目に見えず簡単に消せない「透かし」を入れてウェブ画像を追跡するImatag

Imatagを紹介しよう。画像のウォーターマーク(透かし)に取り組んでいるフランスのスタートアップだ。デジタル画像のウォーターマーク自体は新しいものではない。しかしこの会社は、サイズを変更したり、トリミングしたり、さらに編集を加えたり圧縮したりしても検出可能なウォーターマークを開発した。

多くの写真家やブランドは写真にウォーターマークを入れている。それにより、写真がウェブやソーシャルネットワークに再アップロードされても、元のソースを確認することができる。しかし、それだけでは完璧ではない。例えば隅に小さなロゴを配置した場合、写真をトリミングすることでロゴを除外できてしまうのだ。

Getty Images(ゲッティイメージズ)やShutterstock(シャッターストック)といったオンラインの写真データベースは、写真の真ん中に巨大なロゴを配置することで、適切なライセンスを取得しない限り、実質的に使えないようにしている。

Imatagのアプローチは、少々違っている。写真にマークを入れる際には、画像全域に渡って個々のピクセルが変更される。オリジナルの写真と見比べても、違いに気づかないような巧妙な方法で。その写真を編集しても、一部のピクセルは変更されるが、すべてではない。そのため、その後でもウォーターマークを検出できるのだ。

「ピクセルの色を直接変更するのは、よい方法とは言えません。グレースケールの分析から始めるべきでしょう。私たちはそうしています」と共同創立者でCEOのMathieu Desoubeaux(マシュー・デサウボース)氏は述べている。「心理視覚的なマスクを適用しています。これは人間の目では見えません」。

Imatagは、個々の写真を処理してシグネチャを​​割り振ることができる。同じプロセスを適用することで、複数の写真のシグネチャを比較し、それらのソースが同じかどうかを確認できる。

同社はさらに一歩進んで、さまざまなユースケースに対してサービスを提供できるようにしている。Imatag Monitorというツールを使えば、ユーザーの写真がウェブ上のどこに出現したのかを監視することも可能だ。

ストック写真のエージェンシーのように、不正な使用に対抗するために利用するクライアントもいる。一方ブランドは製品のショットが、どこのソーシャルネットワークに表示されたのかといったことを確認できる。ブランドは人々にどんどん写真を共有して欲しいが、同時に新製品に対する反応を監視したいとも思っている。

またImatagは、スマホや自動車のメーカーとも協力している。公式発表の前にリークがあれば、それを特定できるようするためだ。スマホの新製品の写真をさまざまな小売業者に送信する際に、Imatagでタグ付けしておけばいい。それにより製品のショットがリークされた場合、その漏洩源を追跡できるようになる。

Imatagでは、大量の写真を扱う場合でもそのワークフローの中に、同社のウォーターマーク機能を統合する方法を提供している。それほど数が多くない場合には、Imatagのウェブサイトを利用すれば、画像にウォーターマークを付けるのも簡単だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

商品写真のクラウドソーシングサービスBYLINED

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2015年の映画「ビジネス・ウォーズ(原題:Unifinished Business)」のキャンペーン用に作られた、主演Vince Vaughnのコラージュ写真を覚えている人がいるかもしれない。これらの写真は、味気ないビジネス系のストック写真にうつっている人の頭を、Vaughnのものと上手くすげ替えて作られていた。このキャンペーンがウケたのには理由がある。それは、私たち全員が巷にあふれるストック写真の安っぽさを認識しているということだ。

誤解しないでほしいのは、ストック写真の中にも良質なものが含まれているが、そのような写真をみつけるのには労力を要する。

BYLINEDというコロンバスで誕生したスタートアップは、企業と消費者がWin-Winな関係を築きやすくなるような環境を準備し、より良い写真、もしくは少なくともオリジナルな写真を生み出そうとしているのだ。

彼らの無料アプリと写真エコシステムでは、買い手(ブランドや広告会社、出版社などがその代表格)が、ある形式の写真のリクエストを、いわばアサインメントもしくは業務委託のような形で掲載することができる。さらに買い手は、自分が「ブランドプロミスや、製品が使用されている様子を含む、製品中心の写真」に対して支払いたいと思う金額を選択することになる。

