アップルが「ブランド価値」ランキング8年連続で第1位、テクノロジーブランドが躍進

アップルが「ブランド価値」ランキング8年連続で第1位、テクノロジーブランドが躍進

企業のブランディングを専門とするインターブランドジャパンは10月20日、21回目となるグローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」(BGB 2020)を発表した。同社は、1974年に英国・ロンドンで設立されたブランディング専門会社インターブランドの日本法人。BGB 2020に関し時代の不安定性・不確実性がコロナ禍で加速され、ランキングにも大きな影響を与えているとした。

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なお、日本企業のブランドランキング「Best Japan Brands 2020」については、2020年2月に発表済み。「ブランディング」の取り組みを評価するアワード「Japan Branding Awards 2020」を2020年12月に開催し、受賞ブランドを発表予定としている。

 

Appleが8年連続で第1位、テクノロジーとプラットフォームブランドが成長

BGB 2020では、Appleが8年連続で第1位(ブランド価値 3230億ドル)。第2位がAmazon(2007億ドル)、第3位がMicrosoft(1660億ドル)。2013年から第2位が続けていたGoogle(1654億ドル)は、BGB 2020では第4位となった。また、Samsungが第5位(623億ドル)となり初めてトップ5にランクインした。

また、ソーシャルメディアとコミュニケーションのブランドが躍進。19位Instagram(261億ドル)、30位YouTube(173億ドル)、100位Zoom(45億ドル)となった。これら3つは初のBest Global Brandsランクインとなっているほか、Tesla(128億ドル)が40位に返り咲いた。

テクノロジーブランドの躍進により100ブランドの合計金額価値は2兆3365億ドルとなり、2019年に比べ9%成長。前年比で成長したブランドの成長率は平均14%であるのに対し、テクノロジーとプラットフォームブランドは20%成長しており、100ブランドの合計価値の48%を占めているとした(2010年は17%)。さらに、トップ3のテクノロジーブランドの合計価値は、100ブランドの合計価値の30%を占める結果となっている(2010年は16%)。

Amazonがブランド価値60%向上で成長率1位、2桁成長ブランドの6割がサブスクモデルを採用

最も成長率の高い5ブランド(Top5 Growing Brands)は、Amazon(前年比+60%)、Microsoft(同+53%)、Spotify(同+52%)、Netflix(同+41%)、Adobe(同+41%)となった。コロナ禍の影響でオンラインサービスブランドが発展しており、2桁成長したブランドの6割がサブスクリプションモデルを採用しているという。

また、60位PayPal(前年比+38%)、57位Mastercard(同+17%)、45位Visa(同+15%)も、それぞれブランド価値を高めている。これらは、感染拡大の影響から主要な支払方法として電子決済への急速な移行が進んだことや、ロックダウンの中で地元ビジネスをサポートするプログラムを迅速に展開したことなどにより、不確実な時代に家計や資本へのアクセスを提供する信頼できるブランドとして飛躍を遂げた。

コロナ禍でラグジュアリー業界がブランド価値低減、物流が生活に欠かせない存在となり向上

業種別に見ると、コロナ禍の影響により多くの店舗の閉店を余儀なくされた35位Zaraと37位H&Mは、それぞれブランド価値が-13%、-14%と低下し、昨年より順位を下げた。2年連続で成長率がトップであったラグジュアリー業界は、そのブランドのほとんどがブランド価値を下げた。

その一方で、コロナ禍で成長した業種のひとつは物流という。平均5%の成長が見られ、24位UPS、75位FedEx、81位DHLはすべてブランド価値を上げました。物流ブランドは、世界各地でロックダウンされた人々の生活に欠かせない存在となっている。

BGB 2020における、日本ブランドに関する分析

Toyota(トヨタ自動車。516億ドル)は2019年に続き第7位で、17年連続で自動車ブランドの最高位となった。Toyotaは、CASEの時代に合わせたビジネスモデルの転換を図り、「モビリティカンパニー」へのフルモデルチェンジを宣言。CASEは、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取ったもの。

またCES 2020では、「コネクティッド・シティ」プロジェクトを発表。業界を超えたアライアンスにより、「人」が中心となる未来の実現に向けた活動を着実に進めている。2019年の第3四半期で売上は前年度を上回り、Toyotaは日本の企業として初めて30兆円企業となった。

20位Honda(本田技研工業。217億ドル)は、主軸である二輪、四輪事業のビジネスで苦戦。その一方で、ラリーやHonda Jetなどでは成功を収め、本田技研工業の直下にR&D部門を移行するなど、事業一体のR&Dに注力。Hondaはまた2025年までにヨーロッパで販売されるすべての四輪を電気自動車に置き換えることを宣言した。日本で展開された企業TV広告「Go, VantagePoint.」は、YouTubeで視聴回数(1500万回)を獲得し、消費者との高いエンゲージメントを築いている。

