SEOの時代が終わったなら、5年後にはソーシャルメディアの時代も終わるだろう。焦らずに、じっくり進んでいこうではないか。
今回は、この主張について、私の意見を述べさせてもらう。
現在の検索業界では、ソーシャルが検索に「取って代わる」、「コンテンツが一番大事」、そして、ペンギンやパンダ等の検索アップデートがとどめを刺し、SEOが「終わった」と主張する人達が多い。私には随分と大げさに聞こえる。
SEOは「終わったのか」?
確かにソーシャルの重要度は高まりつつある。しかし、今現れているパターンを基にSEOの死を宣告するのは、時期尚早だと言わざるを得ない。どちらかといえば、現在の状況は、健全な変化がもたらした影響だと考えられる。
かつては非常に重要とされたシグナルの重要度が下がり、その代わりに、新しく、より純粋なシグナルの重要度が上がる段階である。しかし、システムは変わっていない。
分からないから、無視する – 都合が良い考え方
この「検索 vs ソーシャル」論において見過ごされている、あるいは、避けられている議論がある。それは、ソーシャルメディアの重要性が高まっている要素を突き止める議論である。 「ソーシャル」は広範な用語であり、ソーシャルが検索に取って代わると言う主張は、未熟な見解に過ぎない。
ソーシャルは検索に「取って代わる」のではなく、価値を加えているのだ。取って代わると言う主張は現実性に乏しい。
事実、検索アルゴリズムは、今でも以前と同じような取り組みを行っている – ユーザーに対して、障害物の少ない最善の結果、および、ユーザーエクスペリエンスを提供する試みである。これが検索エンジンが最も力を入れてきた試みであり、今後もこの焦点がぶれることはないだろう。
それでは、何が変わったのだろうか?
変わったのは、コミュニケーションを取る方法、そして、オンラインのコンテンツに対する行動およびリアクションである。当然ながら、この中にはオンラインで情報を共有するメソッドも含まれる。
2000年に私がグーグルで働いていたなら、「ウェブインデックス」の無数のデータについてのみ考えていればよかったはずだ。
ユーザーに最も関連するHTMLのコンテンツを検索クエリに基づいて提供する取り組みに力を入れていたことだろう。また、最大のコンテンツのコレクションを手に入れた時点で、ユーザーの行動および検索クエリに応じて、どのHTMLページが最高のコンテンツなのかを特定するだけでよかった。
しかし、その後の数年間で様々な変化が生じた。
何が起きたのか?
ユーザーの行動が変化した。現在、情報は、より小さな単位で、より頻繁に共有され、消化されるようになり、また、オーソリティは大型のサイロから小さな柱へと分散している。
2000年の初期には、オーソリティは、ウィキペディア等の大きなブランドや投稿済みのリサーチの論文に割り振られていた。ウェブサイトは「信頼に値」せず、検索エンジンが、コンテンツの“信頼性”を判断する唯一の基準は、リファラーのみであった(当時はリンクの本数)。リファラーが多ければ多いほど、人気が高く、それゆえ、信頼に値する – と言う概念である。
2013年に時間の針を戻そう。現在、- 検索エンジンがソーシャルシグナルの重要性を認めている以外 – 基本的に状況は変わっていない。ユーザーはオンラインで今まで以上に社交的な行動を取り、それに従い、情報もソーシャルネットワークを介して、社交的に共有されるようになった。かつては、重要な「リファラー」はリンクだけであった。現在、いいね!、共有、そして、ツイートがリファラーに仲間入りしている。
いいね!と共有だけがソーシャルではない
ソーシャルシグナルは、いいね!、共有、そして、ツイートのボリュームだけではない。エンゲージメントレベル、リーチの拡大、頻度、共起、ユーザー層の関連性、拡大の経緯、オーソリティサークル等、目立たないものの重要なシグナルが存在する。 全て、ブランドがオーディエンスから集めたがっていた情報である。TVやラジオからはこのような情報を得ることは不可能であり、全て推測に頼らざるを得なかった。現在、大量の生のデータを活用することが出来る。マーケティングアナリストにとっては宝の山と言っても過言ではない。
