフィギュアを預かり鑑定をしてから発送することで、購入者は偽物に騙されることなく本物のフィギュアのみを買えるという。

同サービスでは売り手と買い手双方が希望価格を指定できる「板寄せ方式」を採用した。自分の欲しいフィギュアが4real上に出品されている場合、購入者は出品者の希望する価格で「今すぐ買う」か、自分の希望価格で購入するために「入札」をして待つかを選ぶ。同様に出品者側も購入者の入札価格で「今すぐ売る」か、自ら価格を指定して「出品」するかを選択する。

取引はウリドキが仲介を行う形になるので、売り手と買い手が直接連絡を取ったり、個人情報を伝えあったりすることは不要。そのため直接の値段交渉で市場の価格が値崩れすることはなく、さらにサービス上で過去の売買価格や取引推移などを開示することで、適正価格での取引を後押しする。

この板寄せ方式は米国発ユニコーン企業の「StockX」や、以前紹介した日本のスニーカー売買サービス「モノカブ」などにも共通する取引形式だ。それらのサービスを知っている人であれば、4realは「フィギュア特化のStockX」に近いものだと考えるとイメージしやすいかもしれない。

出品者の視点では個別のコミュニケーションの手間がないことだけでなく、出品にまつわる撮影や採寸、紹介文の入力といった「ささげ業務」の負担が少ないのもメリットだ。ウリドキ側が商品情報を保持しているので、出品者は売りたい商品を見つけたら希望販売価格を入力して出品する(もしくは入札価格でそのまま売る)だけでいい。

また国をまたいで商品が売買されることを見据えて、当初から日本語のほか英語と中国語(簡体字)に対応。現時点では出品は日本国内からのみとなるが、PayPal支払いを活用して海外のユーザーもフィギュアを購入できる。なお海外からの注文が入った場合にはウリドキが海外発送や決済、翻訳などのサポートをする。

ビジネスモデルは取引が成立した際の手数料モデルだ。ウリドキは出品者から取引価格の15%を販売手数料として、購入者からは10%を鑑定手数料として受け取る。

フィギュアの二次流通マーケットの適正化へ

フリマアプリの普及などによって個人間で気軽に物を売買できる土壌が整ったことで、二次流通市場が拡大している。その反面、1つの課題となっているのが偽物や海賊版だ。

ウリドキで4realの事業部長を務める野尻航太氏の話では、特にフィギュアに関してはこの課題が大きく、Amazonを始め国内外問わず著名なECサイトやフリマサービス、オークションサイトなどにも多くの偽物が出品されているのが現状だという。

「フィギュア自体が偽物でも商品画像などは本物と同じものを使っているので、なかなか見極めづらい。価格などを見ると正規品と比べて極端に安かったりもするが、普段から相場をチェックしていないとわからず、偽物の被害に合ってしまう人もいる。こうした問題に悩まされているのはリユース店舗も同様で宅配買取で送られてきたものが偽物だったり、買取後に気づいたりする場合もある」(野尻氏)

ウリドキが今回のサービスを始めるにあたって秋葉原のリユース店15店舗に「偽物のフィギュアは出回っているか?」を聞いたところ、8店舗が「出回っている」と答えたそう。加えて「実際に偽物・海賊版フィギュアを売りにくる人が増えてきている」、「偽物は専門家が見れば分かるが素人には分からない」といった回答も得られたとのことだ。

ウリドキ代表取締役の木暮康雄氏によると、同社ではこれまでモノを売りたいユーザーと買取ショップをつなぐC2Bの買取プラットフォームを展開してきたこともあり、つながりのあるリユース企業からフィギュアの偽物が増えてきてることについて悩みを打ち明けられていたそう。それが4realを立ち上げるきっかけにもなった。

「こうした状況が続けばオンラインの二次流通マーケットでフィギュアを売買するのが難しくなることに加え、安価な偽物が出回ることで本物の相場が下落するような問題にも繋がる」(木暮氏)

そこで複数のリユース企業の協力の下、各社が持つ真贋鑑定のノウハウを集結。偽物を見抜く体制を整え、オンライン上であってもユーザー同士が安心してフィギュアを取引できる場所を目指して4realを立ち上げた。

「フィギュアを取り扱う買取業者も応援してくれているところが多く『自分たちも4realを使いたい』『うちのナレッジを提供するよ』と声をかけてくれる企業もいる。このままでは二次流通が廃れてしまうので、みんなで協力して業界を良くしていかないといけない。各社がそれぐらいの危機感を持っている」(木暮氏)

今回4realをローンチするにあたっては、初めから海外に住む外国人ユーザーも巻き込むことを狙ってサービスの設計を進めてきたそう。会社として越境コマースに挑戦したいというだけでなく、海外のファンにも参加してもらうことでフィギュアが積極的に取引される場所を作り、二次流通マーケットを盛り上げたいという考えもあるからだ。

「Netflixなどの影響で日本のアニメが世界各国に届くまでの時差が少なくなり、タイムリーに行き渡る時代になってきた。それに伴ってフィギュアなど日本のサブカルチャー商品に対する需要も世界的に高まってきている。そこで必要なのがオンラインで本物のフィギュアを売買できる仕組み。偽物や海賊版を撲滅し、国内外の人が安心して取引できるプラットフォームを作っていきたい」(木暮氏)

ウリドキは2014年の設立。2019年2月に複数の事業会社から1.5億円を調達しているほか、同年9月には「eBay」への出店を通じて日本企業の越境ECを支援するイーベイ・ジャパンと業務提携も結んでいる。

左からウリドキ 4real事業部の鈴木菜那氏、同社代表取締役の木暮康雄氏、4real事業部長の野尻航太氏

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TechCrunch Japan

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