ゴミ排出やプラスチック使用を削減する企業がVCの注目を集めている

Zuleyka Strasner(ズレイカ・ストラスナー)氏は、はじめからゴミ排出ゼロを提唱しようとしていたわけではない。

Felicis Ventures(フェリシス・ベンチャーズ)のパートナーオペレーション担当マネージャーだったストラスナー氏は、夫とサンフランシスコへ来る前は、英国で政界でのキャリアを志していた。プラスチック使用による環境破壊の様子をストラスナー氏が最初に目にしたのは、新婚旅行でカリブ海に浮かぶ小さな島であるコーン島を訪れていたときだったという。

その経験が、以前は政界で活躍していた同氏を、ゴミ排出ゼロを目指す活動家に変えた。この転身により、結果的にZero Grocery(ゼロ・グローサリー)を創設することになった。ゼロ・グローサリーはサブスクリプションによる食品配達サービスを提供しており、すべての商品をゴミ排出ゼロのパッケージで販売している。

ストラスナー氏はプラスチック使用を減らすという目標を持ってコーン島から戻った。そして、Fort Negrita(フォート・ネグリタ)の創設者であるAnamarie Shreeves(アナマリー・シュリーブズ)氏、ゴミを出さない生活について語ったTEDxTeenトークで有名になりPackage Free(パッケージ・フリー)を立ち上げたLauren Singer(ローレン・シンガー)氏、消費の削減とゴミを出さない生活の取り組みでソーシャルメディアのセレブリティとなったBea Johnson(ベア・ジョンソン)氏のような女性のソーシャルメディア投稿や活動からアイデアを得た。

他の人のゴミ排出ゼロに向けた足跡をたどることで、結果的にストラスナー氏はカリフォルニア州レッドウッドシティの自宅から、サンフランシスコにある、持続可能なビジネスに力を入れている食品協同組合であるRainbow Grocery(レインボー・グローサリー)に行くことになった。45分かけて車でストアを訪れ、必需品ばかりの買い物なのに1時間かけて瓶やボトルと格闘しなければならなかったという体験から、ストラスナー氏は、特に忙しい親や、専門職の人、単身者の人向けに、ゴミ排出ゼロの買い物を行うもっと良い方法が必要だと考えた。

そこで同氏は、そういうサービスを自分で立ち上げることにした。

創業初期の資金調達について、ストラスナー氏はMediumの投稿で次のように書いている。「1人での起業でしたし、資金もありませんでしたが、アイデアがありました。6か月かけてZero(ゼロ)の初期バージョンのアルファテストを行いました。ご多分にもれず、私も最初は自宅で仕事をしていました。そして、実際の申し込みを受け付け、実際のお客様に対応し、グロースハックもたくさん行いました。本当に大変でしたが、調査レポート、市場データ、生身の人間から自分で集めたデータを見て、ゼロのサービスを拡大するとどうなるのか、根拠に基づく展望を投資家に提示できると思いました」。

コロナ禍のせいでゴミが増えている

使い捨てプラスチックが急増し、食品配達サービスが急成長する中で、ストラスナー氏は食品配達における使い捨てプラスチックの代替品を作ろうとした。それにより同氏の新しい会社は、誰の目にもはっきりと見えてきた明確な問題を解決するという、人がうらやむポジションを得た。

投資銀行Jefferies(ジェフェリーズ)が8月に実施した使い捨てプラスチックに関する調査では、パンデミックが原因でプラスチック使用が急増したことが報告されている。

「Drowning in Plastics(プラスチックにおぼれる)」と題されFortuneでも引用された同調査のレポートでは次のように述べられている。「禁止措置は緩和され、税金は引き下げられている。物理的および化学的なリサイクルの活動は減っている。ウイルスに対する懸念のせいで、使い捨てプラスチックの使用を最小限に抑えようという消費者の意識が低下している可能性がある」。

宅配および消費者向け商品で使用されるプラスチックの多くは、各種業界における製造業のペースが遅くなり、製造工程でのプラスチック使用が減ったことで相殺されている。一方、国際的な経済活動の再開により、消費者が再びプラスチックを使用するようになり、それにともなって産業利用も増える可能性がある。

ストラスナー氏が創業したような会社は、ゴミの排出量が削減されるのであれば割高でも購入したいと考えている消費者に道を示すものだ。そして、同様の取り組みを行っているのは同氏だけではない。

