カシオ計算機は11月29日、JAXAと共同で月面基地建設を想定した高精度位置測位システム「picalico」(ピカリコ)による測位実験を実施すると発表した。神奈川県相模原市のサーティーフォー相模原球場で、グラウンドを月のクレーターに見立てて行われる。
これは、JAXAの宇宙探査イノベーションハブによる「第6回研究提案募集」で課題解決型の共同研究テーマとして採択されたもの。JAXAは、2030年代以降に月面にインフラを構築し、持続的な探査を目指す構想を掲げている。ただ当面は、月にはGPSなどの衛星測位システム(GNSS)がないため、月面探査車などの位置の正確な把握方法が求められている。これに、カシオ計算機は独自技術である「picalico」を提案した。
picalicoは、LEDの発光色を赤・緑・青の3色に変化させて構成される信号をカメラで捉え、その信号に紐付けられた座標から現在位置を算出するというもの。
信号は24回または12回切り替える色変化のパターンで構成され、そのパターンがひとつのID情報となる。信号パターンの組み合わせは100万通り(106万2882通り)以上あり、カメラ1台で100個の信号を同時に受信できる。カシオはこのシステムの提供を2019年3月より開始し、現在は工場や倉庫の自動搬送車やフォークリフトの作業動線の分析や所在管理などに利用されている。
実験は、11月29日から12月3日にかけて行われる。野球場のグラウンドを月面のクレーターに見立て、スタンドに複数のLED灯を配置。産業用カメラを搭載したトラクターを月面探査車に見立てて、フィールドを走らせる。
また実験自体は一般には非公開だが、その様子はJAXA宇宙探査イノベーションハブのTwitterアカウントに投稿される。