親交がある方には既に伝えたが、私は今年の1月からスマートシート社でインハウスのSEOとして働いている。インハンスになってから数週間が経過したこともあり、今回は、エージェンシーのSEOとインハウスのSEOの違い、インハウスSEOとして成功する上で必要な要素、そして、落とし穴について私の見解を提供する。
エージェンシー vs インハウス
まずは、エージェンシーSEOとインハウスSEOの違いから見ていく。
インハウスSEOは同じことを何度も繰り返しているわけではない
エージェンシーでは、繰り返しは必要とされる。推奨した作業をクライアントが実施するまでは、何もすることが出来ない。
エージェンシーでは、請求可能な勤務時間、そして、表に記載される推奨事項の数は、あまり多いとは言えない。また、クライアントにミーティングに参加してもらわなければ、新しいプロジェクトを始めることは出来ない。余裕があると思ったら、次回のミーティングの開催日が2週間後に決まり、今日から推奨事項を提示しなければならなくなるケースもある。するとフラストレーションが溜まり、実際に効果があるかどうかは別として、とにかく提供することが可能な提案を探す羽目になる。
インハウスSEOとして、私は障害を調査し、交渉を行うことが出来る。また、価値をもたらす別の作業に取り掛かることも可能である。
請求可能な時間数が存在しない
これほど嬉しいことはない。支払いを請求する時間を計算しなくてもよいのだ。どんなツールまたはストップウォッチを利用するにせよ、勤務時間の計算は不可能である。最終的にあやふやな記憶や推測に頼らざるをえなくなる。
インハウスSEOは集中力を維持するのが困難
エージェンシーでは、検索とソーシャルメディアに関して、従業員は私とCEOを頼りにしていた。当然、CEOではない私に質問は集中した。つまり、担当しているかどうかに関わらず、全てのクライアントの仕事に私は関与していた。
ところが、インハウスSEOに転身すると、さらに多くの同僚から質問が寄せられ、作業を中断する回数が大幅に増えた。当然だ。エージェンシーでは、受け付けからCEOに至るまで全員が検索とソーシャルのスペリシャリストであった。80%の知識を全員が持っており、20%の困難な取り組みにおいてのみ、助けを必要としていた。
インハウスSEOとして、私はゼロから同僚に情報を与え、SEOのメリットを教えなければならない。この会社の従業員は、自然な検索とソーシャルの重要性を心得ているものの、活用する方法を学び始めたばかりである。基本的に孤立していることが多いPPCのランディングページとは異なり、パンフレットページ、ケーススタディのぺージ、ブログの投稿… インデックスされるページは全てSEOに影響を与える。
インハウスは社内を移動して、直接話をすることが可能
エージェンシーでは、クライアントとの間で問題を抱えると、全てクライアントの意思に左右される。コミュニケーションのスピードが遅くなるにせよ、技術的な問題が生じているにせよ、あるいは、クライアントが防御姿勢を取っているにせよ、クライアントが実際に決断を下すか、承認を与えるまでエージェンシー側は待つしかない。
インハウスSEOの場合は、単純に席を離れて、同僚を訪ねることが出来る。求めている答えを毎回得られるわけではないものの、全ての問題の状況を把握し、私の目標を理解し、分かち合うスタッフと力を合わせて作業することが出来る。
SEOのコミュニケーション
エージェンシーでSEOとして働く場合でも、あるいは、ある程度の規模を持つ会社でSEOの担当者として働く場合でも、次のようなコミュニケーションスキルが求められる:
専門用語を使わずにコミュニケーションを取る
エージェンシーで同僚と話しをする時、あるいは、カンファレンスに参加する時は、初心者には意味不明な専門用語を使ってコミュニケーションを取ることが出来る。ある優秀な教授から、伝える能力こそが知識の本来の意味であると教えられたことがある。分かりやすい言葉で定義し、利用を心掛けるべきである。また、分からないときは説明を求めて欲しい点を同僚に伝えておこう。
規律を持って、簡潔に話す
同様に、ダラダラ長く話して、他の従業員の時間を独占するべきではない。明確に、簡潔に、そして、説得力を持って話すことが出来ないなら、インハウスSEOとして成功する可能性は低い。
覚悟を決め、駆け引きを理解し、賢明な行動を取る
初めて出勤した日に、CEOからITディレクターの主な指示 – アプリをクラッシュさせるな – を言い渡された。スマートシートの信頼性は、機能と同じように重要である。弊社のウェブサイトとアプリは同じドメインに置かれているため、テストが必要されてる取り組みもあれば、単純に禁止されている取り組みもある。エージェンシーでは、禁止されている取り組みに手をつける必要はない。しかし、インハウスでは、このような難問に配慮しつつ、ITディレクターやアプリの開発者と協議を行い、解決へ向けた活動を行うことが出来る。
価値の高いアクティビティを選び、秩序を保ち、脱線を避ける
スマートシートに入社した際、改善することが可能な様々な取り組みを見つけた。 入社後の1ヶ月間は、毎日異なる機会を見つけ、追いかけていた気がする。2ヶ月目からは、実現可能であり、最大の見返りをもたらすアクティビティに狙いを定めることにした。
SEO部門が一人だけであれ、または、数名のスタッフで構成されているのであれ、実現することが可能なプロジェクトの数は、時間の制約を受ける。そのため、時間を最大限に活用するべきである。