食料品のサプライチェーンと消費者向けパッケージ商品を変える

ローレン・シンガー氏が、プラスチックフリーかつゴミ排出ゼロの商品を提供するために9月に450万ドル(約4億7400万円)を調達したとき、同氏はすでにブルックリンに拠点を置くeコマースの店舗を2年間運営していた(この事業は開始時点から収益性が高くキャッシュフローがプラスであった)。

数年分のゴミを集めたら1本の瓶に収まった、という説明つきの画像を自身のInstagram(インスタグラム)に投稿したところ、それが爆発的に広まり、シンガー氏はその投稿と自身の知名度をビジネスにつなげた。同様の事例は他にもある。ゴミ排出ゼロ運動のもう1人のスターであるベア・ジョンソン氏は、ゴミ排出ゼロに向けた取り組みについて本を書き、それを自身のビジネスにつなげた。

パッケージ・フリーは、竹の歯ブラシやメイソンジャーなど、プラスチックフリーかつゴミ排出ゼロのライフスタイル向け製品、天然素材の歯磨き粉やおしゃぶり犬用の固形シャンプーなど製品を取り扱っている。パッケージ・フリーによると、同社の製品のパッケージには、100%アップサイクル(廃棄物に新たな付加価値を持たせること。創造的再利用とも呼ばれる)されたポストコンシューマー材料(消費者が製品を使用した後に回収された材料)の箱と、紙の包装、紙のテープしか使われていない。

一方で、ニューヨークを拠点とする別のスタートアップであるFresh Bowl(フレッシュ・ボウル)は、瓶詰め惣菜のビジネスでゴミ排出ゼロのパッケージと循環型経済の原則を実現するために、1月に210万ドル(約2億2100万円)を調達した。Zach Lawless(ザック・ローレス)氏、Chloe Vichot(クロエ・ビショ)氏、Paul Christophe(ポール・クリストフ)氏が創業した同社は、5日間保存できる約220種類の調理済み惣菜をニューヨーク周辺の自動販売機で提供している。惣菜は再利用可能なコンテナで提供され、消費者はコンテナを返却するとデポジットの払い戻しを受け取ることができる。

1月に最高経営責任者であるザック・ローレス氏にインタビューした際、同氏は、パンデミック前に同社が資金調達を行っていた時期に、各自動販売機は順調に7万5000ドル(約790万円)の収益を生み出し、コンテナの約85%は再利用のために返却されていた、と語ってくれた。

ローレス氏によると、埋め立てられるゴミの約40%が食料品とその包装材だそうだ。「便利さと持続可能性をどう両立させるかは消費者にとって難しい問題です」と同氏は言う。フレッシュ・ボウルやストラスナー氏のゼロ・グローサリーなどの企業は、それぞれの方法でそのトレードオフをより簡単にしようとしている。

ゴミ排出ゼロの配達サービスを設計する

ストラスナー氏によると、ゼロ・グローサリーでは現在、約850種類の商品を用意しており、年末には商品数が1000を超える予定だ。また、これらはすべて再利用可能またはコンポスト可能なパッケージで配達される。

「当社の目標は、埋め立ての対象となるものは作らず、リサイクルが必要なものを実際に制限することです。使い捨ての製品であるトイレットペーパーのロールは1枚の紙で包みます。すべてコンポスト可能です」とストラスナー氏は言う。

ゼロ・グローサリーの現在の営業範囲はベイエリアに限られているが、ストラスナー氏によると、同社は3月にパンデミックが発生した時点で、その前と比較して3倍の成長を見せており、その後の期間では20倍もの成長を遂げたという。シンガー氏やローレス氏の企業とは違い、ストラスナー氏は小規模な資本構成表を見せて資金調達を打診するために数人の投資家に接触するチャンスはなかった。

「私はこの期間中にも継続的に資金を調達し、現在に至っています。最初は、一般的なラウンド構成で進められると思っていました。自分が普通ではない創業者だと気づいていなかったのかもしれません」とストラスナー氏は語る。黒人でトランスジェンダーの女性として投資家から「イエス」と言われるまでに、250回を超える提案と理不尽なほど数多くの「ノー」を乗り越えなければならなかった。