つまり、ソーシャルが検索に取って代わると言う主張は部分的に正しい。実際には、ソーシャルは検索の重要な一部となりつつあり、双方がより力強く、そして、高度に進化していくのだ。
SEOは終わったのではなく進化した
冒頭の指摘 – SEOが終わっているなら、ソーシャルも間もなく終わる – に戻らせてもらう。私個人としては、どちらも終わろうとしているわけでもなければ、終わっているわけでもないと思っている。
それよりも、検索が、より大きく、より重要度が高く、そして、より高度なマーケティングのチャンネルに進化したのではないだろうか。検索はソーシャルを組み込み、良いところを全て吸収し、ノイズを取り除いているのだ(完璧ではないが)。
検索はさらに進化していくだろう。現在の最適化の手法も変化していくだろう。一部のメトリクスは重要度が下がり、新たなメトリクスが現れるはずだ。要するに、数年前のSEOが終わったと言い換えることが出来るかもしれない。
未来のSEOとは
ソーシャルも同様に進化していく。要するに、これから登場する検索の新しいテクノロジーのことだ。ユーザーの行動を変えるアクションを簡素化するテクノロジーが台頭してくるだろう。2000年にはデスクトップを使ってウェブ形式で情報を探していたものの、現在、私達は音声コマンド機能を使ってスマートフォンで情報を求めている。今後、手を振ることで(あるいはトピックを思い浮かべることで)、目の前に(グーグルグラス)複数のメディアで情報が表示されるようになるかもしれない。
ハードウェアおよび検索テクノロジーの双方で進化が起きている。第六感や着用可能なジェスチャーインターフェース等のテクノロジーが高度化するにつれ、検索も高度化していくはずである。その他にも私は次のようなことが起きると予想している:
- (従来の方式の)「SEO」が行われていないサイトが、検索結果で上位にランクインする – ブランドの関連性とソーシャルメディアでの引用が強いため。
- ユーザーの推奨は、検索結果でクエリに対して、より賢明な方法で利用されるようになる。
- ローカル検索は、さらに関連性が増し、カスタマイズされるようになる。
- プラットフォームベースのカスタマイゼーションは、さらに適切に、そして、高度なレベルで行われるようになる。
- オーソリティは、個人の影響力、ソーシャルサークルの強さ、そして、当該の分野の専門知識と改めて定義される。
- ソーシャル検索は、「ウェブ検索」と並行してシステムとして残るものの、戦略的な判断でいずれ連携 & 融合していく。
上述したトレンドは、現状から推定されるものである – 当然、何かしら意外な展開が姿を現すはずである。
検索を形成する「ユーザー」と「データ」の二大要素は、分刻みで進化しているテクノロジーを利用し、さらに効率的で、さらに適切で、そして、さらに単純な形式へと進化している。このような常に変化する、動的な検索の世界においては、SEOが終わったと言う結論が導き出されるのは、先見の明が欠けていると言わざるを得ない。
知りたい欲求が尽きない限り、そして、情報を検索する行為がなくならない限り、検索テクノロジーは存続し、最適化のメソッドは – それが、ソーシャルであれ何であれ – 今後も求められるだろう。
プラットフォームの利用に劇的な変化が起こると、「関連性」は見直される – しかし、検索のDNAは基本的には変わることはない。
検索エンジンは、検索クエリからユーザーの思考を理解するにつれ、さらに賢くなり、SERPの適切度は増し、「テーラーメイド化」するだろう。検索エンジンに追いつき、同じように考えることが、マーケティングを成功に導く鍵となる。
そのため、ツイート、そして、共有に励んでもらいたい。データの流れを止めるべきではない。
この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「The Future Of SEO in a Socially Driven World」を翻訳した内容です。