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一旦アサインメントがプラットフォーム上に掲載されると、(BYLINER’sと呼ばれる)ユーザーは、BYLINEDのモバイルアプリを通じてその通知を受け取る。その後、ユーザーは自分の写真をアプリ経由で提出し、その写真が買い手に選ばれると報酬を受け取ることができる。なお、買い手には購入した写真を無償で二次使用できる権利も与えられる。

BYLINEDは現在、各写真のリクエストに設定された金額に応じて企業から受け取る25%のサービス料を収入源としており、2017年中にはサービスのサブスクリプション化を検討している。

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BYLINEDのほかにも、現在twenty20Foap(こちらはBYLINEDと酷似している)さらにはChuteといった類似のクラウドソース写真アプリが存在する。しかしBYLINEDは、商品写真へのフォーカスや、全ての写真にメタデータを付加することで、他社との差別化を図っている。さらに、彼らのモデルはアサイメントベースの写真販売・購入に的が絞られている。Foapのように決まったマーケットプレースは存在せず、BYLINEDファウンダーのDavid Hunegnawによれば、こうすることで「BYLINEDの存在理由である、顧客エンゲージメントにプラットフォームの照準を合わせている」。

競合サービスとの類似点はあるものの、私はこの市場にはまだ競争が激化する余地があると考えている。さらに、スマートフォンに搭載されたカメラの性能が段々と向上していく中、消費者が良いカメラマンのふりをするのも段々簡単になっている。これはアマチュア・カメラマンにとっては朗報だ。

そして、このサービスで損をするのは誰かと考えると、プロのカメラマンはどうだろうか。彼らの中には、BYLINEDのようなサービスで仕事が減ってしまう人が出てこないだろうか?その可能性はゼロではないが、デジタル時代において、こういった動きはどんな芸術分野でも起きていることだ。新しいシステムに対抗する代わりに、プロのカメラマンは新たな収入源を発見し、自分たちの技術を活かしてBYLINEDのようなサービスに入り込んで、その市場を支配してしまうという可能性もある。というのも、プロが撮影時に利用する写真の構図やライティングといった技術には鍛錬を要するのだ。

私の友人でプロカメラマンのJason Poteatに、このようなサービスについてどう思うか尋ねてみたところ、彼の回答は落ち着いたものだった。

「カメラマンとしては、こういったサービスが大きな脅威になるとはいまいち思えないな。スマートフォンのカメラはちゃんと使えば良い写真がとれるけど、キャンペーン全体で使う写真や、統一感が求められる場面、あとは印刷用やビルボード向けの大判写真に対応できるほどの柔軟性は持ち合わせてないしね」

さらに彼はこう続けた。

「一方で、パッと隠し撮りされたパーソナルな写真には、どこか芸術的で”繋がり”が感じられるものがあるのも事実だね。結局何を求めているかによるんじゃないかな。全体的に言えば、コメントというより、質問のほうがたくさん思い浮かんでくるな……例えば、デジタル一眼レフでとった写真はアップロードできるの?販売された写真は脇役として使われるの?それともキャンペーン用で使われるの?BYLINEDのようなサービスについて考えると、こんな質問が頭の中に浮かんでくるよ」

さらに、スマートフォンで撮った写真が、いつかは陳腐なストック写真のような烙印を押されることになるのか、ということについても考えなければならない。”スマートフォンっぽい写真”というのが見分けられるようになり、陳腐化してしまうようなことがあるのだろうか?その答えは分からないが、もしもそんなことが起きれば、BYLINEDのような企業は大きな問題に直面することになるだろう。

BYLINEDは、LOUD Capitalや複数のエンジェル投資家を通じて25万ドルを調達したばかりで、同社ファウンダーのDavid Hunegnawは、LOUD Capitalのパートナー兼EIRでもある。また、BYLINEDと同じく、コロンバスを拠点とするプロトタイピングの大手Big Kitty Labsも同社にエクイティパートナーとして参加しており、BYLINEDアプリの開発を担当していたことを記しておきたい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter