原題:SEO in a Two Algorithm World
スピーカー:Rand Fishkin(Moz,Founder)
*記事中のリンク先は全て英語となっています。
Googleの進化
ランキング要素の進化
思い出してみよう。かつて、我々の仕事は非常に単純だった。ページを最適化すればよかったのだ。この頃はGoogleのサーチクオリティチームが、ランキングシステムの要素に何を含めるかを決定していた。そして、彼らはコンテンツよりもリンクを重視していた。
2007年まで、リンクスパムはいたるところにあった。2012年でも、Googleはホワイトハットの世界に嘘をついていたと思う。しかし、この3年間で変わった。Googleは古きSEOの慣習を排除したのだ。
Googleは意図的なリンクやコンテンツを対象とする効果的なアルゴリズムを導入した。さらに、ペナルティに対する不安と不確かさを、Webマスターへ与えるようにもなった。
検索意図(インテント)の理解の進化
こうした変化の中、Googleは別の側面でも進化してきた。検索意図(インテント)の理解だ。幾つか例を挙げてみよう。
- 例1:検索意図(インテント)の理解
クエリ:best beef in seattle(シアトルでベストなビーフ)
Google:”beef”という言葉が沢山あるページを探しているわけではないだろうな。
検索結果:グルメサイトのステーキハウスの特集ページなど
- 例2:キーワードではなく、言語の理解
クエリ:movie where they make fun of star trek(スタートレックをおもしろおかしくしている映画)
Google:お、この映画は知ってるぞ!
検索結果:ギャラクシー・クエストの映画のページなど
- 例3:情報の新鮮さの理解
クエリ:best marketing conferences(ベストなマーケティング・カンファレンス)
Google:これについての古いページは必要ないだろうな。
検索結果:これから行われるカンファレンスの案内ページなど
Googleはナビゲーショナル(案内型)クエリをインフォメーショナル(情報収集型)クエリから区別できるようになっている。また、エンティティをトピックやキーワードと結びつけるようにもなっている。その間、ブランドはエンティティとしての形をとるようにもなった。
こうした取り組みにより、Googleは自身が公にしている主張に、より合致したことを行うようになっている。彼らが主張している内容の大部分が、今日の検索マーケティングにおけるベストプラクティスと合致しているのだ。
マシンラーニングの導入
上記のような改良を行う間も、Googleのサーチクオリティチームが変革を起こしていた。マシンラーニングである。初期の段階では、Googleはマシンラーニングをランキングアルゴリズムに使用することを否定していた。
しかし、Googleは2012年にマシンラーニングを広告のCTRの予測に活かす論文を発表した。エンジニアは”SmartASS”と呼ばれるシステムの構築に取り組んでいた。その後、Googleは公の場でマシンラーニングと自然検索についての話しをし始めた。2013年のPubconで、マット・カッツ氏も説明している。
マシンラーニングとランキング
マシンラーニングの導入により、ランキングの根幹が変化することになる。Googleは画像認識の分野でこの技術を活かす方法を発表したが、ランキングアルゴリズムへの応用も可能だろう。
直帰とショートクリック(注1)の値が低い場合、その検索結果は良いと言える。逆に、ロングクリック(注2)が少なく、すぐに別のクエリで検索するユーザーが多いと、悪い検索結果といえる。こうしたトレーニングデータを学習プロセスに投入し、アルゴリズムに活かすのだ。
- 注1:ショートクリックは、検索結果からサイトをクリックし、その後すぐに検索結果に戻ってしまうこと。短ければ短いほど、良いシグナルとは言えなくなる。
- 注2:ロングクリックは検索結果からサイトをクリックし、その後再び検索結果に戻るまでの時間が長いこと。長ければ長いほど、良い。
ディープラーニングはさらに優れている
そう、今我々は、アルゴリズムを構築するアルゴリズムの話しをしている。そしてそれは、人間の介在を必要としない。言い換えると、Googleの社員がランキングファクターをアルゴリズムに入力する必要がなくなるということだ。マシンが自身で決定できるようになるのだ。
ディープラーニングはSEOにとって何を意味するのか?
アルゴリズムの変化
Googleの社員でもランキングの仕組みがわからなくなる。その代わり、クエリの成功度が問題になる。ロングクリックやショートクリック、エンゲージメント、他のクエリの検索、などの要素だ。ユーザーが良い検索結果を示すデータを生み出し、そのデータが検索結果を向上させるのだ。
その結果、我々はタイトル内のキーワード、アンカーテキスト、コンテンツの独自性などに目を向けなくなる。逆に、検索のアウトプットを最適化するようになる。
現在における影響は?
