新たな収入源を必死で求めるパブリッシャー達が、ネイティブ広告に大挙して押し寄せている。
パブリッシャーは、ウェブサイトの貴重なスペースを、トラフィックを獲得し、ブランドアウェアネスを強化する新たな手段を探しているブランドに渡している。
そして、このスペースに対して、プレミアム価格を請求する。
PR記事、スポンサードコンテンツ、そして、モバイルフォンアプリのインタースティシャルに至るまで、ネイティブ広告(日本語)には、様々な形がある。そして、選択肢は増え続けている。同時にネイティブ広告に費やされる金額も増加の一途を辿っている。
しかし、(簡単な答えは存在しないが)ブランドは、「ネイティブ広告に費やす資金に対して、プラスの利益を得ているのか?」を問う必要がある。
そこで、私はこの分野の複数のキープレイヤーに見解を尋ねてみた。
ネイティブ広告が台頭していることは明白
コンサルティングエージェンシ-のKIA/Kelseyは、米国のソーシャル広告の収益は、2012年の47億ドルから、2017年には110億ドルに大幅にアップすると推測している。
年間18.6%のペースで増加することになる。
このような成長率を経験すると、当然ながら、ネイティブ広告に関するアドバイスを送る取り組みが増え続ける(もちろん、我々も参戦している)。
さらに、パブリッシャーは、この需要に応えるため、社内にエージェンシーを作っている。Onion Labs、Snap、そして、Studio@Gawker…この分野で台頭するプレイヤーが続出している。
また、Sharethrough、Outbrain、RespondHQ、そして、AppsFire等、ネットワークを設立して、フィード内広告を支援する企業も現れている。
Sharethroughのダン・グリーンバーグCEOは、Eメールを介して、「ネイティブ広告によるフィードの収益化は、パブリッシャーにとって、収益を増やしていく究極のチャンスである。適切に実施すれば(つまり、通常の広告ではなく、コンテンツを活用する必要がある)、品質の高い、礼儀を重んじたユーザー体験を読者に与えることが出来る」と主張している。
パブリッシャー、そして、メディアの仲介者は、毎年、バナー広告の見返りが減り続けているため、スポンサーはこの形式を採用すると指摘するようになるだろう。しかし、Chartbeatのトニー・ハイレCEOは、この考え方を完全に否定している(後ほど詳しく説明する)。
このように、ネイティブ広告を利用する動きは活発になっている — しかし、実際に効果はあるのだろうか?
ネイティブ広告の効果
AppsFireのオーリエル・オハヨンCEOは、「ネイティブ広告には2つの種類がある。すぐにROIを求めるのではなく、ブランディングを意識して作られる広告、そして、すぐにROIを計測し、その要因を特定することが可能なネイティブ広告が存在する」と明言している。
オハヨンCEO曰く、Jeep等の自動車メーカーのInstagramでの広告は、恐らく、直後の販売増加を期待しているのではなく、エンゲージメント(参加を介した交流)と接触範囲を成功の基準として計測するようだ。
「大半の編集関連のコンテンツに同じことが言える。データを持っているわけではないが、直接的なレスポンスではなく、ブランド構築、あるいは、購入/意思決定の援助を考慮しているのではないだろうか。つまり、ROI主導のパフォーマンスを求めているわけではない」とオハヨンCEOは続けた。
SharethroughのグリーンバーグCEOは、ネイティブ広告の効果を評価するために実施された調査を幾つか紹介してくれた。
まず、SharethroughとIPG Labsが協力して実施した調査: 「ネイティブ広告の有効性」を検証する。
結果の概要を紹介する:
- 消費者は、バナー広告よりも、ネイティブ広告を見る確率が高い。
- ネイティブ広告は、ブランドの好感度を高める効果がある。
- ネイティブ広告は、購入する意欲を高める。
- ネイティブ広告はシェアしてもらえる確率が高い(32% vs 19%)。
- 広告するブランドに個人的に共感する確率が高い(71% vs 50%)。
- ネイティブ広告をオリジナルのコンテンツと同じように読み、同じ時間を費やす。
別のSharethroughのレポート(Neilsen Labsとのコラボレーション)「最もブランドの好感度を上げる動画広告のメソッドは?」では、ネイティブ動画広告とプレロール動画広告の比較が行われている。
ネイティブ動画広告は、ユーザー側が再生を始める広告であり、時間の長さは決まっていない。一方のプレロール広告は、動画が始まる前に自動的に15-30秒間再生される。
それでは、この調査の結果を簡単に説明する:
- ネイティブ動画広告は、ブランドのイメージを85%アップさせる。
- プレロール動画広告は、ブランドの好感度を下げる確率が高い。
さらに、昨年の8月には、InMobiの製品部門を統括するピユシュ・シャー氏が、フルページのインタースティシャル(「間」の別の言い方)モバイル広告は、動画の視聴数が25倍、コンバージョンは7倍、そして、広告スポンサーの収益は9倍に増やすと述べている。
シャー氏は、「通常、インタースティシャルは、ゲーム、ソーシャルアプリ、そして、娯楽関係のアプリの宣伝において特に効果が高い」と結論付けている。
これまでは文句のつけようがない。
ネイティブ広告の効果を測定する方法
そもそも、何を計測しようとしているのだろうか?
