デベロッパーのウェブアプリ開発をスピードアップするクロアチアのWaspが約1.7億円調達

アプリケーションの開発における、コーディングの複雑さから開発者を解放しようと努力しているスタートアップは少なくない。先にはRunXのシードラウンドを取り上げたが、そこは開発者がバックエンドのクラウドリソースを迅速にコーディングできるようにしている。米国時間10月4日、Y Combinatorの2021冬季を卒業したWaspが150万ドル(約1億7000万円)のシードラウンドを発表して、アプリケーションのビジネスロジックの部分のコーディングを迅速化しようとしている。

このラウンドはLunar VenturesとHV Capitalが共同でリードし、468 CapitalとTokyo Black、Acequia Capital、Abstraction Capital、そして多くの個人エンジェルが参加した。

WaspのCEOであるMatija Sosic(マチヤ・ソシッチ)氏によると、双子の兄弟Martin(マーティン)氏と一緒に2019年にクロアチアでスタートし、複数のサービスを縫い合わせて1つのフルスタックウェブアプリケーション作る開発者の仕事を、もっと簡単にしようとした。容易化する方法は、開発者がすでに使っているプログラミング言語がReactであれNode.jsあれ、何であっても、その上に構成(コンフィギュレーション)の層を設けることだ。

ソシッチ氏によると「非常に高いレベルで、Waspは少ないコードと内蔵のベストプラクティスでフルスタックのアプリケーションを作るためのシンプルな言語です。私たちは開発者に個別の言語にとらわれない統一的な体験を提供しますが、それは私たちの考えでは彼らに最大の価値を与えるエスクペリエンスです。なぜなら、開発者がいろいろなソリューションを自分で組み立ててアプリケーションを作る必要がありません」。

RunXと同様、Waspもオープンソースのツールで、開発者は無料で使える。そしてソシッチ氏によると、これまでにWaspを使って約300のアプリケーションが開発された。当面はオープンソースに徹して正しいツールを作っていくが、その後、最終目標として収益化の方法を考えたいという。

ソシッチ氏と彼の弟は2年前に、自費で会社を作った。Waspの初期のバージョンをProduct Huntでリリースしたのは2021年初めだ。彼らはその後、最初の関心事だったことを始めた。それはY Combinatorに入学し、シードラウンドを調達して、プロダクトの開発を続けることだ。

現在、プロダクトはアルファで、GitHubでダウンロードできる。今回得た資金は、機能を増やしてベータへ移行し、最終的にはバージョン1.0をリリースすることにつぎ込みたい、という。

画像クレジット:Wasp

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

3Dビジョン対応の自律型倉庫用ロボットを開発するクロアチアのGideon Brothers

クロアチアのザグレブを拠点とするロボット・AI関連のスタートアップであるGideon Brothers(ギデオンブラザーズ、GB)は、Koch Industries Inc.のベンチャー・成長部門であるKoch Disruptive Technologies(KDT)がリードするシリーズAラウンドで3100万ドル(約34億円)を調達した。DB Schenker、Prologis Ventures、Rite-Hiteもラウンドに参加した。

今回のラウンドでは、Gideon Brothersの既存の投資家も複数参加した。Taavet Hinrikus氏(TransferWiseの共同創業者)、Pentland Ventures、Peaksjah、HCVC(Hardware Club)、Ivan Topčić(イワン・トプチッチ)氏、Nenad Bakić(ネナド・バキッチ)氏、Luca Ascani(ルカ・アスカニ)氏などだ。

今回の投資は、GBのAIと3Dビジョンを活用した「自律移動ロボット」(AMR)の開発と商品化を加速するために使用される。AMRは商品の運搬、集荷、受け入れなどの単純作業を行い、人間はより価値のある作業に専念できるようになる。

また、ドイツのミュンヘンとマサチューセッツ州ボストンにそれぞれオフィスを開設し、EUと米国で事業を拡大する。

Gideon Brothersの創業者たち(画像クレジット:Gideon Brothers)

Gideon Brothersは物流、倉庫、製造、小売業向けの水平・垂直方向のハンドリングプロセスに特化したロボットと、それに付随するソフトウェアプラットフォームを手がけている。理由は明らかだが、パンデミックの際には、サプライチェーンのロボット化の必要性が爆発的に高まった。

GBのCEOであるMatija Kopić(マティーヤ・コピック)氏は次のように述べた。「パンデミックにより、スマートオートメーションの導入が大幅に加速していますが、当社は前例のない市場の需要に対応する準備ができています。そのための最善の方法は、当社独自のソリューションを、世の中で最も大きく、最も要求の厳しい顧客と結びつけることです。当社の戦略的パートナーが抱える真の課題は、当社のロボットがすでに解決しつつあるものです。彼らは我々とともに世界で最も革新的な組織にロボットによる変革をもたらすすばらしい機会を捉えようとしています」。

さらにコピック氏は付け加えた。「このような先進的な業界のリーダーとのパートナーシップは当社のグローバルな活動の拡大に役立ちますが、我々は常にクロアチアのルーツに忠実であり続けます。それは私たちのスーパーパワーなのです。クロアチアのスタートアップシーンは急激に拡大しており、我々はこの国がロボットとAIの大国になるためにさらなる機会を引き出したいと考えています」。

