FAX受注を自動でデータ化、食材受発注サービス「クロスオーダー」に新機能

飲食店と卸売業者向けの受発注サービス「クロスオーダー」を手がけるクロスマートは1月28日、FAXによる受注内容を自動でデータ化する「FAX-OCR機能」を開発したことを明らかにした。同機能は卸売業者に対して3月1日より提供する。

外食産業における受発注業務はまだまだ属人的かつアナログな領域だ。クロスマート代表取締役の寺田佳史氏によると飲食店の発注方法の約6割は今でもFAXによるものであり、電話注文(通話と留守電)も合わせると「全体の約8割がデジタル化されていない注文だと考えている」という。

アナログな方法は発注側、受注側双方にとって負担が大きい。特に取引先が数百店舗に及ぶような卸売業者では、1日に数百枚のFAXが必要になるケースもあり、専属のスタッフを夜勤で数名雇用しているような企業もある。

主な業務はFAXに書かれた内容を自社のシステムにミスなく転記することであるため、この工程にデジタルを活用できればコスト削減はもちろん、より生産的な仕事をスタッフに任せることもできる。

2019年11月にスタートしたクロスオーダーは、まさにこれらの受発注業務をスマホやLINEを用いて大幅に効率化することが目的だ。寺田氏の話ではリリース約3ヶ月で卸売業者数十社、飲食店数百社に導入が進み、導入企業からの反応も良いそう。その一方でスマホ操作に慣れていないスタッフの多い店舗やスタッフの入れ替わりが激しい店舗など「やり慣れた方法から変えることに抵抗がある方も、一定数いることがわかった」という。

そういった店舗に無理に発注方法を変えてもらうことは、かえって業務効率を悪くしてしまうことにもなりかねない。そこで飲食店のやりかた自体は変えることなく、卸売業者側の受注作業を効率化する仕組みとして開発したのが今回のFAX-OCR機能だ。

この機能によって飲食店からFAXで送られてきた内容を自動でデータ化。従来は人力で行なっていた集計作業や基幹システムへの手入力にかかる手間を削減する。受注ミスが発生すれば追加のコストがかかってしまうため、読み取りに誤りの可能性がある箇所については人の目で確認できるような設計にした。

機能開発にあたっては受発注プロセスを理解するために受注作業を見学・体験し、多くの飲食店や卸売業者ユーザーと一緒に進めてきたそう。OCR技術は今後の改善スピードや機能拡張も見据えて完全に内製で開発。企画からローンチまで約半年を要したものの、精度もかなり向上しててきたためこのタイミングでの発表に至ったという。

同機能はクロスオーダー導入企業に追加費用なしで提供する方針。従来通り飲食店は無料で使うことができ、卸売業者は取引先店舗数に応じて月額の利用料を支払う(従量課金制)仕組みだ。

食材の発注をLINEで簡単に、飲食店と卸売業者間の受発注を効率化する 「クロスオーダー」公開

飲食店と卸売業者をつなぐプラットフォーム「クロスマート」を展開するクロスマートは11月19日、食材の受発注をスムーズにする新サービス「クロスオーダー」を公開した。まずはFAXによる注文比率が高く、年間の流通総額が3兆円を超える“青果物”に特化する形で始める。

同社では今年4月に最初のプロダクトであるクロスマートをローンチ。飲食店が1ヶ月分の納品伝票を登録するだけで、複数の卸売業者から一括で見積もりの提案を受けられる基盤を提供してきた。

クロスマートを活用すれば飲食店は仕入れコストを削減できる一方で、卸売業者としても新たな取引先を開拓することが可能。9月の資金調達時には約250店舗の飲食店と約50社の卸売業者が導入済みと紹介したが、その数はそれぞれ約300店舗・約100社まで拡大しているという。

今回スタートしたクロスオーダーは、そんなクロスマートの既存ユーザーの声から生まれたプロダクトだ。クロスマートが飲食店と卸売業者に新たな出会いを提供するのに対し、クロスオーダーでは既存の取引先間における受発注を効率化する。