創業初期の主な協力者は、2019年にゼロのシードラウンドをリードした、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)の創業者Charles Hudson(チャールズ・ハドソン)氏だ。ハドソン氏の投資により、同社は最初のサービスで、好みに合わせてカスタマイズできる会員制の宅配サービスを立ち上げることができた。基本的には、農産物、穀物、コンポスト可能な商品をたくさん積んだカートをストラスナー氏が顧客の自宅まで運び、顧客の瓶に詰めていた。

ゼロ・グローサリーで初期の配達を行う最高経営責任者のズレイカ・ストラスナー氏。画像のクレジット:Zero Grocery

ストラスナー氏は、長期的な継続は不可能だった最初のサービスを通して食品配達業を運営するための知見を得て、2つ目のサービスを作ることができた。

それは現代の牛乳配達に近いもので、100種類を超えるゴミ排出ゼロの商品をゼロ・グローサリーのスタッフが翌日、顧客の自宅まで配達するというものだ。商品は事前に包装容器に詰められ、ゼロ・グローサリーがそれを顧客の自宅に配達し、容器は後日返却してもらう(フレッシュ・ボウルの販売戦略と同じ考え方だ)。

2019年11月頃、ゼロ・グローサリーはこの新サービスをベイエリアで一般向けに開始した。サービスは開始当初から注目を集めた。それによりストラスナー氏は、既存の投資家に加え、Chingona Ventures(チンゴナベンチャーズ)やCleo Capital(クレオキャピタル)などの新しい企業から、さらに50万ドル(約5270万円)を調達できた。

「その時点でプラットフォームには60人のメンバーが登録していて、その月は数千ドル(約数十万円)の収益がありました」とストラスナー氏は語る。

その後、新型コロナウイルス感染症がベイエリアを襲い、売上は急上昇し始めた。ゼロ・グローサリーでは配達に外部企業のサービスを使用しておらず、再利用できるようにコンテナを十分衛生的に維持しているため、サプライチェーンが滞っていた当時の市場ニーズを満たす用意が整っていた。そのため、Incite(インサイト)、Gaingels(ゲインジェルズ)、Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)、MaC Ventures(マック・ベンチャーズ)からさらに7万ドル(約740万円)を調達できた、

ストラスナー氏はMediumの投稿で次のように書いている:

新型コロナウイルス感染症が米国を襲ったとき、ゼロ・グローサリーは最初のロックダウン対象企業に含まれていました。2月下旬には、必要な人員のみが全身に個人防護具を着用して、倉庫で注文の準備と配達の対応を行うようになりました。その直後にベイエリアは完全に自宅待機の状態になり、

食品配達分野の他の企業と同様、当社のサービスに対する需要も急増しました。それに対応するために、当社は予定の半分の期間でチームを拡大し、計画中だったサービスを不十分な状態で開始しました。カスタマーエクスペリエンスも重要です。それを守るために、当社のチームは人手不足の中で必死に闘い、ほとんど眠らずに長時間働き、計画を立てる間もなくとにかく動き続けました。各々の職務範囲は忘れて、カスタマーサービス、注文品の梱包、目玉商品の開発などの仕事に関する責任を全員で分担しました。

ストラスナー氏は、移民・黒人・トランスジェンダーの創業者としての経験から、持続可能性について、環境という観点だけでなく社会的側面からも考えている。同氏が、人材サービスを提供するR3 Score(R3スコア)と協力して前科のある人たちに機会を提供しているのはそのためだ。R3スコアは、前科のある求職者のリスク分析を雇用者向けに提供している。雇用者はこの分析により、求職者が従業員としての能力を備えているかどうかを詳しく確認できる。

ストラスナー氏はFast Company(ファスト・カンパニー)に次のように話した。「このような人たちは、非常に有能で、能力開発の余地があり、働く用意ができていて、積極的に機会を求めている労働者です。当社にとってこれは、単にコロナ禍に対応するその場しのぎの方法ではありません。当社のビジネスに長期的に組み込んでいく採用方法です」。

お金が増えれば問題は減るのか

現在、数千の顧客がゼロ・グローサリーのサービスを利用しており、事業拡大に向け、投資会社1984のリードでさらに300万ドル(約3億1600万円)を調達したところだ。ゼロ・グローサリーの会員料金は25ドル(約2600円)だ。これには、無料配達と空のコンテナの回収が含まれる。会員以外は7.99ドル(約842円)の配達料金を支払う。これはWhole Foods(ホールフーズ)や他のハイエンドの食品サービスと競争できる価格設定だ。