クリックスルーが測定基準として最も適切しているだろうか?エンゲージメントは向いているだろうか?オンサイトまたはオフサイトだろうか?ページビューを数えればいいのだろうか?ページの滞在時間がベストだろうか?
何よりも最も重要なのは、「ネイティブ広告は利益をもたらしているかどうか」である。
パブリッシャーは、様々なアプローチを考案している。Forbesのチーフレベニューオフィサーを務めるマーク・ハワード氏曰く、Forbesは、「ページビューのカウント、ユニークビジターのカウント、フォロワー、シェア、コメントのカウントをスポンサーに伝え、好きな時にいつでもこのデータを分類することが出来るようにしている」ようだ。
また、SheKnowsのチーフレベニューオフィサー、サマンサ・スカイ氏は、「私達はコンテンツの有効性を計測する方法とほぼ同じ方法でネイティブ広告の有効性を計測している。つまり、基本的に、関心の大きさ、ユーザーが広告に没頭した時間、そして、シェアする欲求が計測の対象となる」と明言している。
また、NewsCredは、下の便利なガイドの中で、適切なソーシャル広告のオプションに対する、適切な計測基準を特定している。
どうやら、ネイティブ広告は、堅実で、健全な生活を送っているようだ。しかし、このようなバラ色の未来を予測していない人物が少なくとも二人はいる。
ネイティブ広告否定派
一人目は、ネイティブ広告は滅亡すると確信しているジャーナリスト/マーケッターのカーク・チェイフィッツ氏だ(ただし、その他の否定派のように連邦取引委員会が、滅亡に追い込むとは考えていない)。Story WorldwideのCEOであり、編集長を務める同氏は、ネイティブ広告は、単なる一時的な流行に過ぎないと断言している(つまり、バナー広告と同じだと言うことだろうか?)。
チェイフィッツ氏の主張は、ネイティブ広告が、ブランドの信頼性を落とすと言う仮説に成り立っている。「コンテンツマーケティングがここまで成功している中、なぜネガティブに考えるのか?」
と言う問いに対して、同氏は次のように説明している:
ニュートラルなプラットフォーム(例えばYouTube)、または、広告スポンサーが所有するサイトに表示される際、ブランドを語るストーリーはブランドのために全力を尽くす。
つまり、ブランドは、ネイティブ広告が、自らのコンテンツに関して、期待に応えていないことに気づくようになる、と同氏は指摘しているのだ。
この見解には一理ある。
2011年のCustom Content Councilの支出調査で判明した事実を以下に挙げていく:
- マーケッターの72%は、雑誌の広告よりも、ブランデッドコンテンツの方が効果は高いと考えている。
- 62%は、テレビのCMよりも効果が高いと考えている。
- 69%は、ダイレクトメールとPRよりも優れていると答えている。
もう一人のやや悲観的な考えを持っているのは、先程紹介したChartbeatのトニー・ハイレCEOである。
このTimeの記事で、トニー・ハイレ氏は、インターネットに関して、私達の見解はいつも誤っていると主張している。「バナー広告は役に立たない等の一般的な考えは、現実とは異なる」と同氏は述べている。
ネイティブ広告が、パブリッシャーの救世主であると言うアイデアもハイレ氏は否定している。
「通常の記事では、読者の3分の2が15秒間没頭するものの、ネイティブ広告の場合、その割合は3分の1に激減する」と言うのが同氏の持論だ。
要するに、ネイティブ広告を見ても、オーディエンスに没頭してもらえないことになる。
「ブランドが料金を支払い、パブリッシャーがトラフィックをもたらすコンテンツは、ビジターの注目を集めることも、クリエイターの目標を達成することもない。平たく言うと、ネイティブ広告は、注意欠陥障害を患っているのだ」とハイレ氏は指摘している。
この指摘は当然と言えば当然である。
試しに、Inc.、The New York Times、または、Gawker等のサイトのブランデッドコンテンツを見ると、コンテンツが、売れるコンテンツの重要な要素を満たしていても、編集記事には勝てないことは明白である。