構造はシンプルで、これまで主にFAXを通じて行っていた青果物の受発注をオンライン上で完結させるというもの。飲食店側はLINEを使ってスマホから発注先の選定や食材の注文を簡単に済ませられ、発注業務をスピーディーに実施することができる。卸売業者側も複数店舗からの受注データを一括でダウンロードできるため、FAXや電話で1件ずつ対応するのに比べて大幅な業務効率化を見込める。

「食品卸売業界の受注方法は約6割がFAXと言われており、現場では取引先(飲食店)から届くFAXの処理を早朝から行なっています。卸1社の取引先が200店舗の場合、単純計算で120枚/日、2400枚/月のFAX処理が必要で、そのためのスタッフを夜勤で2−3名雇用している会社も多いです」

「業務としては、FAXに書かれた注文内容を自社のシステムにミスなく転記するという作業です。クロスオーダーの導入により、人件費・用紙代・トナー代・FAX機のメンテナンス代などのコスト削減に加えて、より生産的な仕事にスタッフを稼働させることができます」(クロスマート代表取締役の寺田佳史氏)

寺田氏によると食材の中でも青果物は特にFAXによる注文比率が高く、注文頻度も多いそう。大手に限らず様々な規模の卸売業者が参入していることもあり、受発注プロセスに課題を感じている業者も少なくないという。

そもそも国産青果物は約8割が卸売市場経由で流通している状況で、今もなお卸売市場が重要なインフラとなっている。年間流通総額は野菜が約2兆5000億円、果物が約7000億円でトータルでは3兆円ほど。明確な課題があり市場も大きいため、まずは青果物に特化した受発注システムとしてローンチした。

クロスオーダーはクロスマートと同様に飲食店には無料で提供し、卸売業者から月額の利用料を受け取る仕組み(取引先店舗数による従量課金)。上述した通り従来FAXを転記する際に発生していた人件費やヒューマンエラーなどによるコストを削減できるのがメリットだ。

卸売業者は受注データを一括でダウンロード可能。使っている基幹システムに合わせてCSVフォーマットを変更できる

卸売業者は品目ごとに自動集計された飲食店からの発注データを用いて効率良く市場で商品を買い付けられるだけでなく、売りたい商品をスマホで撮影して訴求することも可能。飲食店へのサービス説明や導入支援はクロスマートが行う。

BtoBの受発注システムとしてはインフォマートが手がけるサービスなどもあるが、クロスオーダーでは主に個店〜小規模チェーンをターゲットにサービスを広げていく計画。ゆくゆくは青果物以外の食材も扱う方針で「『新しい価値を生み出す、食のマーケットプレイスをつくる』というビジョンにあるとおり、少しでも食の未来に役立つようなサービスを作っていきたい」(寺田氏)という。

飲食店の仕入れコストを減らすクロスマートが1.2億円調達、リリース半年弱で250店舗が導入

飲食店の仕入れコストを減らすプラットフォーム「クロスマート」を運営するクロスマートは9月24日、ベンチャーユナイテッド、セゾン・ベンチャーズ、XTech Ventures、梅田裕真氏などを引受先とする第三者割当増資により総額1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社はTechCrunchでも何度か紹介しているXTechの子会社として設立されたスタートアップ。2019年4月より展開するクロスマートでは、飲食店と卸売業者をつなぐことで飲食店に「仕入れコストを削減する手段」を、卸売業者には「新たな顧客開拓チャネル」を提供してきた。

飲食店の食材原価率は一般的に30%ほどとも言われるように、店舗にとって仕入れコストの削減は利益を増やす上で大きな影響を与える。ただクロスマートがメインターゲットとしている小規模の飲食店や個店の多くは自ら把握している仕入れ先の選択肢が限られているため、簡単にこのコストを減らせるわけではない。

そこで従来は飲食店コンサル経由で複数業者に見積もりをとったり、「飲食店.COM」のようなマッチングサイトを使ったりしていたわけだけど、クロスマートはそれをよりシンプルに、かつ効果的にできるような仕組みを整えた。