これらは未来の話だろうか?今日における影響はどうか?先日のSMX Advancedで、Googleはクリック数をランキング要素に使用しないと述べた。ノイズが多すぎるからである。
検証テスト
しかし、私はロングクリックとショートクリックの影響を測るテストを行った。1.特定のクエリを検索し、2.1位のサイトに訪問した後すぐに直帰し、3.4位のサイトに長く滞在する、という行為を多くの人に行ってもらった。(ランド氏自身がTwitterで呼びかけた。)
その結果、4位のサイトの順位が上昇し、結果的に1位表示された。しかし、このサイトの順位は後に下降し、同様の現象の再現は難しいことは覚えていて欲しい。自身のサイトへは絶対に行わないでくれ。
未来のSEOの形
ベストなSEOとはGoogleが向かう場所へ最適化することだ。今我々に必要なことは、旧来の要素と新しい要素のバランスをとることである。リンクやアンカーテキストの効果は今でも見られる。その一方で、今後伸びてくる要素を考えるのだ。旧来の要素の重要性が低くなることはない。あたらしい要素が台頭するだけである。
5つの新しい要素
1.今の順位の平均以上のCTRを目指す
タイトルやディスクリプションを最適化しよう。キーワード対策としての意味以上に、多くのクリックを獲得することを目指す。ブランディングも忘れずに。
2.エンゲージメントを高める
ポゴスティッキング(注3)やロングクリックは重要な要素だろう。ランキングと、そのランキングに居続ける期間に影響を与える。下記に、エンゲージメントを高めるための確認項目を記載する。
- 注3:ポゴスティッキングは検索者が複数の検索結果で、いくつものサイトを行ったり来たりすること。
- 検索者が気がついているニーズと気がついていないニーズの両方を満たす
- スピード、スピード、そしてスピード
- 全てのブラウザでベストなユーザー体験を提供する
- ユーザーをサイトの奥深くまで誘導する
- 訪問者を苛つかせたり、諦めさせたりする要素を避ける
New York Timesで、家庭の年収と子どもの大学進学についての記事がある。グラフでその関係性を示しているが、そのグラフには読者が線を引ける仕組みとなっている。良いエンゲージメントを生み出す好例だ。
3.訪問者の知識のギャップを満たす
Googleはそのページが検索者のニーズを満たしているかどうかを判断するシグナルを探っている。その目的はマシンラーニングによって叶う可能性がある。マシンラーニングは、特定のワードやフレーズを含むページが、より最適な検索結果に値すると判断できる可能性があるのだ。
例えば、ブルックリンやロングアイランドについての言及がないページは、ニューヨークについての情報を網羅していない、という判断ができるということだ。検索者はニューヨークについての知識がないため、その知識のギャップを埋める(ブルックリンやロングアイランドの記載もしっかりとある)ページに高いランキングを与えるだろう。
マシンラーニングの観点から自身のコンテンツを確認するために、Alchemy APIやMonkeyLearnを使用してみよう。
4.訪問毎により多くのシェア、リンク、ロイヤリティを獲得する
結局読まない記事を共有することが多々あるため、Googleがソーシャルでのシェア数をそのままランキングに活用することはないと思う。しかし、Googleはロイヤリティと再訪問を導くシェアを確認したいことだろう。そのため、以下の項目が新しいKPIとして有効だと考える。
#1.ユニークな訪問÷シェア数+リンク数
#2.トータルのセッション÷再訪問者数
“優れた”コンテンツなどは必要ない。”10倍優れた”コンテンツが必要とされている。そして、旧来の戦術では、これを達成することはできないのだ。
5.検索者のタスクを満たす
タスクとは、検索者がクエリを投げた時に完了したいと思うものだ。Googleは検索者がタスクを完了できるサイトへ、すぐに連れて行きたいと思っている。クエリを満たすだけでは不十分で、検索者のタスクを満たす内容でなければならない。
2つのアルゴリズムの世界におけるSEO
2015年現在、2つのアルゴリズムが存在している。
- アルゴリズム1:Google
- アルゴリズム2:コンテンツに関わる人々
エンジンのためではなく、人々のためにページを作成しよう。
最後に、検索エンジンと人々に分けて、重要な項目をまとめる。
検索エンジン
- キーワードターゲティング
- 品質と独自性
- クロールフレンドリー
- スニペット最適化
- マルチデバイスでのユーザー体験
人々
- 相対クリック率
- ショートクリックとロングクリック
- ギャップを満たすコンテンツ
- 再訪問率
- タスク完了の是非