Eコマース運営などを手掛けるheyがオンライン予約システム運営のクービックの全株式取得、hey本体も資金調達

STORESキャッシュレス化やEコマース対応なDXを支援するデジタルストアプラットフォーム「STORES」​を開発・運営するヘイは8月4日、オンライン予約システム「Coubic」(クービック)を開発・運営するクービックの全株式を取得し、グループ化することを発表した。今後クービックのサービスは、STORESブランドに統合される。

Coubic併せて本体のheyも資金調達を実施し、財政基盤のさらなる強化を図る。具体的には、米投資会社のBain Capital、香港投資会社のAnatole、米金融機関のGoldman Sachs、米決済会社のPayPal、YJキャピタル、および既存株主であるWiLなどを引受先とする第三者割当増資によって、シリーズEラウンドをクローズした。調達金額は非公開。調達した資金は、スタッフの数を従来の200名規模から400名規模に倍増させ、開発とサービスの強化を進める計画だ。

ヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏はプレスリリースで「今回の資金調達とクービックのグループ化を通じて、コロナウイルスの感染拡大と事業者の みなさまの営業自粛にまつわる課題を解決するためにリリースしてきた、売上金の早期出金 やオンラインストア開設サポート、ビデオ会議サービス「Zoom」との連携によるオンライ ンレッスン予約の簡易化などのニューノーマルに対応した個人、中小事業者向け機能の展開 をより加速していきます」と語る。

また クービックの代表取締役社長を務める倉岡 寛氏は「heyへの参画で、heyとクービックの仲間で、さらに『めんどくさい』ことが減り、楽しみによって駆動される経済に支えられた社会となることに貢献していきたいと考えています」とコメントを寄せている。

予約管理システム屋ではなくサービス版のAmazonへ、クービックが習い事の事業者向け新機能

近年、徐々にではあるけれど身の回りのサービスを手元のスマホから気軽に予約できるようになってきている。

わかりやすい例でいくとライドシェアアプリの「Uber」。もしくはタクシーの配車アプリでもいいけれど、アプリからわずか数タップで配車が完了。おまけに決済までアプリ上で完結するようになった。

他にも飲食店をはじめ様々なシーンでネット予約が広がりつつあるが、それはまだごく一部のこと。良いサービスを提供している事業者でも、いまだに電話予約にしか対応していないところも多い。

そんな予約にまつわる課題の解決策として、ビジネスオーナー向けにクラウド予約管理システム「Coubic(クービック)」を提供しているのがクービックだ。高度なウェブの知識がなくても、テンプレートを活用して自社サイトやブログにネット予約システムを導入できる上、会員管理機能や事前決済機能も搭載。現在の登録事業者数は6万を超えている。

そんなクービックは新たな機能として6月にエンドユーザー向けの会員アプリを、そして本日7月12日に習い事の事業者向けの「会員管理システム」をリリースした。

これらの機能も含めて同社が目指すのは、オーナーとユーザーが繋がる「サービスの流通プラットフォーム」だ。

登録事業者の35%を占める習い事領域の課題解決へ

クービックについてはTechCrunchでも過去に何度か紹介している。同社は2013年10月の創業。2017年5月には総額3億円の資金調達を実施した(累計の調達額は6億円を超える)。

もともとは創業者である倉岡寛氏がユーザーとして予約の体験に不満を感じ、プロダクトアウト的にリリースしたのが始まり。これまでは幅広い業種のオーナー向けに提供してきたが、約1年前の調達時あたりから、まずはどこかの業種に絞ってより深い機能を作り込むことを決めたそうだ。

結果的に的を絞ったのがスポーツスクールや塾など習い事の事業者だった。この層はCoubicの登録事業者の約35%を占めるだけでなく、受講料ベースの市場規模(お稽古・習い事市場)が約2兆円とマーケットも大きい。加えて巨人と言えるような大きな力を持つ競合がいないという事情もある。

「多くの事業者が抱えている課題として『集客』と『会員管理』の2つがある。習い事の事業者の場合は、特に予約の仕組みやレッスンの振替など特殊なオペレーションがあって、大きな負担となっていた。この問題を解決するべきだと考えた一方で、既存のCoubicでは対応できていない部分もあり、特化型のシステムをリリースすることを決めた」(倉岡氏)

塾や何らかのスクールに通ったことがある人はイメージしやすいかもしれないが、これらのサービスは「基本的に毎週月曜日の19時のクラス」のように、時間割が決まっているケースが多い。飲食店やサロンのようにその都度予約をするサービスとは少し仕組みが異なる。この場合に大変なのが体調不良などで予約の振替を行うときだ。

倉岡氏によると、予約の変更を電話で受付た後で「誰をどの曜日のどのクラスに振り替えるか」を模造紙などで整理し、膨大な時間を使いながら振替作業を行なっている事業者も少なくないそう。これはあくまで一例にすぎないが、このような業界特有の慣習やオペレーションを効率化することがクービックの会員管理システムの目的だ。

同サービスは細かい振替予約に対応する機能や、月謝や月会費の自動集金機能、先生や指導者ごとに操作権限を調整できる管理者権限機能などを搭載。急な中止連絡や急きょできた空き枠を案内するDM機能も備える。

合わせて6月にローンチしたユーザー向けのアプリと連動することで、生徒側のユーザーはモバイル端末から簡単に欠席や振替の手続きが完了。今までのように毎回電話で対応する手間もない。

このシステムはCoubicと自動連携していて、同サービスの「スタンダード」「プラチナ」「エンタープライズ」プランにて利用できるという。

あらゆるサービスが流通する「サービス版のAmazon」目指す

今回の会員管理システムは、従来のCoubicでは十分に解決できていなかったビジネスオーナーの課題を解決するものと言えるが、倉岡氏によると何も「事業者向けの予約管理システム屋さん」を目指しているわけではないそう。

究極的にはCoubicを使うオーナーが増えて行った結果として習い事やマッサージ、サロンなどさまざまなサービスが流通し、それらのサービスをユーザーがひとつのアプリから簡単に予約できるプラットフォームを作りたいのだという。

先月公開した会員アプリは同社にとって今後軸となるものだ

「予約管理も、決済管理もあくまでそのために必要となる個々のツールという位置付け。Amazonであらゆるものが買えるように、いろいろなローカルサービスがわかりやすい形で提示される『サービス版のAmazon』のようなプラットフォームを考えている」(倉岡氏)

クービックが2015年から運営しているサロンの当日予約サービス「Popcorn(ポップコーン)」もこの構想に繋がるもの。Popcornはあくまでサロンに特化したものだけど、オーナーとユーザーを直接繋ぐ場所として機能している。

「Popcornはオーナーとユーザーを一度に集めようとして少し苦戦した部分はあるが、Coubicの登録事業者数が拡大する中で、ようやくこの構想を目指すための基盤が整い始めてきた。現時点のアプリはすでに繋がりのあるオーナーとユーザー(リピーター)の関係性を密にするもの。次の段階ではそこにプラスして、新しい出会いや体験を探せるサービスにしていく」(倉岡氏)

2015年リリースの「Popcorn」

倉岡氏がひとつの参考としてあげるのが米国の「OpenTable」だ。最初は飲食店向けの予約管理システムとしてスタートして、徐々にユーザー向けに歩み寄り、今では様々な飲食店が見つかるメディアとしての機能が強くなってきている。

Coubicの場合も入り口はオーナー向けのツールとして始まっているが、今後少しずつユーザー向けの機能も強化していくことで、双方を繋ぐプラットフォームへの転換を進めていく。