信じられないような話だが、企業のウェブサイトを担当する上で、最も厳しい取り組みは、方針の決定ではない。企業のウェブサイトにおいては、通常、改善する点は山ほどあり、作業リストは永遠と続いている — SEOを完璧に実施し、すべて適切な処置が施された「神」サイトであってもだ。
意思決定よりも大変なのは、このタスクを特定し、優先順位をつけ、実施しつつ、開発部門や関係部署の上司を含む全ての関係者から支持を取り付ける取り組みである。
私の知り合いの一流のエンタープライズ(企業)SEOの担当者は、全員、この難問に対処する方法を編み出している。規模が大きく、厄介な問題を分割し、対処可能な範囲で解決していくためのフレームワークをもたらす、システム、プロセス、そして、手法を既に確立している。
経営の世界では、このプロセスは、「業務計画」と呼ばれている。業務計画は、プロセスのフレームワークとして価値が高く、理解するべきであり、あらゆるプロジェクトに応用することが出来る。
SEO向けの業務計画
以下に、ウィキペディアによる業務計画の定義を掲載しておく:
業務計画とは、戦略的な目標と目的を戦術的な目標と目的に結びつけるプロセスを指す。業務計画は、節目、成功の条件を描写し、一定の業務期間において、戦略計画をどのように、あるいは、どのパーツを業務に導入するのか説明する… 業務計画は、年間の運営予算に対する基礎であり、そして、根拠でもある。
数年間を費やし、私も、とても簡単に実行し、大きな成果をもたらす業務計画へのアプローチを見出すことに成功した。このアプローチは、次の3つのシンプルな問いに対する答えに左右される:
- 今、どこにいるのか?
- どこに向かいたいのか?
- どうすれば辿り着くことが出来るのか?
それでは、早速、SEOの計画にどのように応用することが出来るのか検証していこう。
今、どこにいるのか?
SEOプロジェクト(あるいはSEO以外のプロジェクト)に着手する際は、まずは、現状を明確に把握しなければならない。SEO版の個人一般教書演説のようなものだ。要するに、現在の状況をしっかりと理解する必要がある。過去と比べてどうなのか、SEOの全ての領域において、どのように成長してきたのか、あるいは、どのようにパフォーマンスを下げてきたのかに至るまで、現在の状況をしっかりと網羅しなければならない。
下の図は、私が考慮する領域、そして、各領域で確認するポイントのサンプルを描いている。それぞれの領域では、もっと多くの要素をチェックしなければならないが、言いたいことは分かってもらえるはずだ。
(上から)結果 ・トラフィック・コンバージョン
ビジビリティ ・ランキング・ソーシャル
アセット ・コンテンツ・関係/リンク
基礎 ・アーキテクチャの問題・機会
内側から(基礎から)、あるいは、外側から(結果)から着手することが出来る。どちらからでも構わない。
注記:
- 現状の計測値として、ビジビリティから手を付ける過ちがよく見受けられる。「2014年はセマンティックマークアップの年になる」(日本語)でも触れたように、目的は、出来るだけ高いランクを獲得することではなく、出来るだけ多くのトラフィック(そして、成果)を獲得することである。
- まるで単一の製品を提供しているように、会社全体のウェブサイトのSEOを実施する過ちも回避してもらいたい。少数派の企業を担当しているな話は別だが、恐らく、多数の製品、サービス、そして、オファーを抱えているのではないだろうか。
分割は、強力なツールであり、パフォーマンスをより細かいレベルまで掘り下げて確認し、パフォーマンスにおける違いを特定する上で効果的である。米国の大統領が、経済が2%成長したと宣言したとする。これは朗報だが、詳しく調べてみると、工業生産高は4%増加したものの、消費者支出が0.5%下がっていたことが分かった。この情報は、力を入れるべき場所を教えてくれる。
現状を把握する点においても、同じことがいえる。パフォーマンスのレポートを事業分野ごと、または、事業部ごとに分割するために必要な取り組みを行い、それぞれの領域のパフォーマンスを理解しなければならない。
どこに向かいたいのか?
