中国以外ではあまり評価されていない中国の動画アプリ「Kuaishou(快手)」は、香港証券取引所で大規模な新規株式公開(IPO)を完了した。このアプリは、TikTok(ティックトック)の中国バージョンDouyin(抖音)の最大のライバルであり、広告やサブスクリプションで収益を上げている多くの欧米の動画プラットフォームとは異なり、チップビジネスを最大の収益源にしている。
Kuaishouの株式は中国時間2月5日、香港市場で1株あたり338香港ドル(約4593円)で取引を開始し、公開価格115香港ドル(約1563円)に対して194%高を付け急騰した。これにより、同社の時価総額は1兆4000億香港ドル(約19兆250億円)近くまで膨らんだ。今回の上場では、オーバーアロットメントオプションを除いた総株数は3億6521万8600株で、同社は約54億ドル(約5689億円)を調達した。
Tencent(テンセント)に支援されているKuaishouは、これにより成長投資のための財源を補充し、うまくいけば黒字化に向けてまい進することができるだろう。2020年の最初の9カ月間で、同アプリは2020年同期の18億元(約293億円)の調整後利益と比較して、72億元(約1173億円))の調整後純損失を計上していた。
Kuaishouの株式は2020年11月に終了した11カ月間で、4億8100万人の月間ユーザーを誇った同アプリの事情に精通している中国の機関投資家と個人投資家の両方で大ヒットとなった。同アプリは香港市場で過去最多の応募数を記録し、合計1648億ドル(約17兆3626億円)にのぼる個人投資家の需要を引きつけたとサウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。同社株は、Phillip Securities Group(輝立証券集團)が運営するグレーマーケットプラットフォーム上で322.8香港ドル(約4387円)、オンラインブローカーのFutu Securities(富途證券)で421香港ドル(約5721円)に達した。
Douyinと同様、Kuaishouも(GIFアプリとしての短い期間を経て)15秒の短い動画を作成して共有するためのプラットフォームとして始まり、後にライブストリーミングへも拡大していった。名を馳せたクリエイターはフォロワーとのさらなる交流を求めたいと考え、フォロワーはクリエイターへの忠誠心や愛情を表現したいと思うだろうから、この移行は自然なことだ。ライブストリーミングとバーチャルギフトは、そのようなニーズに応える。
Kuaishouには主に3つのマネタイズ方法があり、中でもライブストリーミングが収益の大部分を占めている。2020年11月に終了した11カ月間に、同アプリのユーザーのうち5800万人がライブ動画に毎月お金を費やし、平均すると1人の有料ユーザーにつき47.6元(約776円)の収入があったという。
同アプリは広告も販売しており、各ユーザーが71.4元(約1163円)のマーケティング収入をもたらしている。最後に、Kuaishouではクリエイターが商品を販売することもできる。GMV(Gross Merchandise Value、流通取引総額)はeコマース取引を測る上で緩く使われる業界指標だが、Kuaishouのプラットフォームを通じ直接購入につながったGMVは同じ期間中に3327億元(約5兆4200億円)に達したという。
ちなみに、Alibaba(アリババ)によるTaobao(淘宝、タオバオ)のライブ配信プラットフォームであるTaobao Live(淘宝直播、タオバオライブ)は、12月に終了した12カ月間のGMVで4000億元(約6兆5200億円)以上のGMVをもたらした。
Kuaishouは増え続けるライブストリーミングからの収益を享受しているが、その背景には規制上のリスクが潜んでいる。中国政府は、18歳未満のユーザーがバーチャルギフトを購入することを禁止している。また規制当局はプラットフォーム運営者たちに対し、毎月ユーザーが購入できるバーチャルギフトの額に上限を設けるよう促しているが、今のところ上限を特定したり提案したりはしていない。
同社の目論見書には「バーチャルギフトにおいて最終的に課されるユーザー支出の制限は、バーチャルギフティングから得られる収益や業績に悪影響をおよぼす可能性がある」と記載されており、Kuaishouはそのリスクを認識している。
規制当局がバーチャルギフトの規制に踏み切るまでの間、Kuaishouは事業の多角化を図りながら、今後も成長を続けていくことになるだろう。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Kuaishou、IPO、中国
画像クレジット:Kuaishou
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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)