アプリ内チャット提供のSendBirdがアップデート、モデレーションや全文検索など新機能追加

アプリにチャット機能を提供しているSendBirdがウェブ版、モバイル版の双方でメジャーアップデートを発表した。これには新しいAPIやサービスの新機能が多数含まれる。ユーザーがニーズに合わせてカスタム管理ツールを構築するのが簡単になった。またチャットに対するリアクションや配送確認などを追加する機能も改善された。

SendBirdは韓国のソウルで設立されたスタートアップで、現在世界で9000万人のアクティブユーザーにサービスを提供し、月間約15億のメッセージを処理しているという。SendBird CEOであるJohn Kim(ジョン・キム)氏は、インタビューに対して「我々のサービスはオンデマンドアプリに強く、この分野のユーザーにはGojek、iFood、Delivery Heroなどがある。またCarousell、Paytm、Traveoka、SSGなどのマーケットプレイス、Reddit、Dream 11、(US)Yahoo Fantasy Sportsなどのコミュニティサイト上のビジネスにも適している」と述べた。(情報開示:US Yahooの親会社はTechCrunchと同じくVerizon Media Group)。

またキム氏は「最近は、ヘルスケア分野での医療サービスの提供者と対象者間のチャットや福利厚生ビジネスでのチャットで大きく成長している。ユーザーはデジタルファーストのサービスに多く、Accolde、Livongo、Grand Roundsなどが利用している。 ゲーム、デート、ライブストリーミングの分野にも顧客が多い」と述べた。

今日のアップデートでは、特にサービスのモデレート機能の強化に力を入れているという。画像のモデレートでは不適切な画像を削除できる。また特定の単語を指定してそれらを含むメッセージが出ないようカスタマイズできるRegExフィルターも提供される。新しいGDPR(一般データ保護規則)に準拠したAPIやモデレーションAPIが提供されるため、ユーザーは自社でカスタマイズした機能を組み込んでアプリのオプションを拡張できる。

また何らかの理由でサービスが中断されたときにメッセージをローカルにキャッシュするオフライン同期機能、メッセージの機械翻訳を強化するオンデマンド翻訳機能、プッシュ通知を翻訳する機能も追加された。

機械翻訳への注力には理由がある。SendBirdのユーザーベースはグローバルであり、以前からアジア太平洋地域では強みがあった。しかしキム氏によれば(機械翻訳機能の強化は)ユーザーベースがアジア太平洋地域に加えて、アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカにも急速に拡大していることに対処するものだという。

もっともユーザーにとっての最も大きな変化は、ユーザーがメッセージにリアクションを追加できるようになったことだろう。これによりSendBirdのサービスはスマートフォンを利用する他のメッセージアプリの機能に追いついた。また配送確認と全文検索機能も追加されている。

インタビューで「なぜアプリ内チャット市場が離陸しつつあると考えたのか?」と質問すると、キム氏は次のように答えた。

「結局、電話やファックスもチャット、メッセージのテクノロジーだった。インターネットで最初に人気を得た使い方もチャットルーム、IRC、ICQなどだった。デスクトップ時代にチャットはモデムへのアクセスが必要だったため、利用は固定回線がある場所に制限されていた。しかしモバイル時代になり3G/4GネットワークとWi-Fiへのアクセスが手軽になると、チャットが民主的なメッセージングサービスとしてグローバルに普及した。スマートフォンが(中国やインドなど)人口の多い国に普及し、こうした地域ではデスクトップのテクノロジーを飛び越してモバイルチャットの時代となった」

キム氏は、チャットの分野はネットワーク効果で市場がごく少数(WhatsApp、WeChat、Facebook Messengerなど)のサービスに集中し、すべてがよく似たものになってきたと考えている。つまりユーザーは、メジャープレイヤーのチャットと同様の機能を備えているサービスでなければ日常利用しようとしない。

「モバイルアプリの提供者はこうしたトレンドに追いつき、チャットという新しい標準的機能をアプリに追加する必要がある。しかしほとんどのアプリ提供者にはこれを実現して競争に役立てる能力やノウハウがない。そこでチャットAPIにニーズが強く集まることになる」とキム氏は述べた。

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滑川海彦@Facebook