*記事内のリンク先は全て英語となっています。
この新しいリソースは、引き続き、GoogleをApple独自の検索システムの端に追いやる。しかし、Google Nowは予測機能でさらに先を行っている。
Appleの最新のオペレーティングシステムが本日リリースされる。iOS9だ。iOS9はAppleのパーソナル・アシスタント機能であるSiriとSpotlight検索に改良を加えている。今回変更された内容の要約を記そう。
Spotlight。Apple製の検索エンジン。
昨年、Spotlight検索はあなたのiPhone内の情報以外を検索できるように改良された。画面をプルダウンすれば、”Spotlight 検索”を呼び出すことができる。
今年の初め、ジェイソン・カラカニス氏が非常に優れた記事を書いている。内容は、SpotlightがどのようにしてGoogleを破滅させるか、についてだ。記事内容には非常に同意している。実際にGoogleを破滅させることができるかはわからないが、Appleが今後進むであろう方向と非常に合致していると感じている。つまり、Appleは”核反応”のようにGoogleを破壊するのではなく、ゆっくりと時間をかけて、Googleを”閉じ込める”つもりなのだ。
私が2012年に書いた記事の内容を以下に抜粋する。
もしあなたがAppleであれば、あなたは何をするだろうか?あなたはSiriを、他の検索パートナーと伴に、成長させるだろう。Googleを閉じ込め、検索という領域を勝ち取ることを狙うのだ。
最終的には、あなたはApple製の検索エンジンをローンチすることになる。Webベース版のSiriだ。おそらく、あなたはSiriという名前はそのままにしており、Siri.comを通じて利用できるようになっている。限定されたプロバイダーから、よく検索される情報を取得し、それに対しての答えを提供できるように、ゆっくりと、成長していく。さらに、”バックアップ”の検索エンジンを変更する可能性もある。最終的には、パートナーを必要としない状況になるだろう。ちなみに、GoogleはBingに取って代わられている。ひっそりと。
あなたがAppleであれば、上記の内容がGoogleと戦う術であるはずだ。爆弾は一つも落とされない。消費者は、戦争をしていることにすら、気が付かないのである。
“閉じ込め”の戦争は、Spotlightによって継続されている。しかし、奇妙なことに、Spotlightという名前が表示されなくなっている。下記に、iOS8(左側)とiOS9(右側)の画像を掲載しておく。(私はベター版のiOS9.1を一般公開前に使用することができている。)
Spotlight検索を行う際、あなたは何かに気がつくはずだ。Siriの新しい機能である、”アプリ・サジェスト”が使えるようになっているのである。これは、Siriの”前衛的な”機能であり、これについては後ほど述べたいと思う。
Spotlight内のBingとその他の検索結果
Spotlight検索は、以前と比べ、より多くの情報を提供している。よりリッチな検索結果を表示するようにもなっており、スポーツなどについては”カード”形式の結果を表示しているのだ。例えば、”angels”を検索した場合は下記のような違いがある。左側がiOS8であり、右側がiOS9の検索結果だ。
iOS9の場合は、特定の試合のスコアが表示されていることに気がつくだろう。南カルフォルニアのオレンジカウンティのアナハイムに位置する、ロサゼルス・エンゼルスの試合結果だ。さらに、別の例を記載しよう。
こちらの例では、”Web動画”というエリアが新しく表示されている。Twitterよりも上位に位置し、Bingについてはさらに下に追いやられている。さらに、別の例を記載しよう。
上記の例では、両方のケースでWikipediaをソースとする検索結果が1位に表示されている。奇妙なことに、Notes機能からのコンテンツは合致しないことになっている。Notes機能を同期しているのにも関わらずだ。iOS9ではWeb動画のエリアが表示されている。また、両者ともに、Bingの検索結果は下に追いやられている。
あなたのSpotlightでの検索結果は、インストールしているアプリによって異なるし、逆を言えば、インストールされているアプリのコンテンツはより多く表示されるようになるだろう。これについて(Googleによる同様の取り組みについても)は、エミリー・グロッスマン氏とシンディ・クラム氏が非常に優れた記事をSearch Engine Landに投稿している。下記にリンクを記載しておこう。
- App Indexing & The New Frontier of SEO: Apple Search + iOS App Indexing
- App Indexing & The New Frontier Of SEO: Google Search + Deep Linking
GoogleはSafariに留まる
Spotlight検索はBingを去年から採用しており、これについての変更はない。Appleの検索システムからGoogleが閉めだされた格好だ。
しかし、Safariにおいては、Googleは引き続き採用されている。AppleとGoogleの長期に及ぶ契約が数カ月前に満了しているにも関わらずだ。Googleは5月に、この契約についての話し合いは引き続き行われていると発言している。個人的な見解ではあるが、この契約は、実はひっそりと再契約されているか、6ヶ月か12ヶ月ほどの一時的な延長が合意されていると考えている。
