中国では、ショートビデオアプリは単なるひまつぶしのために使われているわけではない。この種のサービスは、ユーザーは商品をよく観察したり、作物がどうやって育てられ、作られたかをライブセッションを通じて売り手に尋ねることができるオンラインバザールとして使われている。
TikTok(ティックトック)の中国バージョン(Douyin、抖音)の主要ライバルであるKuaishou(快手)は、2020年8月に5億件のEコマース注文を受けたことを発表した。これは同サービスがユーザーによる収益化に力を入れていることを示す明確な兆候であり、近々予定している上場の後押しにもなるだろう。
この発表の前に、Reutersは、TikTokクローンのZynn(未訳記事)の親会社でもあるTencent傘下のKuaishouが、早ければ2021年1月に香港で上場して最大50億ドル(約5200億円)を調達する計画であると報じた(Reuters記事)。Kuaishouはコメントを拒否したが、本件に詳しい筋はTechCrunchに詳細を明らかにした。
「5億件の注文」という主張にはいくつか複雑な点がある。というのも注文のキャンセルや返品が除外しておらず、Kuaishouは実際の販売件数を明らかにしていない。また同社はこの結果、自分たちはAlibaba(アリババ)、JD.com、Pinduoduoに続く中国で第4位のEコマース会社になったともいっている。
この期間の各社の売上について比較できる数値がないのでこの主張を検証するのは困難だが、得られるデータで考えてみよう。Pinduoduoは以前、2019年の前半6カ月間に70億件以上の注文を受けたと語っている(The Motley Fool記事)。これは1カ月平均11億6000万件にあたり、Kuaishouの2倍以上だ。
しかし、Kuaishouの数字は多くのユーザーが同社の動画プラットフォームを通じて購入したか、少なくとも購入を検討したこと表している。
このアプリはこの国独特の、ある意味で日常的なユーザーコンテンツが喜ばれていることで知られており(SAGE Journals記事)、1日あたりのアクティブユーザーが3億人であると豪語している。これはユーザーが8月中に1回以上注文したことを意味している。売られた製品の多くは、メンバーの多数を占める地方ユーザーが育てた野菜だ。同アプリは小さな町や遠隔地域で早期に地盤を獲得したが、その理由はコンテンツのアルゴリズムが「華やかさ」を優先していないからにほかならない。
Kuaishouは時間とともに、田舎の生活の率直な動画を楽しむ都会人の間でもユーザーを増やし、農産物を購入する人も増えてきた。地方の農産物を都市地域もたらすことは、中国の地域経済活性化政策とも一致しており、Kuaishouが「貧困緩和」といった用語をソーシャルメディアキャンペーンで使うことも珍しくなくなった。
コンテンツの傾向が「インフルエンサー」の洗練された動画に寄っているDouyinも、広告の収益分配と商品販売の両方でコンテンツクリエイターによる収益化を可能にしている。Kuaishouの2倍に当たる6億人のDAU(1日あたりアクティブユーザー数)をもつDouyinは、来年には800億人民元(約1兆2400億円)の収益をクリエイターにもたらすと約束した、とByteDance ChinaのCEOであるKelly Zhang(ケリー・チャン)氏がDouyinのクリエイターカンファレンスで最近語っている。
カテゴリー:ネットサービス
画像クレジット:Kuaishou
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi / facebook )