Koch Disruptive Technologies(KDT)のディレクターであるAnnant Patel(アナント・パテル)氏は次のように述べた。「全世界で300以上のKochのオペレーションと生産ユニットを担うKDTは、最先端のAIと3D AMR技術により企業が倉庫や製造プロセスにアプローチする方法を著しく変革するGideon Brothersの技術の独自性と可能性を理解しています」。

DB Schenkerのコントラクト・ロジスティクス担当取締役のXavier Garijo(サビエ・ガリコ)氏は「Gideon Brothersとのパートナーシップにより、クラス最高のロボットやインテリジェント・マテリアル・ハンドリング・ソリューションへのアクセスが確保され、最も効率的な方法で顧客にサービスを提供することができます」と述べた。

GBの競争相手はSeegrid、Teradyne(MiR)、Vecna Robotics、Fetch Robotics、AutoGuide Mobile Robots、Geek+、Otto Motorsなどとなる。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Gideon Brothersクロアチア倉庫資金調達

画像クレジット:Gideon Brothers robots

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

欧州の主要テックイベント「Shift」と「TOA」がアフターコロナの新拠点・新モデルへとシフト

パンデミックの影響で、かつては業界の活力源であったテックイベントにも大きな変化が訪れている。これまで幾多のスタートアップがイベントで資金調達ピッチを行い、幾多のハッカソンでチームが結成され、より大きな目標に向かって進んでいった。少なくともパンデミックが完全に収束するまでそのような時代は終わったということは悲しい事実だが、これには時間がかかりそうだ。欧州の2つの重要なイベントは、ブランドを新たな境地へと導くために、変化を余儀なくされた。

ヨーロッパで大ブレイクしたサクセスストーリー「Infobip」(資金調達額2億ドル、約219億4000万円以上)は、クロアチア発のユニコーンだ。また、影響力の大きい開発者カンファレンスであるShiftもクロアチアで生まれた。Infobipはエンジニアリングコミュニティを必要としており、Shiftは不安定な時代に安定した拠点を必要としている。InfobipがShiftを買収し、後者の創業者兼CEOであるIvan Burazin(イワン・ブラジーン)氏を最高開発者エクスペリエンス責任者(chief developer experience officer)として役員に任命することで、開発者を企業戦略の中心に据えるのは自然な動きに思える。Shiftは、Infobipの新しい開発者エクスペリエンス部門の基盤となる。

ブラジーン氏はこう述べている。「世界最大級の開発者カンファレンスになること、そして、クロアチアとソフトウェア開発者の世界とのつながりを強化することが、常にビジョンとしてありました。ですから今、ユニコーン企業の後ろ盾を得て、独立して活動を続けられる自由を得たことで、ようやくそのビジョンが可能になったように思います」。

同氏によれば、Shiftは消滅するわけではなく、今後はグローバルに展開し、まずは米国、そしてラテンアメリカや東南アジアで、最初はバーチャルイベントで展開していくとのこと。

InfobipのCEOであるSilvio Kutić(シルビオ・クティッチ)氏はこう語った。「Infobipは、B2C分野、より具体的にはB2D(Business-to-Developer)の領域で急速に拡大する成長軌道に乗っています。B2D SaaS企業であるCodeanywhereの創業者であり、地域最大の開発者カンファレンスであるShiftの生みの親としての経験を持つイワン(・ブラジーン)を迎え入れることは、これからの当社にとって大きな財産となるでしょう」。

一方、スタートアップや創業者・投資家向けの重要なカンファレンスである「Tech Open Air Berlin」も変化している。

Tech Open Air(TOA)はテクノロジーとスタートアップの祭典として知られ、毎年夏になるとベルリンに2万人以上の人々を集めていたが、現在は「TOA Klub」という新しいブランドにピボットしている。これは今後「コホートベースの学習・行動プラットフォーム」となる。4~6週間のオンラインプログラムは、テック業界で活躍するプロフェッショナルを支援することを目的としている。

TOA Klubでは、Founders Klub(スタートアップを学ぶ創業者向け)、Investors Klub(初心者投資家向け)、Crypto Klub(「暗号資産分野の速習コース」)、Co-Creators Klub(ピボットや成長を目指す創業者向け)が提供される予定だ。

最初に確定したメンターとスピーカーには、Trivago(トリバゴ)の創業者Rolf Schrömgens(ロルフ・シュレームゲンス)氏、HelloFresh(ハローフレッシュ)の創業者Dominik Richter(ドミニク・リヒター)氏、そしてLa Famiglia VCの創業パートナーJeannette zu Fürstenberg(ジャンネット・ツー・フュルステンバーグ)氏が含まれる。

TOAの創業者であるNikolas Woischnik(ニコラス・ヴォイシュニック)氏は次のように述べている。「世界はこのパンデミックを乗り越える過程で、数年ではなく数十年単位でデジタル化を進めることになるでしょう。ビジネス環境の複雑さは大きく加速しています。TOAの『人、組織、そして地球を未来につなげる』という長年のミッションは、これまで以上に大きな意味を持ちます。Klubの立ち上げにより、当社はテクノロジーを活用して、よりインパクトのある、利用しやすい方法でそのミッションを実現する時が来たのです」。

筆者個人としても、これらのすばらしいブランドが新しい拠点を見つけたことをうれしく思う。ブランドも創業者たちも、ヨーロッパのスタートアップシーンで大きな尊敬を集めていると知っているからだ。

カテゴリー:イベント情報
タグ:バーチャルイベントShift Conference新型コロナウイルスクロアチアTech Open Air Berlin買収ドイツTOA Klub

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)