【編集部注】Jose DeustuaはペルーのアクセラレーターUTEC Venturesのマネージングディレクター。UTEC Venturesはペルー最大の投資イベントPeru Venture Capital Conferenceを開催している。
中南米でスタートアップが資金を調達するのは、砂漠のど真ん中で水飲み場を探すようなものだ。どこかにあるはずだ、というのは分かっているが、タイミングよく見つけるのは死活問題だ。
そうした状況であっても、この地域におけるベンチャーキャピタル投資はこれまでになく活発になっている。Andreessen HorowitzやSequoia Capital、そしてAccel Partnersなど主要各社がコロンビア、ブラジル、メキシコといったマーケットで創業への投資を行なっている。しかし同時に、スタートアップ創業者たちは彼らの周りで起こっている巨額投資のニュースにじれったい思いでいるかもしれない。というのもスタートアップ創業者のほとんどが投資ステージに近づくのだが、往々にしてそれは蜃気楼以外の何物でもないと認識する。
これは中南米だけの問題ではないだろう。世界中どこでもスタートアップは投資家探しに苦労している。ベンチャーキャピタルは次のユニコーンを探し出そうと果てしない追求を続け、これまでより少ない案件により多くの資金をつぎ込んでいる。米国と欧州においてベンチャーキャピタルの案件数は減少していて、確立されたエコシステムに身を置く起業家ですら、ビジネスを展開するための材料を探そうと遠くに目を向け、起業家の多くは中南米などの新興マーケットに向かっている。
スタートアップ創業者が新興マーケットの人間であれ、外国人であれ、幸いにも会社を大きくするために必要な投資を海外から探し出す方策はある。以下、我々がペルーで展開しているUTEC Venturesアクセラレータープログラムに参加しているスタートアップに勧めていることを紹介しよう。これはあなたにも勧めたいことだ。
シード期の資金調達はまずローカルで
新興マーケットのスタートアップとして、ローカルからの投資を見つけ出すのは簡単なことではない。事実、だからこそまず海外からの投資をあたるのだろう。しかし、手始めにローカルからのシード投資を探すというのは、その後に控える海外からの投資確保にまず必要なことだ。
たとえば、ペルーでは昨年、スタートアップにシード資金として720万ドルが投じられた。そのうち100万ドルが海外ファンドからのものだった。これは、新興マーケットに関心のある海外投資家は、シードラウンドにおいてはそれほど活発ではなく、企業がそれなりの価値を示してからのラウンドに関心を持っていることを示している。
海外投資家の関心を集めたければ国際的なスタートアップであるべき
そのため、我々は全てのスタートアップにシード期における1回目、2回目の資金調達はペルーで行い、その後海外からの投資を模索するようアドバイスしている。これは他の新興マーケットにおいても言えることだ。
最初のラウンドで資金を調達するために最も重要なことは、確固としたチームを有していること、そして客を引きつけ、また地元の競争相手より優れたビジネスアイデアを持っていることを示すことだ。これらを満たせば、ローカルでシード資金を調達するのはそう難しいことではないだろう。ローカルのエンジェル投資グループとネットワーキングをする時や投資イベントの時に必要なのは、良い売り込み資料といくらかの忍耐力だ。
さらに大きく競争の激しいマーケットで成功するためには
もし海外の投資家をひきつけたいのなら、国際的なスタートアップでなければならない。言い換えると、国際的な投資機関のトップに向き合う前に、より大きく競争の激しいマーケットでプロダクトを売ることができると示す必要がある。ペルーと中南米における新興マーケットのスタートアップにとって、これは中南米で最も発展しているメキシコ、ブラジル、アルゼンチンのマーケットに進出することを意味する。
例として、コロンビアの配達サービスRappiを挙げる。Andreessen Horowitzが主導した、初の大きな国際投資で2016年初めに資金を調達したのち、Rappiはメキシコへと事業を拡大した。その1カ月後にシリーズBラウンドを実施。今年初めには、ドイツの食料配達会社主導のラウンドを実施し、そこにはたくさんの米国投資家も加わって1億3000万ドルを調達した。
同じことが、中南米以外の新興マーケットでもいえる。ベンチャーキャピタル投資で西欧諸国に遅れをとっている東欧では、多くの起業家が自国で商売を成功させるとすぐさま西欧に進出し、ビジネスを最初から立ち上げたりそこで拡大させたりする。成熟したマーケットからの資金調達をしたいと考えているなら、そうしたマーケット、少なくとも同規模のマーケットに拠点を置くべきというのはこれで明らかだろう。すなわち、国際投資を模索する際に最初にフォーカスすべきは、現地マーケットでローカル企業になることだ。それから、成熟したマーケットー米国やメキシコ、西欧または別のところーでそれまでに収めた成功を再現させればいい。
国際投資の全てが国際VCによるものとは限らない
国際ベンチャーキャピタルから目がくらむような投資を確保するというのに注意がいきがちだが、思いのままに国際投資を確保するには他にもたくさんの方法がある。
新興マーケットの政府は、経済成長のエンジンとなる自国のスタートアップエコシステムを活性化させるようなプログラムを急激に増やしている。国内でビジネスを立ち上げると決めた起業家に対しエクイティフリーの資金を提供するという形でサポートするなど、政府による多くのプログラムが展開されるようになっている。
中南米のような新興マーケットでは大企業による投資が重要
中南米だけでも例はたくさんある。たとえば、Start-Up Chileはチリから世界に進出するようなビジネスを立ち上げようとする起業家に最大8万ドルを提供する。プエルトリコのParallel18は同様の趣旨で7万5000ドルをあてる。ペルー政府も、スタートアップがペルーでソフトローンチするのを最大4万ドルの提供でサポートするプログラムを、きたるPeru Venture Capital Conferenceで発表する計画だ。
他にも手段はある。中南米のような多くの新興マーケットでは、コーポレートキャピタル、または大企業のスタートアップ投資が非常に大きな役割を果たす。事実、米国のテック大企業Qualcommの投資部隊、Qualcomm Venturesは中南米において最も活発なグローバル企業投資家となっている。 NaspersやAmerican Express Ventures、他企業のファンドもこの地域のスタートアップに盛んに関心を寄せている。
外国政府によるサポートの増加、そしてグローバル展開する大企業の関心も併せて、国際投資を確保することは実際に可能であり、あなたが思うほど難しいことではない。国際ベンチャーキャピタルから資金を調達するにはいくつかオプションがあるが、これから打って出ようとしているマーケットでどういう選択肢があるのか、時間をかけて検討した方がいい。
だから、新興マーケットでローカルの起業家なのかそれとも外国人の起業家なのかに関係なく、国際投資を模索しない手はない。鍵となるのは、グローバル視点で考えることと、直面している問題の解決にテクノロジーを使うことだ。その上で、まずは自国でそれなりの成果を出し、それを今度はさらに大きなマーケットで再現させる。一歩踏み出すと打開するための手段がある。それをうまくつかめれば、投資の井戸は結局枯渇しているわけではなかった、ということに気づくだろう。
イメージクレジット: Loskutnikov / Shutterstock
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(翻訳:Mizoguchi)