デスクトップとモバイルでの勝利を手にしたまま、Googleは全く新しい分野の成功を目論む。特に家庭内における、ハンズフリーの検索である。
*記事内のリンクは全て英語となっています。
Googleはインターネットにおける検索の第一世代、つまりはデスクトップ検索での勝利を手にするために博打を打った。また、その成功をモバイル検索でも手にすることを可能とした。そして、今は第三世代へと変貌する局面に直面している。インターネットに接続されたデバイスの時代における、ハンズフリーの検索だ。Google AssistantとGoogle Homeの登場により、Googleがこの分野における勝利を手にすることも可能となる。
Google HomeはAmazon Echoへの挑戦
現状、ユーザーがGoogleを利用する場合、”タッチ”という作業が必要不可欠となっている。デスクトップでも、モバイルでも、ユーザーは文字を入力するためにキーボードをタッチしなければならない。音声検索を利用する場合でさえも、検索結果を選択するために、スマートフォンにタッチする必要がある。もちろん、最初の検索結果は音声で知らせてくれるのだが、それでもタッチという作業は発生してしまうのだ。
これは、Amazon Echoとは非常に異なる点である。Amazon Echoは製品に話しかけるだけで、本日の天気がわかったり、最新のニュースが知れたり、商品を注文したり、音楽を再生できたりする。Amazon Echoにはスクリーンは存在しない。Amazon Echoはタッチも必要としない。他の製品と比べても、人間に話しかけ情報を得るといった感覚に最も近しい製品であるのだ。Googleはこの分野において遅れをとっていた。今までは。
もし、(家電製品に組み込まれたあらゆるアシスタント機能を含む)ホーム・アシスタントという分野がかつてのスマートフォンの繁栄のように急激に成長していけば、Googleのポジションは危ういものとなってしまうだろう。Googleはこの分野で戦うための物理的なデバイスであるGoogle Homeを手にしたのだ。しかし、このデバイスには新たな知力も必要とされる。
ユーザーとの対話を可能とするGoogle Assistant
Google Assistantはその知力となる存在であり、機械学習や人工知能の技術を活かしている。Google Assistantは、Googleへ話しかけるという行為をユーザーに促す目的で設計されている点が、非常に重要であろう。
もちろん、「既にGoogleに毎日話しかけている」と思うかもしれない。タイプして検索を行い、返事を得るということだ。しかし、Google AssistantはGoogleをさらなる高みへと導くものだ。まるで、何かを行うために人間に話しかけるているという感覚を、ユーザーに与えてくれるのだ。
「Googleにおける会話式のインターフェイスをゼロから構築するとさえ言える」。これは、Google Assistantを統括する、エンジニアリングのヴァイス・プレジデントである、スコット・ハッフマン氏が先週語った内容だ。
もちろん、音声検索という手段で、ユーザーは何年間もGoogleと会話してきた。しかし、Google Assistantはそうした経験をさらに高めるものであり、実世界におけるアシスタント(実際の人間)から何かしらの答えを得るような方法で、Googleとかかわりあうことを可能とするのである。
AlloのみでGoogle Assistantを評価するべきではない
Google Assistantは、先月リリースされたメッセージアプリ、Google Alloの一部として、初めて一般公開された。
Alloでは、情報を得るためにGoogle Assistantに直接かかわりあうことができる。しかしながら、単純にGoogle検索を行った方が便利だと私は感じている。AlloにおけるGoogle Assistantが魅力的となる場面は、ユーザーの役に立とうと、会話中に情報を提示してくれる時である。
例えば、誰かと映画に行こうかと会話をしている場合、Google AssistantはGoogleの広大なデータベースから参照した情報を提供し、我々が見るべき映画を提示してくれるのだ。
ユーザー:映画にでも行かないか?(映画の上映時間を教えて)
Google Assistant:サンフランシスコ近郊で上映している映画です。
*画面に映画のリストが表示されている。
非常に素早く、便利で、他のアプリで検索を行う必要が無い。
個人的な意見ではあるが、メッセージアプリとして認知されるために、Alloにも直面している課題はある。Alloの一部としてのGoogle Assistantを見るだけでは、十分な評価とは言えないだろう。仮にAlloが広く普及しなかったとしても、それはGoogle Assistantの失敗であるとは結論付けられないのだ。
なぜなら、Google Assistantはあらゆるアプリやデバイスに組み込まれる存在であるからだ。そして、Google PixelとGoogle HomeにGoogle Assistantが使用されることが、本日発表されている。
スマートフォン用のGoogle検索アプリとの関係は?
