ゲーム実況プラットフォームTwitchが東京にオフィスを開設、日本に本格進出

ライブビデオでも今や一大ジャンルとなったゲーム実況。そのプラットフォームというと、日本ではYouTubeやニコニコ動画の名前が真っ先に挙げられることだろう。そんな日本に、世界的なゲーム実況プラットフォームであり、コミュニティも提供するTwitchが、ついにオフィスを設立することを明らかにした。

Twitchはアメリカ・サンフランシスコを本拠とする、ソーシャルビデオプラットフォームの会社だ。2011年、ライブ配信サイトのJustin.tvからゲームカテゴリーを切り出して誕生。2014年には9.6億ドルでAmazonに買収されたが、そのままのブランドでサービスを継続して提供している。

Twitchの新しい日本オフィスは東京に置かれ、APACディレクターであるレイフォード・コックフィールドIII世(以下、レイ)氏が着任する。今回のオフィス新設により、日本市場への展開を継続的に行い、さらにゲーム以外のジャンルへの拡張も進める、とTwitchでは説明している。ゲーム以外のジャンルとして具体的には、イラストや音楽などの創作活動のコミュニティやアニメ、プロレスなどの分野で、既に日本国内の関連ブランドやクリエイターと提携を進めており、年内にもいくつかの発表を行うようだ。

冒頭にも挙げたYouTubeやニコニコ動画のほかにも、クリエイター向けコミュニティとしてはPixivなども根づく日本への進出で、Twitchに勝算はあるのか。レイ氏は、昨年開催されたTechCrunch Tokyo 2016に登壇した際に「アジアでは、コミュニティとインタラクションが肝だ」「日本ではデータ収集と言語のローカライズを進めてきたが、これからは外資のサービスだと気づかれないぐらいのサービスを提供していきたい」「コミュニティ第一主義を採り、コミュニティは大切にするが、競合の存在はサービス拡大には影響はない」と意気込みを語っていた

今回のオフィス開設にあたり、レイ氏は「日本のコミュニティに対する私たちのコミットメントを示すとともに、アニメやプロレス、オタクカルチャーといったさまざまな分野で、ゲームと同様のコンテンツを日本の皆様に楽しんでいただけるようになることを、とてもうれしく思う」とコメントしている。

YouTube Liveの配信者が急増中―、チップ収益の96%は未だにTwitch上で発生

YouTube Liveは、先行サービスのTwitchに驚くべき勢いで迫っているが、両者が肩を並べるまでにはまだ時間がかかりそうだ。その一方で、YouTube Liveの未来が暗いというわけでもない。Streamlabsが最近発表したレポートも、ライブ動画配信自体は持続可能なビジネスであることを示唆している。

Streamlabsが自社のストリーミング・アシスタント・アプリを通じて入手したデータをもとに、過去半年間の成長率を見てみると、YouTube LiveがTwitchを上回っていることがわかる。YouTube LiveがYouTubeという人気サービスから派生したものであることを考えると、この結果は予想の範囲内と言えるが、このような新規サービスが十分なトラクションを獲得できずに終わるということもよくある。

最近のTwitchのMAS(Monthly Active Streamers:月間アクティブ配信者数)はだいたい25万人強を記録しているものの、その伸びに関しては、今月は5000人増、翌月は1万5000人増といった具合で間欠的だ。一方YouTube Liveは、初月に2万3000人のMASを獲得し、その数はこれまでに7万5000人へと増加。これはまずまずの成長率で、その勢いが衰える様子もない。

とは言いつつも、Streamlabsのシステム(多数の配信者が利用している)が直接関わっているチップ(投げ銭)収益に関しては、Twitchが全体の96%を占めている。

予想外ながらも嬉しい発見として、長い間ライブ動画を楽しんでいる人のチップ額は、最近ライブ動画を見始めた人よりもかなり大きいということがわかった。2年前に作られたアカウントの平均チップ額が80ドル以上となっている一方、新規アカウントの平均チップ額は約23ドルにすぎなかった。アカウントの保有期間が長くなるにつれて平均チップ額が増加するという傾向からは、ユーザーが動画視聴を趣味のようにとらえ、(他の趣味のように)徐々にそこにかけるお金を増やしている様子が見て取れる。

そしてユーザーからのチップが配信者の支えとなっており、動画配信からの収入で生活する人も増えてきている。同時に、スポンサーがついていない配信者の数も増加傾向にある。

業界動向について探るため、StreamalbsのCEO Ali Moizに話を聞いた。私が特に気にしていたのが、Twitchの成長速度が落ちたことで、ライブ動画配信ビジネスの未来に関する前向きな議論が妨げられてしまう可能性があるのではということだった。

これに関しMoizは、Twitchの成長のスピードが緩まってきたことには同意しつつも、その原因はむしろ健全な競争環境にあると言う。

「今ライブ動画配信を始めようとしている人には、数年前と比較するとかなりの選択肢が用意されています。当時は、ライブ動画配信をしたければTwitch、という感じでしたからね。今ではYoutube、Facebook、Instagramを筆頭にさまざまなサービスが揃っています」と彼は話す。

しかし、選択肢が増えたからといって、配信者や視聴者の数も増えるとは限らない。ライブ動画配信業界は、これからの5年間何を頼りに成長していくのだろうか?

「個人的には、ゲーム以外のジャンルが業界の成長の大部分を支えることになると考えています。モバイル端末を使ったライブ配信もはじまったばかりですしね」とMoizは語る。「旅行やファッション、美容、コンサート、食べ物(特に韓国で人気)あたりが特に注目のジャンルです。ゲームも引き続き少しずつ成長していくとは思いますが、これまでのような2倍、3倍というスピードにはならないでしょう」

Streamlabsのレポート(1月に最初のレポートが発行されて以降、四半期ごとにリリースされている)の全文は、Medium上に掲載されている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter