「いま、割とカウンセリング市場が熱い。注目され始めた感じ」──そう語るのは、女性専用の電話カウンセリングサービス「ボイスマルシェ」を運営するバーニャカウダのCOO 菅野彩子氏だ。同社はSMBCベンチャーキャピタル・みずほキャピタル・三生キャピタルを割当先とする第3者割当増資を実施。調達額は約6000万円で内訳は非公開。調達資金を元手にさらなるサービス拡大を図る。
ボイスマルシェは、女性ユーザー専用の電話カウンセリングサービスだ。ユーザーは、心理カウンセラーやキャリアコンサルタント、コーチなどの専門家による個別カウンセリングをうけることができる。25分で3000円、55分で1万2000円、110分で2万4000円の3プランを用意し、通話料は無料。サービス開始は2012年3月。
相談できる内容は、20代の就活から終活まで多岐にわたる。例えば友人との喧嘩・仕事のキャリア形成・婚活・結婚・子供に関する悩みなど。カウンセラーは約500人以上が登録しており、心理カウンセラーやキャリアコンサルタントなど公的・民間の有資格者がほとんどを占めている。バーニャカウダが面談と実技指導を行い、カウンセラーの一定の品質を確保しているという。
また法人向けには「ボイスマルシェforビジネス」も展開している。これは従業員向けの福利厚生サービスで、企業が窓口となって契約し、従業員は1回1時間の電話カウンセリングが受け放題だ。2015年9月より提供を開始し、すでにルミネなどが導入。こちらは女性だけでなく男性の従業員も利用できる。2015年12月から一定規模以上の事業所で従業員のストレスチェックが義務化されるなど、従業員のメンタルヘルスに関心が高まっており、法人向けサービスの企業からの引き合いも増えているという。
イメージしたのは食べログ
バーニャカウダCEOの古川亮氏は、ボイスマルシェについて「イメージしたのは食べログ」と語る。利用者は、ボイスマルシェのWEBページからカウンセラーの評価やレビューをチェックし、気に入れば日時を予約、クレジットカードで決済できる。評価から予約、決済までがウェブサイト上で完結する点が売りで「カウンセラーのプラットフォームでもある」と古川氏は説明する。
競合サービスとしては、エキサイトが運営する”お悩み相談室”などがある。それらと比較した強みについて古川氏は「カウンセラーの数」を挙げる。同様のオンラインカウンセリングサービスでは、カウンセラーは多くても数十人が一般的であるといい、500人以上という在籍数は「日本最大級」と古川氏は胸を張る。カウンセラーが多いために「当日上司に怒られてしんどい時に、10分前に予約してカウンセリングをうけることもできる」と菅野氏は言う。またコンシューマ向けと法人向けの両輪で展開している点も国内では珍しいという。
相談できる相手がいなかった
バーニャカウダは2010年1月に設立。創業メンバーの古川亮CEOと菅野彩子COOはともに前職がリクルートで、2人はリクルート時代の社内研修で知り合った。2人とも起業志向ということで意気投合。当初は「占い」を軸としたサービスを構想していたが、途中で「カウンセリング」に変えた。その理由について菅野氏は次のように語る。
「当時結婚を前提に交際していた人がいたが、転職を機に破談。追い詰められた時に相談できる相手がいなかった。占いだといまいちだが、専門家に相談できるプラットフォームがあればいいなと思った」
女性向けにサービスを絞る理由については、女性管理職の割合を増やすという日本政府の政策的な後押し。そして女性の社会進出が進む中で、「仕事でのキャリア形成」「家庭と仕事の両立」など、親世代が経験しなかった新しい悩みが産まれ、女性の悩みが急速に多様化している点を挙げる。
「予約と購入を抑える」のがリクルート流
前職のリクルートでは、古川氏はSUUMOやHR事業でマッチングサービスを、菅野氏はインターネットマーケティングやウェブメディアの立ち上げや運営に携わった。ボイスマルシェの立ち上げにはその経験も役立ったという。菅野氏は「既存の広告メディアでは勝てないと思った。リクルートでは、ホットペッパーのように広告よりアクション、つまり予約と購入を抑える。ボイスマルシェもこの考えで立ち上げようと思った」とも語る。
創業期には古川氏と菅野氏の自己資金でサービスを運営。2014年9月にSMBCベンチャーキャピタルから第3者割当増資により3000億円を調達した。そして2015年9月に今回の6000万円の調達に至った。資金調達の際には、500人以上のカウンセラーと密接なコミュニティを構築している点、さらに、法人向けサービスのボイスマルシェforビジネスがルミネ内で好評だという点が評価された。
バーニャカウダは今回調達した資金をもとに、サービス拡大に向け人員を拡充。現在は社員3人とパートで運営しているが、これを10名に増員。また直近ではB2CよりもB2B向けサービスに注力する方針で、そのための営業やマーケティングの人材も揃えたいとしている。