51位Sony(ソニー。120億ドル)は、エレクトロニクス企業から創造的なエンターテインメントブランドへのシフトを加速。エレクトロニクス事業やゲーム&ネットワークサービス事業に加え、イメージング&センシングソリューション事業が成長をドライブしている。Sonyは、コロナ禍において、最前線の医療に従事する人々、遠隔で学ぶ子供や教師、エンターテインメント業界全体に携わる人々を含む、Covid-19の影響を受けた世界中の人々を支援する1億ドルの救援基金を創設するなど社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

59位Nissan(日産自動車。106億ドル)は、2019年度通期のグローバル全体需要は、中国市場の減速や、新型コロナウイルス感染拡大の影響により第4四半期に各市場が低迷したことを受け、前年比6.9%減の857万台となった。その状況下において、Nissanは、「事業規模の最適化」「選択と集中」の推進による事業基盤改革と、市場をリードしてきた電気自動車と運転支援技術などをベースに、新しいモビリティへのチャレンジを続けている。

71位Canon(キヤノン。81億ドル)は、エントリーユーザー向けのカメラやレーザープリンターの市場縮小の加速が反映され、また景気低迷により売上・純利益ともに大きな影響を受けている。コロナ禍により、オフィス向け複合機とレーザープリンター、カメラ市場はこれまでの縮小傾向がさらに強まっている。インクジェットプリンターは、一部の新興国では減速が見られる中、先進国と中国では在宅勤務や在宅学習向けに需要が高まりつつありる。医療機器は、Covid-19の影響の長期化による移動制限などにより、販売活動が影響を受ける見通し。

76位Nintendo(任天堂。73億ドル)は、コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、ゲームサービスへの需要が爆発的に高まったことで、ブランド価値向上(前年比+31%)。ゲームとフィットネスを合わせた「リングフィット アドベンチャー」は、都市封鎖の間一時在庫がなくなり高値がつくほど最も需要が高まったゲームのひとつ。コロナ禍の初期、「あつまれ どうぶつの森」は、過酷な状況から逃避できるゲームとして1100万人以上がプレイ。世界で一番多く楽しまれたゲームとなった。

85位Panasonic(パナソニック。58億ドル)は、コロナの影響を受け減収・減益。新中期経営計画において、「くらしアップデート」を実現する企業という新たな方向性を打ち出し、「基幹事業」「再挑戦事業」「共創事業」を中心とする事業ポートフォリオ改革を行い、売上成長と収益性改善を目指している。

B2C事業では、サウンドシステム、ノイズキャンセリングイヤホン、一眼レフカメラなどの製品を開発し、顧客の新たなニーズに対応。一方、B2B事業ではToyotaやTeslaとの自動車用電池のコラボレーション、コールドチェーン、プロジェクションマッピング、ファクトリーオートメーションなど社会的に期待される技術を生み出している。

Best Global Brands

同ランキングは、グローバルに事業展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランキング化するもので、レポートの発表は2000年から今年で21回目。以下基準を満たす企業・商品を抽出・評価しており、上位100ブランドを公表している。

評価対象基準

  • 主要基盤地域(Home Region)以外での売上高比率が30%以上であること
  • 北米・欧州・アジア地域で相応のプレゼンスがあり、新興国も幅広くカバーしていること
  • ブランドの財務的評価実施に必要な各種財務情報が公表されていること
  • 資本コストを織り込んだ経済的利益(Economic Profit)が長期的にポジティブであること
  • 主要基盤地域のみならず、世界の主要な国々で一般に広く認知されていること
  • ブランドが顧客の購買行動に影響を与えていること

同社のブランド価値評価手法は、企業が生み出す利益の将来予測を行う「財務分析」、利益のうちブランドの貢献分を抽出する「ブランドの役割分析」、ブランドによる利益の将来の確実性を評価する「ブランド強度分析」という観点からみたブランド価値の評価となっている。証券アナリストによる事業価値の分析・評価と同様に、「将来どれくらい収益を上げると予想されるか」という視点に基づいて、ブランドの価値を分析・評価しているという。この手法は、ブランドの金銭的価値測定のための世界標準として、国際標準化機構(ISO)からISO10668の認定を受けているそうだ。

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タグ: インターブランドジャパン

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企業のブランディングを専門とするインターブランドジャパンは2月14日、「Best Japan Brands 2019」として日本企業のブランドランキングを発表した。インターブランドジャパンは、1974年に英国・ロンドンで設立されたブランディング専門会社の日本法人。企業のブランド価値を金銭的価値に置き換える独自の測定方法でランキングを作成している。この測定方法は、ISO(国際標準化機構)に認定されているものだ。

世界ランキングに日本企業は8社がランクイン

2018年に発表された「Best Global Brands 2018 Rankings」では1位から順に、Apple、Google、Amazon、Microsoft、Coca Colaとなっている。FaceBookは9位だがGAFA勢の勢いとMicrosoftの底堅さを感じるランキングだった。

インターブランドジャパンが発表した「Best Japan Brands 2019」は、海外売上比率が30%以上の「Japan’s Best Global Brands Top 40」、30%未満の「Japan’s Best Domestic Brands Top 40」の2つに分かれる。なお、企業名=ブランド名ではないため、企業の海外売上比率が30%満たない場合でも、ブランドとして海外売上比率が30%以上の場合はグローバル 、その逆の場合はドメスティックとなる。対象となるのは、財務状況が一般公開されている企業。調査期間は、2017年11月~2018年11月の1年間となっており、各社の第3四半期(2018年10~12月期)の業績は反映されていない。