同サービスのウリは飲食店が1ヶ月分の納品伝票を登録するだけで、複数の卸売業者から一括で見積もりの提案を受けられることだ。スマホから請求書を撮影しさえすればいいので作業時間はだいたい10〜15分ほど(登録作業自体をクロスマートに依頼することもできる)。日々の業務内で無理なく使えるだけでなく、コンサルに依頼する場合などと違って飲食店側の利用料金が無料のためハードルも低い。

「(飲食店としては)どうしても集客の方を優先しがちだが、実は売上を伸ばすよりも仕入れコストを削減できた方が経営的なインパクトが大きいことも多い。クロスマートは納品データを軸に、今よりもコストが下がるというピンポイントの提案だけが届く。無駄な提案は一切こないことが他にはない特徴だ」(クロスマート代表取締役の寺田佳史氏)

「飲食店の人たちは仕入れ以外の仕事もあるので、仕入れ先の選別だけに膨大な時間をかけるというのは難しい。従来の仕組みでは自分で積極的に情報を集めて、複数の業者に問い合わせた上で話を聞く必要があった。クロスマートでは納品書をあげさえすれば、後は相手から情報が届く。ある意味“受け身”の姿勢で効果的にあいみつを取れる」(クロスマート執行役員の岡林輝明氏)

各提案ごとにどのくらいのコスト削減効果が見込めるかがすぐにわかる

サービススタートから約5ヶ月が経った現在は約250店舗の飲食店と約50社の卸売業者が利用。平均で5%のコスト削減を実現している。

「この半年ほど、まずは飲食店の成功体験を作ることを目標にやってきた中で、大きなものでは年間60万円のコスト削減につながるような例もでてきた。単にコストを下げたというだけでなく、その先で顧客向けのキャンペーンにお金を使えるようになったり、アルバイトスタッフの給料をあげることができたりなど、成功事例と言えるものが増えている」(寺田氏)

クロスマートのビジネスモデルは飲食店側からはお金を受け取らず、卸売業者から月額の利用料を得る構造。ミニマムでも月額5万円からのため、当然ながら卸売業者がそれだけの料金を払ってでも使いたいと思うサービスになっている必要がある。

卸売業者側の画面イメージ

その点についてはこれまでになかった「新規顧客の開拓チャネル」として卸売業者から評価されているそうで、毎月10〜20件のペースで利用企業が増えているという。

「新規開拓のために飛び込み営業をしている業界。優秀な営業マンであっても獲得できるのは月に3〜4件とも言われているので、月額数万円を払っても新たな顧客が獲得できれば十分ペイする。Web上で双方をマッチングする既存サービスは『食材を買いたい』という飲食店の書き込みに対してレスをする形が多く、その飲食店が何を買っているのかがわからない状態で提案をする。クロスマートの場合は、どの飲食店が何をいくらで買っているか把握した状態で商談を開始できるので、卸売業者にとっても効率がいい」(寺田氏)

今のところ卸売業者側のユーザーは大きく2パターン存在するとのこと。1つはすでに営業マンが何人もいる業者が営業活動をより生産的に行うべく導入するケース。そしてもう1つが人員が足りず営業活動を積極的にできていない業者が、事業を伸ばすために導入するケース。

どちらにせよ無闇に営業マンを増やすよりも効果が見込めるということで、引き合いが増えているそうだ。

今回の資金調達は飲食店側を中心に、双方の利用企業が増えて成功事例が生まれているタイミングで「営業を含めて一層アクセルを踏むため」のもの。人材採用を強化しさらなる事業拡大を目指すという。

「目標として掲げているのは外食産業の生産性自体をあげていくこと。飲食店と卸売業者をマッチングすることで仕入れのコストを削減するのはその1歩目で、ゆくゆくは日々の受発注や代金の支払いなど飲食店のバックオフィスの生産性向上を一気通貫でサポートできるサービスを目指したい」(寺田氏)

クロスマートのメンバー。最前列左から執行役員の岡林輝明氏、代表取締役の寺田佳史氏、取締役の西條晋一氏