Googleは既に、Android端末(スマートフォン)に加え、iOSのデバイスにおいても、Google検索アプリによる圧倒的なシェアを獲得している。また、Google検索アプリに話しかけることで、必要な情報を得ることもできる。しかし、Google Assistantはさらに上を行く存在を目指しており、Googleとの関わりにおいて、より多くの情報と支援を与えているのだ。
Google Assistantは、あらゆる場面におけるGoogle Assistantとの会話を記憶する。そのため、Google HomeやAlloで交わされた会話を、それぞれの利用シーンで引用することができるのだ。(Google Homeで行われた会話の内容が、次にAlloを使用した際に、参照されることがある。)
また、アシスタント機能も非常に重要だ。現在のGoogle検索アプリでは、検索結果はリスト形式で返ってくる場合が多い。しかし、Google Assistantでは、アクションを起こす内容が提供されるのだ。
Google Assistant:何かお困りですか?
ユーザー:去年の大みそかに取った写真を見せて。
Google Assistant:Googleフォトから、条件に合致した写真を表示します。
Google Assistantは文脈を解釈する知能も備えている。これは、以前は”Now on Tap“と呼ばれていたものであるが、例えばWebページを閲覧している時に、Google Assistantは役に立つであろう、関連する情報を提案してくれるのだ。
私は、ホームボタンを長押しして起動することができるこの機能が、Android端末に実装されていることをしばしば忘れてしまう。しかし、PixelのようなGoogle Assistantが実装されているスマートフォンの場合、追加情報があることを知らせるために、アニメーションが表示されるとのことだ。
Pixel以降、Android端末はどうなっていくのか?iOS端末におけるGoogleアプリとGoogle Assistantとの関係はどうなるのだろうか?
ハッフマン氏は次のように述べている。「最終的な目標は、広範囲おいてGoogle Assistantを普及させることだ。しかし、その順序や期限などは設けていない。我々は、新しいGoogle製のスマートフォンから始めていくことが、まずは最善であると考えている。」
Google Homeに話を戻そう
Google Assistantで注視すべき分野はGoogle Homeであろう。Googleにとっても最も注力する分野だ。この分野がデスクトップの領域を支配するようになれば、既存のプレーヤーを窮地に追い込むことになる。モバイル検索が台頭した際、Googleは自身の強みを保持しながら、変化する環境に適応している。
インターネットに接続されたデバイスやホーム・アシスタント端末は新たな境地である。Googleにとって好ましいことは、この新たな領域こそが、Google Assistantにとって理想とも言える領域であることだ。
私は、Amazon Echoを長らく愛用している。そして、多くのAmazon Echoのユーザーと同様、私はこのデバイスを非常に気に入っている。音楽の再生、ニュースのヘッドライン、ショッピングリストへの追加などが音声で行うことができ、そのたびに「未来はここにある」というような感覚を覚える。
Amazon Echoにとっての課題は、複雑な作業や、既存の情報リソースでは対応できない内容が求められた場合だろう。そして、その課題に対して、Googleは解決策を提供している。Googleは既に、スマートフォンにおける音声検索とWeb全体から答えを導き出すという経験をすでに持っているのだ。
Google Homeによって、大まかな検索体験は保持しつつ、非常に狭い領域での対応が必要な場合も対処してくれるはずだ。Amazon Echoよりも低価格であることからも、Google Homeが大きな売り上げを見せ、多くの家庭に設置される可能性はあるはずだ。
名前についても言及しておこう
Google AssistantがGoogle Homeに搭載されるが、人間の名前のようなものは付けられていない。AppleのSiri、MicrosoftのCortana、AmazonのAlexa。Googleは・・・、Google Assistantだ。
「信じてほしい。我々はその件について、本当に長い時間、社内で検討しているのだ。」とはハッフマン氏の言葉である。
「Google AssistantはGoogleのインターフェイスであり、代表するものだ。そのため、”ジョーイ”や”スージー”といった名前は付けづらい。」とも述べている。
映画スタートレックに登場するような、コンピューターに向かって話しかけるという状況とよく似ている。スタートレックに出てくるコンピューターにキャッチーな名前は付けられておらず、我々は”コンピューター”と呼んでいたのだ。
ハッフマン氏はGoogle Assistantは個性(パーソナリティ)を持つことになると述べている。Googleは確かにその取り組みを進めており、こちらの記事で詳細を確認することができる。
少なくとも、Google Assistantはいずれ正式な名前を付けられるだろう。先日のGoogle IOで発表された際は、”Google assistant”と発表されていた(assistantの”a”が小文字になっている)。Googleは、まだ満足のいく名前は付けれらていないのだ。
今回発表されたGoogle Assistantは、1つの名前であるが2つの意味を持っている。1つはGoogleが長い間をかけて構築してきた検索プラットフォームを多くのプロダクトに組み込むというもの。もう1つは、ユーザーを支援してくれる存在としての名前であり、ユーザーに愛される存在となることを望んでいる。
Google AssistantとGoogle Homeについての詳細は、本日行われたGoogleのイベントについての記事も確認してほしい。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「With Google Assistant & Google Home, Google seeks to win the hands-free generation of search」を翻訳した内容です。