インターブランドジャパンの代表取締役兼CEOの並木将仁氏

Japan’s Best Global Brands Top 40は1位から、TOYOTA(トヨタ自動車)、HONDA(本田技研工業)、NISSAN(日産自動車)、Canon(キヤノン)、SONY(ソニー)、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、Panasonic(パナソニック)、UNIQLO(ユニクロ)、Nintendo(任天堂)、SUBARUと続く。自動車メーカーがトップ3を独占したかたちだ。TOYOTAは11年連続でブランド1位となったほか、前年比プラス6%のブランド価値向上となった。3位のNISSANは、2018年11月に発生した金融商品取引法違反による元CEOのカルロス・ゴーン氏の逮捕が、来年以降どう影響してくるのか注目だ。

Japan’s Best Global Brands Top 40

上位40位でブランド価値成長が前年比で著しかったのは、15位のShiseido(資生堂)のプラス30%、Suzuki(スズキ自動車)のプラス23%、25位のYamaha(ヤマハ)のプラス20%、9位のNintendo(任天堂)のプラス19%、8位のUNIQLO(ユニクロ)のプラス19%となる。Nintendoは2017年度の連結海外売上高比率が75.3%で、企業価値は6億9600万ドルと試算。Nintendo Switchの引き続いての超大ヒットが貢献したと考えられる。

Japan’s Best Domestic Brands Top 40(10位まで)

Japan’s Best Domestic Brands Top 40では、NTT DOCOMO(NTTドコモ)、SoftBank(ソフトバンク)、au(KDDI)と大手キャリアがトップ3を占めたた。4位以降は、Recruit(リクルート)、Rakuten(楽天)、Suntory(サントリー)、Asahi(アサヒビール)、Kirin(麒麟麦酒)、nissin(日清食品)、Japan Airlines(日本航空)と続く。

ドメスティックの上位40位でブランド価値成長が前年比で著しかったのは、25位のZOZOTOWN(ZOZO)のプラス38%、KOSÉ (コーセー)のプラス27%、7位のAsahiのプラス25%、29位のMatsumotokiyoshi(マツモトキヨシ)のプラス21%、33位のNitori(ニトリ)のプラス21%。前述のように直近の10~12月期の業績は考慮されていないため、ミキハウスやオンワードホールディングス、ユナイテッドアローズなどが次々と撤退したZOZOTOWNが来年どうなるのか、前澤社長の手腕に注目が集まるところだ。

ドメスティックブランドでは、40位に滑り込みでMercari(メルカリ)が初ランクインしたのも注目。先日の2018年7~12月期の連結決算の発表では、純損益44億7500万円の赤字を発表した同社だが、国内に限って言えば営業利益44億円と力強い。上場から1年に満たない企業がランクインするのは珍しい出来事だ。

メルカリの小泉文明取締役社長兼COO

発表会の後半では、そのメルカリの小泉文明取締役社長兼COOが登壇。まず小泉氏は、メリカリは2019年2月1日で6周年を迎えたことに触れ、米国を足がかりに世界戦略を継続することを明言。「今後は米国以外の地域への展開、国を超えたマーケットプレイスを構築したい」と語った。現状、米国で苦戦を強いられているが、流通総額8700万ドルと前年比(YoY)では70%近く伸びており、先日の決算発表会でも流通総額が1億ドルに近づけば黒字化も見えてくる」と発言していた。なお、米国ではサービスのUI、ブランドロゴも変えるなど米国向けにローカライズして戦っている。小泉氏は、「メリカリを世界的ブランドに育てて、将来的にはベストグローバルランキングへのランクインを目指したい」と力強く語った。

国内については、1200万人超のアクティブユーザーがおり、40~50代やシニアの利用者も伸びている。そして、上場したマザーズ市場ではトップ3に安定して入っているとのこと。また、日本の隠れ資産(1年以上使われていないもの)は合計37兆円、国民1人あたり28万円という試算があり、メルカリは国内でまだ3倍ほどのポテンシャルがあるとコメント。最近では、新しい商品を買うときにメルカリを見て価格感を掴む人が増えているとのことで、自動車やブランド品などのように中古品を買うことによるネガティブな印象が薄まっていることを紹介した。

通常は上場セレモニーの際に5回打つ鐘を、メルカリ小泉氏は3回、インターブランドジャパン並木氏は2回鳴らした。

最後に2月13日に始まったばかりの子会社のメルペイのサービスについて触れ、「当初はiOSのみの対応となるが、メルカリ内の売上金を、銀行口座への振り込みだけでなくそのまま街中で電子マネーとして使える」と利便性を強調。PayPayやLINE PAY、Origami Payなど先行するモバイル決済サービスはキャンペーンが合戦で殴り合いの攻防を続けているが、ここにメルカリが参入するのか、独自路線を進むのかも気になるところだ。