現在、ゼロ・グローサリーは米国で唯一のゴミ排出ゼロのオンライン食料品ストアとして運営されており、数字は急成長している。

ただし、このような成功は競争を生む可能性があり、同じ土俵で競合する企業がこれから次々に出てくることは間違いない。

米国の消費者向けパッケージ商品の大手企業の中には、すでにゴミ排出ゼロで商品を配達するサービスの提供を開始しているところもある。例えば、Procter & Gamble(プロクター・アンド・ギャンブル)や、アイスクリームブランドHäagen-Dazs(ハーゲンダッツ)などのオーナーであるFroneri(フロネリ)などだ。4月に、それらの企業が参加する再利用可能でゴミ排出ゼロの配達サービスLoop(ループ)が全米で開始され、国中の顧客にリサイクル可能かつ再利用可能なパッケージコンテナを提供し始めた。

NotPla(ノットプラ)、Varden(バーデン)、Vericool(ベリクール)などの企業が提供する新しい種類のパッケージ技術が商業化されたことにより、コンポスト可能な梱包素材が、ゴミ排出のジレンマをより広範に解決するソリューションになる可能性がある。

それでも、梱包材のゴミ問題に対するこのようなソリューションは別の問題を生む。例えば、製造に使用されるサプライチェーンの持続可能性、製造工程での二酸化炭素排出量だ。そのような場合、新しい素材を製造する必要性を低下させることが、最も持続可能な方法である可能性が高い。

また、多くの場合、ゼロ・グローサリーのような企業は、取引するベンダーがそのサプライチェーンの二酸化炭素排出量を削減するために努力するよう働きかけている。

ベンダーと一緒に取り組んだ仕事についてストラスナー氏は「仕事の大部分は、ベンダーが当社のテクノロジーを使用してプラスチックフリーのサプライチェーン内で生き残れるようにすることです」と語った。

ストラスナー氏はこう言う。「私がゼロ・グローサリーを起業したのは、ゴミ排出ゼロの食料品の買い物を簡単に行えるようにするため、そして、人々が便利に買い物をしながら地球を守れるよう支援するためです」。これは誰もが大切にできる考え方だ。

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(翻訳:Dragonfly)

気候テクノロジーへのVC投資はVC全体の5倍の速さで成長、PwC最新レポート

気候テクノロジーへのVCおよび企業の投資は、2013年から2019年にかけてVC全体を上回るペースで成長しており、アーリーステージの資本は600億ドル(約6兆2700億円)に上ることが主要な最新レポートで明らかになった。

PwCによる最新の調査「The State of Climate Tech 2020」では、VC市場全体から見ると気候テクノロジー分野へのVC投資はまだ黎明期であるが(2019年の総投資額の約6%)、急速に成長しており、2013年の年間4億1800万ドル(約440億円)から2019年には163億ドル(約1兆7200億円)に増加したことが示されている。同レポートによると、これは同時期のAIへのVC投資の成長率の約3倍で、VCの平均成長率の5倍になるという。

その理由に市場の経済性が関係していることは想像に難くない。関連する技術の証明とその規模の拡大において資本効率が急速に向上しており、カーボンニュートラル、さらにはカーボンネガティブのソリューションでさえ、炭素を排出するソリューションより低コストになっている。

このベンチャー資金600億ドルの半分近くを占める290億ドル(約3兆円)がアメリカとカナダの気候テクノロジー系スタートアップに流れており、中国は200億ドル(約2兆1100億円)で2位となっている。欧州市場は70億ドル(約7400億円)を集めた。米国と中国向けの投資の大半は、モビリティと輸送ソリューションに向けられている。

サンフランシスコベイエリアの気候テクノロジー系スタートアップへの投資額は117億ドル(約1兆2300億円)で、直近のライバルである上海の75億ドル(約7900億円)より56%多い。欧州は再生可能エネルギー発電(主に太陽電池)と蓄電池により多くの投資が行われている。

PwC UKでイノベーション&サステナビリティのグローバルリーダーを務めるCeline Herweijer(セリーヌ・ヘルヴェイェール)氏は声明で、「この分析により、気候危機に対処する革新的な技術やビジネスモデルを支援し拡大させる事業機会と、そこに存在する埋めるべきギャップについて、緊迫感が示されました。気候テクノロジーは2020年代のベンチャー投資における新たなフロンティアです」と述べた。