Spotlight内のBingのように、Googleは検索エンジンの最終兵器である。デフォルト設定では、Safariはあなたが入力した内容をサジェストするため、Spotlightから内容を引っ張ってきている。検索結果には他のソースからの情報も含まれる可能性があり、スポーツのスコアや天気予報などの場合は、カード形式の情報が表示される場合もある。
下記に、天気予報の表示をiOS8とiOS9の場合で比べた画像を掲載する。iOS8では天気予報のアプリをサジェストする表示となっている。
Siriは前衛的であろうとしている
Apple独自のデジタルアシスタント機能であるSiriは、検索に用いることも可能だ。今月末に登場するiPhone 6sとiPhone 6s Plusでは、”Hey Siri”と呼びかけることで稼働する機能を実装している。ハンズフリーで用いることができ、プラグインの設定も必要ない。
さらにSiriは新しい機能を実装している。Appleによる、Siriの新しい機能の一覧はここで確認することができる。その中の一つを取り上げると、特定の場所で撮影した写真を見つけるよう、尋ねることができる機能だ。Appleフォト内の写真の中で合致したものを探してくれるのだ。その他では、マップで特定の場所、例えばグロッサリーストアなどを選択し、”ピクルスを買うことを忘れないように”と伝えることができる。そして、該当のお店に到着した時にその内容を伝えてくれるのだ。この機能は、マイクロソフトのCortanaに似ている。
Siriはあなたが尋ねる前に、あなたが望むものを予測しようとしている。Google Nowが行っている試みと同様だ。この”前衛的”な機能は、Google Nowに追いつこうとする機能だろう。道のりは非常に長いと言える。なぜなら、Siriの場合は、検索やブラウジングの履歴やメールの内容などを参照せず、非常に限定的な方法を採用しているからである。
もちろん、Siriはあなたのメールの内容を参照している。しかし、Cortanaと同様、あなた自身のデバイス内のメールのみを見ているのであり、クラウドに保管されたメールは見ていない。しかも、あなたが、Appleのメールアプリを使用してい場合のみ、該当するようになっている。あなたのメールの内容から学習した内容は、ローカルの場所に保管される。Googleはクラウドに保管されたあなたのメールを見ており、その内容をクラウドベースの場所に保管している。
iPhoneの画面を左側にスワイプすることで、Siriの詳細な予測機能を確認できる。ここでは、Siriがあなたが好むであろう内容を予測し、それについての情報を記載している。良く使用するアプリや、ニュース速報、”近くの〇〇”といった情報だ。
この画像は、上記のページが表示するアプリやニュース速報や近くの〇〇の違いの例だ。昨日の夕方、近くの〇〇はレストランとバーを表示している。今朝の場合は、ランチとコーヒーの場所を表示している。
いずれかをタップするとAppleマップが表示され、関連する情報も併せて表示されている。下記は、私がいた場所の近くのレストランとバーのリストを表示している画像だ。
この機能は、Googleが最近追加したGoogleマップ内のExplore機能に似ている。どちらも非常に優れている機能だ。
Siriは、スケジュールをカレンダーに追加していれば、フライトやアポイントメントの時間を知らせてくれる。また、メールの内容からもお知らせをしてくれるだろう。私がベータ版を3週間試したところ、まだこの機能は動いていないようだ。しかし、いずれ使えるようになるだろう。
最後に、Siriはあなたがアプリを使用している時、よりスマートな機能を提供してくれる。例えば、ヘッドフォンを使用している時、あなたが最後に行ったことを判断してくれる。オーディオブックを聞き、音楽を流していた、というような具合だ。
プライバシーポリシーにおけるジレンマ
概して、追加された機能は非常に優れたものと感じている。Appleは引き続き、Googleを自身の検索の領域の端へと追いやっている。しかし、予測機能の観点からすれば、新しいSiriの機能は、Google Nowと比べ、非常に限定的と言えるだろう。
例えば、Siriはニュース速報を表示してくれるが、あなたが一般的に興味がある分野に限られている。Cortanaも同様だ。しかし、Google Nowはあなたの検索履歴を参照しており、その結果、あなたが興味のある特定の分野のニュースや関連情報を表示することができる。それに対し、ユーザーが特別に何かをする必要はない。
これは非常に優れた機能と言えるだろう。しかし、プライバシーの問題も常に存在している。あなたはGoogleを信用しなければならないし、あなたについての情報がクラウド内に保管されていることも、信用しなければならない。こうした状況を好まないユーザーにとっては、Siriはより魅力的な手段として映るだろう。しかし、同時に失わなければならないものがある。予測機能の精度は、諦めなければならない。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「With iOS 9, Apple’s Siri & Spotlight Search Get Smarter」を翻訳した内容です。
記事内でも強調されているSiriとGoogle Nowの比較については、非常に同意です。それぞれの哲学というか、考え方に違いが見られますね。検索における影響は、Appleでも採用を始めたディープリンキングが主になるかと思いますが、上記で述べたとおり、別記事で紹介したいと思います。日本では圧倒的な人気を誇るiPhoneですが、SEOの観点からも色々と考えさせられる記事でした。