タクシー会社でいまだ人力業務が多い配車・予約管理などのバックオフィス業務のDXを進めてきた、徳島を拠点とする電脳交通は10月8日、総額5億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、既存投資家のほか、今回新規投資家として三菱商事、JR東日本スタートアップ、第一交通産業グループ、エムケイ、阿波銀行、いよぎんキャピタルが加わっている。既存投資家には、日本交通グループのJapan Taxi(Mobility Technologies)、JR西日本イノベーションズ、NTTドコモベンチャーズなどが名を連ねる。
今回の資金調達では、タクシー事業会社の第一交通産業グループ、エムケイが参加している点に注目。なお、第一交通産業グループは7月に、電脳交通が開発したクラウド型タクシー配車システムの「自動配車機能」と「データ解析機能」を、三重県津市を拠点とするグループ会社のタカモリ第一交通に導入済みだ。
最近は都市部の大手タクシー会社を中心に配車アプリにより利便性が高まっている一方で、国内のタクシー事業者は市場の縮小や従業員の高齢化などに悩まされている。IT化の遅れにより、配車・予約業務の75%が未だに電話対応など、非効率・長時間と厳しい労働環境も問題だ。
その結果、地方では観光や地元住民の移動手段としてのタクシーの需要が減っており、交通空白地帯の拡大も起きている。電脳交通は、配車・予約業務やデータ解析などをクラウド化・集約化して、資本投下に限りのある地方のタクシー会社を中心にDXや労働環境の支援・改善するのが狙い。
具体的には、経営効率化、配車業務の負担軽減・コストの削減、配車アプリ間のデータ共有・交換を実現する。将来的には、QRチケットや決済レスコール機能、フードデリバリー、公共タクシー配車などの計画もある。
なお配車・予約業務については、全国各地に配車センターを開設しリモート配車業務を手掛けている。導入企業は社内に配車業務のスタッフなどを配置する必要がなくなり、平均30〜50%のコスト削減につながっているという。
今後は各社との提携により、タクシー業界全体のさらなるDXを推進。今回の資金調達は、全国への事業展開、機能強化と配車センターの拡充など事業に充てられる。