全てのマーケッターが、トラフィック、そして、コンバージョンを増やすことを目的に掲げている(また、そうするべきである)。様々な方法で、これから向かう目的地を特定することが出来るものの、個人的には、競争の状況を確認し、向かう場所に関して、自分自身を鼓舞する方法を好む。どんな業界に属しているのであれ、必ず、自分よりも優れた会社が一つや二つはあるはずだ。
競合者分析ツールは、検索の世界の自分の現在地を把握する上で大いに役立つ。
しかし、ライバルだと思い込んでいる会社だけでなく、自然の検索結果で実際に叩きのめされている本当の競合者を特定する必要がある。計測したキーワードに対する上位のサイトを集め、それぞれのドメインが持つSERPのシェアを視覚的に示すと、とても分かりやすい。
例えば、小売り大手、Searsの経営陣は、ターゲットやウォルマートが競合者だと考えているかもしれないが、検索においては、販売する各製品ラインによっては、数百社以上のライバルが存在する。
Searsに対する本当の競合者レポートを以下に掲載する(Searsが実際に成功しているキーワードを恣意的に集めてみた):
以下の画像は、appliance(電化製品)に対するレポートだ:
違いに気づいただろうか?また、「通常」の競合者に該当する競合者は含まれていただろうか?
各ランキングに重みづけを行う、または、さらに質的な計測を加えることで、より詳しいデータを得られるものの、この点は、別の機会で説明することにする。
どこに向かいたいのか?を決めるためには、競合者の情報を集め、分析し、自分の情報に対して、分割して、SEOの各取り組み(基礎、アセット、そして、ビジビリティ)のギャップを特定する必要がある。こうすることで、それぞれの領域の機会を見つけることが出来るようになる。
明らかなギャップに関しては、競合者が最適化を行っているものの、自分の会社は行っていない領域 — 自分の会社は持っていないコンテンツを競合者は持っている、もしくは、自分が持っていない関係を競合者は持っている — を調べれば特定することが可能だ。さらに、セマンティックマークアップ、内部リンク等、競合者のオンサイトの取り組みを調査する手もある。自力でこのタイプのデータを獲得するつもりなら、時間がかかることを前もって知っておいてもらいたい。しかし、その価値は十分にある。
どうすれば辿り着くことが出来るのか?
プロセスのほぼ最後のステップに当たるのが、現在地と目的地の間のギャップを埋める方法を特定する取り組みである — つまりSEOロードマップの策定だ。そのために必要なタスクを挙げていく:
- 優先する、ハイレベルのプロジェクトのリストを作る。
- プロジェクトを小規模なサブタスクに振り分ける。
- 優先順位と影響を各タスクに割り当てる。
- インパクトを予測する。
大量のキーワード、そして、コンテンツを持つ企業のサイトを運営している場合、予測は、難しいかもしれない。
単純に、分かっているキーワードを全て取り上げ、CTRの曲線に基づいて、すべて1位(あるいは3位以内)を獲得したら、トラフィックはどれだけ増えるのかを予測するミスがよく見受けられる。季節による影響、ターゲットのキーワードの個別のランキング、そして、競争の激しさのレベルを考慮していないため、これは、恐らく、予測の方法として最悪の部類に入るだろう。
時間を割いて検索量の傾向を調査し、初日から12ヶ月後までのランキングの改善計画を策定してもらいたい。続いて、集めたキーワードのデータに応じて、推測を行う。こうすることで、サイトの残りの部分に対して、推測を行う確固たる基盤が出来上がり、社内で分かち合えば、適当に予測する場合と比べて、遥かに大きな自信を得ることが出来るようになる。
結論
今回紹介した業務計画のフレームワークは、ロードマップを作る際の大事な要素に焦点を絞っているものの、– 実際の業務計画のインパクトを計測、監視、そして、反映する能力の重要性を決して忘れないでもらいたい
このフレームワークは、SEOを管理する方法に対して、今までとは違う見解を得る上で役に立つはずだ。
取り組みへの予算やサポートを要請する前に、業務計画を策定することで、詳細で周到な計画を裏付ける効果が見込めるため、必要な支持を得ることが出来るようになるだろう。
この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「Secrets Of Successful Enterprise SEO Part 1: Operational Planning For SEO」を翻訳した内容です。