「この変革を導くのに欠かせない技術やソリューションのいくつかは実証済みで、迅速な商業化が求められています。そこでベンチャーキャピタルが鍵となります。効果を上げる目的でスタートアップに何兆もの投資をする必要はないでしょう。しかし、より複雑な技術や市場においては、研究開発を推進するターゲットを絞った支援が政府からも含めて必要であり、アーリーステージを超えてから資本がますます集まります」と同氏は続ける。

同報告書によると、気候テクノロジーの成長を促す最大の要因は、モビリティと輸送、重工業、温室効果ガス(GHG)の回収と貯留に関係しているという。次いで、食料、農業、土地利用、建築環境、エネルギーと気候、地球上で生成されるデータなどが挙げられている。

TechCrunchの読者であれば、ここ数年起きている電動スクーターと電動自転車の戦いを知っているだろう。実際、このレポートでも、マイクロモビリティスタートアップへの投資は劇的に成長し、過去7年間でCAGR151%、気候テクノロジーへの全投資額の63%に相当する374億ドル(約4兆3950億円)に達していることが報告されている。

Exponential Viewの創設者であり、レポートの共同執筆者でもあるPwC UKのシニアアドバイザーAzeem Azhar(アジーム・アジャール)氏は次のように述べている。「気候テクノロジー市場は成熟しつつあります。より多くの起業家がスタートアップを立ち上げ、より多くの投資家がそれを支援し、高い拡大可能性を有するレイターステージの事業に向けた大型の資金調達ラウンドの数が増加していることが、社会的な動きとして顕著になっています。しかし、PwCの分析で、同市場のエコシステムに関してはまだ萌芽期にあり、創業者が利用できる資金の深さとその性質に重要なギャップが存在し、事業を拡大していく上で慎重に対処すべき構造的障害を抱えていることが認められました」

投資はどこから来ているだろうか。幅広い資金源から集まっている。伝統的なベンチャーキャピタルや持続可能性に特化したベンチャーファンド、エネルギー大手を含む企業投資家、世界的な消費財企業や大手テクノロジー企業、政府が支援する投資会社、プライベートエクイティプレーヤーなど多岐にわたる。

同報告書によると、このセクターではコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が増大しており、特にエネルギー、重工業、運輸などの参入障壁が高い既成産業への進出を目的とした高資本コストのスタートアップが目立っている。モビリティと輸送に関しては、気候テクノロジー事業の30%にCVCファームが含まれ、エネルギーに関しては、導入資金の32%がCVCからとなっている。全体では、気候テクノロジー事業のほぼ4分の1(24%)に企業投資家が含まれている。

「企業の関与は気候テクノロジーの継続的な成功の鍵となるでしょう。新ソリューションへの需要を駆り立てるネットゼロのコミットメントと、イノベーションの商業化への投資の両方の観点からそのことが言えます。スタートアップが新たなイノベーションを迅速に展開し、市場拡大を図るには、単に資金面の手段だけでなく、商業的なノウハウや業界の知識も必要です」とヘルヴェイェール氏は説明する。

気候テクノロジーへの新規投資において、アメリカと中国以外で上位10都市に入っているのは、ベルリン、ロンドン、ラベージュ(フランス)、インドのバンガロールで、主にエネルギー、農業、食料、土地利用分野で13億ドル(約1370億円)の資金を集めている。

おそらくTechCrunch読者に最も関係の深いセクションは44ページ以降だろう。そこでは、気候テクノロジー市場が、急成長を続けるテクノロジー系スタートアップの軌跡と似た様相を呈し始めていることが記されている。技術的リスク、製品リスク、市場リスクといった既存の障壁に対処しており、Sequoia、GV、Kosler、Horizons、YC、USVなどの有名なVCが揃って関与しているという。

また、300社ものグローバル企業が、2050年までにネットゼロエミッションを達成することをコミットしている。「気候テクノロジーは、地球の温室効果ガス排出量の半減を10年ほどで実現し、地球温暖化を1.5°Cに抑えることを見据えています。その可能性を確実なものとし、より迅速かつ大胆なイノベーションを構築し加速するために、資本、人材、官民の支援を速やかに投入する必要があります」とヘルヴェイェール氏は付け加えた。

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(翻訳:Dragonfly)