共有することが出来る知識
インハウスSEOは、知識を周りの従業員と分かち合うことが出来る。すぐに共有する価値のある知識がある点を覚えておいてもらいたい。
SEOは競争
コンテンツを最適化し、リンクとオーソリティを獲得するだけでは不十分である。SEOの競争は激しい。キーワードの競合者がコンテンツおよびオーソリティの構築を加速する中で、追いつき、追い越す必要がある。同じレベルで努力するだけでは不十分である。競合者よりも質を高め、早く動き、そして、強くなる必要がある。
検索エンジンもまたスパマーとしのぎを削っている。検索エンジンはスパムを封じ込める取り組みを強化しているが、一方でスパマーは検索エンジンを操作する新たな方法を見つけている。まっとうな会社はこの戦いから距離を置くべきである。雇用者のドメインを危険にさらすべきではない。
サイトの最適化 vs ページの最適化
マーケティング部門に、内部リンクの構造、ドメインのオーソリティ、そして、SEOを支えるコンテンツ等の最適化のコンセプトを理解してもらう必要がある。
競争の激しい分野では、例えばウィジェットに関するページを1つ投稿するだけでは、グーグルのSERPでトップ 10に食い込むことは不可能である。リンクおよびサイテーションの質が高い、複数の支援する文書が求められる。とりわけ有料検索に慣れている会社は、この点を理解していないことが多い。
全てのページがSEOのランディングページではない
ショートテールまたはロングテールのキーワードに対して好きなページを最適化することは可能だが、全てのページが上位にランクインする、または、トラフィックをもたらすことが出来るわけではない。従って、トップレベル、または、価値の高いコンテンツに対してキーワードの最適化を実施し、その他のコンテンツはスキップして、リンクとオーソリティをもたらす新しいコンテンツの投稿に移るべきである。
念のために言っておくが、技術的なSEOのエラーがあれば解決し、内部リンクを最適化する必要はある。また、ページを最適化していなくても、編集作業から解放されるわけではない(例えば、アンカーテキストをSEOでターゲットにしているページに加える)。
SEOの成果を記録する表を策定した後、価値の低いページを見直し、ロングテールのキーワードに対して最適化することが出来るかどうか確認しよう。これは、ウェブサイトに慣れる必要があるインターンや新しいスタッフに向いている仕事である。
コンテンツのタイプによって、SEOの強さは異なる
これは個人的に好きなポイントである。 ウェブのアセットや文書によって、意図、そして、SEOの強さは異なる。
例えば、プレスリリースキャンペーンを立ち上げる際は、ケーススタディは効果的かもしれないが、ツイッターでバイラル化する可能性、あるいは、多くのリンクを獲得する可能性は低い。また、人気の高いカンファレンスで生中継ブログを実施すると、多くのメンションやリンクを獲得することが出来るものの、登録や売り上げへのコンバージョンに関しては期待薄である。そのため、様々な意図に応じて、様々なタイプのコンテンツを用意しておこう。
私はこの点をフライホイール(はずみ車)の例えを使って説明した。ブランド、ブログ、そして、ソーシャルメディアのアセットの人気が高くなればなるほど、それぞれ異なる経緯でSEOに貢献する確率は高くなる。この評価を勝ち取る必要がある。人気の高いブログでは、記事がバイラル化するだろう。一方、知名度の低いブログでは、全く同じ記事であっても何も起こらない。はずみ車を回す必要があるのだ。
競争する分野の範囲内で行動する
現在、どのキーワードで会社のウェブサイトが上位にランクインすることが出来るのか、どのキーワードに手が届きそうなのかを、同僚に把握してもらう必要がある。例えば、キーワードSEOで上位へのランクインを試みるSEO業者が少ないが、これには理由がある。時間の無駄でしかないことをSEO業者は心得ているのだ。短期の目標、長期の目標、そして、難易度の高い大胆な目標を定めてもらいたい。積極的に行動する必要はあるが、無理な期待を抱かせないように注意しよう。
ここでヒントを送る。私はキーワードリサーチを行う際、フレーズ一致をベースにしているが、常に完全一致の数字をレポートするようにしている。
最適化 vs 過剰な最適化
過剰な最適化について同僚に警告を与えておく必要がある。主に2つ理由がある。まず、検索エンジンから過剰最適化のペナルティを科されたくないからだ。
一息つくスペースを得ることがもう一つの理由である。どこにいっても「前の職場ではこの作業をしていましたね。ここでも同じことをしてくれませんか?」と言う人達がいる。スタートレックのボーンズなら、「勘弁してくれ、ジム。機械じゃないんだ、人間なんだよ」と言って呆れるだろう。
チェックリストをつけていても、全てのページを同じように最適化することは出来ない。SEOは、技術であり、科学であり、そして、創造である。SEOに関わる機会が増えれば、スキルは改善され、勘は冴えわたってくる。しかし、たまには「必要以上に最適化はしたくありませんが、考えてみます」と冷静に、そして、気楽に言いたいものである。
この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「Survival Tips For Becoming An In-House SEO」を翻訳した内容です。