イオントラップ型量子コンピュータの開発で注目を集めているスタートアップ、IonQが米国時間10月1日に「完全な32キュービット(qubit)で低ゲートエラーのコンピューターを開発した」と発表した。
IBMが用いるベンチマークでIonQは400万量子ボリュームを達成するものと期待している。これはIBM自身が記録した量子ボリュームを2桁も上回るもの(IBMリリース)で驚くべき飛躍だ。事実であれば、これが史上最も強力な量子コンピュータであることは間違いない。
スタートアップとして豊富な資金調達に成功している(未訳記事)同社だが、これまで量子ボリュームという指標を使ったことはなかった。同社の広報担当者によれば、IonQは量子ボリュームが必ずしもマシンの性能を表す最適の指標とは考えていなかったという。しかし業界全体がこの指標を使うようになったため、同社としても量子ボリュームの数字を発表したという。同社は キュービット相互作用の信頼性が99.9%であることがこの成果を生んだとしている。
IonQのCEOでプレジデントのPeter Chapman(ピーター・チャップマン)氏は「単一世代のハードウェアの中で、IonQは11キュービットから32キュービットへの進化に成功しました。さらに重要な点は、32キュービットすべてを高い信頼性で動作させることに成功した点です。カスタマーやそのアプリケーションによって違ってきますが、量子コンピュータで80キュービットから150キュービットで高信頼性の論理ゲートを実現し、さらに毎年キュービット数を倍増ないしはそれ以上に増加させたいと考えています。2つの新世代ハードウェアをを開発中です。現在、量子テクノロジーを手がけていないコンピュータ企業は時代に取り残される危険性があります」と述べている。
IonQのイオントラップというアプローチは、これまでIBM(D-Waveもそうだ)が採用している方式とは大きく異なる。量子コンピューティングでは異なるメーカー、特に異なるテクノロジーを用いている場合におけるキュービット数の比較は難しい。しかし量子コンピュータのおおよその能力を測るものさしとして便利なために、広く用いられている。
IonQ共同創業者兼最高化学責任者のChris Monroe(クリス・モンロー)氏は「今回発表したシステムはこれまでの量子コンピュータでは不可能だったタスクを可能にします。さらに重要なのは新しい(イオントラップ)テクノロジーが、さらに処理能力を拡大していくことを可能にする方法に見極めがついた点です。新しいIonQシステムは量子コンピューティングの実用化における聖杯ともいうべき『複数キュービットを用いて耐障害性が高いシステムを構築する』という目標の達成に道筋を開いたものです」と述べた。
新しい誤り訂正技術を開発したことによりIonQでは「ほぼ完璧な」理論キュービットを実現するために13キュービットしか必要しないとしている。
現在、IonQの新しいシステムはプライベートなベータとして提供されている。こうした初期ユーザーからのフィードバックが同社の主張を裏づけるものであるかどうか興味深い(IonQの発表した数字が飛躍的な進歩を意味するため、量子コンピューティング関係者からも懐疑的な意見がいくつか出ている)。将来はパートナーであるAmazon(アマゾン)のAmazon BraketやMicrosoft Azureの量子クラウド、Quantum Cloudサービスを通じて提供していく考えだ。
次世代システムの筐体はどちらかというと平凡な印象を与える。しかし極めて高度なレベルで安定した環境(温度、振動、湿度など)を必要とするようだ。
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:量子コンピュータ、IonQ
画像クレジット:Kai Hudek, IonQ
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)