Buzzfeed: ネイティブ広告大使
しかし、あるパブリッシャーは、有益なビジネスモデルを確立している可能性がある。それは、BuzzFeedだ。そして、そのモデルは、直感に訴える、優れたコンテンツを目玉に掲げている。
「ネイティブ広告の現状を把握する意識調査」(日本語)で私はCaptain Morganを例に出したが、それはコンテンツの質が高かったためだ。
しかし、上の記事では言及しなかったが、この件に関して、少し奇妙な点があった。Captain Morganは、自社のウェブサイトでこの記事を15ヶ月間以上も掲載していなかったのだ。その理由を考えてみよう。
色々な理由が考えられる — 予算が枯渇した、他のことに注目していた、目標を達成した等々。気になったので、Captain Morganに連絡を取ってみた。すると、同社の代わりにキャンペーンを行ったエージェンシーを紹介してもらえた。そこで、担当者に質問を投げ掛けたが、まだ返事は受け取っていない。
また、BuzzFeedの広告部門にもeメールを送ったが、こちらも返事は貰えていない。
このページには、BuzzFeedでの広告に関して、次のように記されている:
- ブランデッドコンテンツは、ソーシャルメディアでのシェアが平均で1.3倍増える。
- クリックスルー率は、1-3%増える(大して増えていないと思うかもしれないが、業界の平均の20倍と聞けば考えが変わるはずだ)。
そして、Taco Bell、Mini、そして、Virgin Mobile等の一流ブランドによるケーススタディを見る限り、BuzzFeedは価値を与えているように見える。しかし、どのぐらいの価値を与えているのだろうか?また、この価値は全ての広告スポンサーにメリットを与えているのだろうか?現時点では、ハッキリとした答えは分かっていない。
結論: ライターが再び得をする
ネイティブ広告は滅亡することはない。
そうではなく、現在、ネイティブ広告の価格 — とりわけ、ブランデッドコンテンツとスポンサードコンテンツの類 — が、マーケットの価値に合わせて、下がる現象が起きている。何を測定するべきかに関して賢くなり、測定するツールが開発されるようになると、ROIを明確に理解することが出来るようになり、その後、プレミアム価格は下がる。
最後にもう1点気になったことを言っておく。
私は「ネイティブ広告が圧倒的な勝利を収める」と言う考え方には、懐疑的な立場を取っている。しかし、ライター、特に優秀なライターにとってチャンスであることは疑いようがない。
Contentlyでジョー・ローソースカス氏が指摘しているように、かつてブランドは編集コンテンツを深く理解しているとは程遠い状態であったが、最近では、プロのジャーナリストが参加し、また、Red Bull、Chipotle、そして、GE等の優れたブランドによって模範が示されていることもあり、大きく進化を遂げている。
事実、ライター冥利に尽きる1年がまた訪れようとしているのかもしれない。
意見募集
ネイティブ広告は、大事な成果をもたらすことに、どの程度成功しているのだろうか?
この記事でスタッツや裏話に目を通した結果、ネイティブ広告への期待度は高まっただろうか、それとも、下がっただろうか?
奮ってGoogle+で議論に参加してもらいたい。
ネイティブ広告シリーズ
ネイティブ広告シリーズ記事に全て目を通しているだろうか?まだ読んでいない記事があるなら、今のうちに追いついておこう:
- ネイティブ広告が古いジャーナリストを黙らせる5つのポイント(日本語)
- ネイティブ広告の現状を把握する意識調査(日本語)
- ネイティブ広告の実例集12選(日本語)
- 最高のPR記事(アドバトリアル)を成功させる14の手順(日本語)
Flickrのクリエイティブコモンズの画像 — The University of Washington
この記事は、Copybloggerに掲載された「Is Native Advertising Even Profitable for Brands?」を翻訳した内容です。