オリィ研究所の分身ロボット「OriHime」に新製品、自走可能で接客・誘導も行える拡張版「OriHime Porter」登場

オリィ研究所の分身ロボット「OriHime」に新製品、自走可能で接客・誘導も行える拡張版「OriHime Porter」登場

遠隔操作ながら「その場にいる存在感」を共有できる分身ロボット「OriHime」(オリヒメ)を展開するオリィ研究所は7月19日、その拡張版として移動能力を備え、カフェの接客や受付誘導なども行える「OriHime Porter」(オリヒメポーター)を発表した。

オリィ研究所の分身ロボット「OriHime」に新製品、自走可能で接客・誘導も行える拡張版「OriHime Porter」登場

いわゆるテレプレゼンスロボットである「OriHime」自体は小さな据え置き型のロボットだが、「遠隔操縦できるワゴン」に「OriHime」を載せる形で移動性を持たせたのが、この「OriHime Porter」。そもそもオリィ研究所では、2018年に移動式の大型ロボット「OriHime-D」(オリヒメディー)を開発し、実験カフェ「DAWN ver.β」(ドーンバージョンベータ)や自治体、企業などでコミュニケーションと給仕の実験を行ってきた。そこでの経験とカフェからの要望で、「OriHime Porter」が誕生したということだ。

特徴は、直感的な遠隔操作ができ、衝突防止センサーを備えるなど人との共存環境で安全に自由に移動できること、OriHimeの身振り手振りを交えた「そこに本当に人がいるかのような」コミュニケーションができること、導入先の地図作成など導入初期の作業負担が少ないことなどがあげられている。

スマートフォンやPCを使った直感的な操作が可能で、前進・後退・その場旋回など自由に走行できる。また、パイロットは動作環境の様子をリアルタイムで認識できるため、地図生成などの事前の設定なども不要(画面は開発中のもの)

スマートフォンやPCを使った直感的な操作が可能で、前進・後退・その場旋回など自由に走行できる。また、パイロットは動作環境の様子をリアルタイムで認識できるため、地図生成などの事前の設定なども不要(画面は開発中のもの)

全12個の接触防止センサーで周囲を監視しており、人やものに接触する前に停止する

全12個の接触防止センサーで周囲を監視しており、人やものに接触する前に停止する

緊急時は本体上部の非常停止ボタンで停止可能。視認性の高い赤色で、サイズも大きく押しやすくなっている

緊急時は本体上部の非常停止ボタンで停止可能。視認性の高い赤色で、サイズも大きく押しやすくなっている

オリィ研究所が考えるOriHime Porter導入イメージには、次のようなものがある。

  • オフィスや商業施設での誘導:「OriHime」の隣に置かれたディスプレイに地図などの資料を表示し、自然な会話を交わしながら客を目的地まで誘導する
  • 展示会:ディスプレイに情報を表示し、棚にパンフレットを載せて配りながら歩き回ったり、呼び込みなどを行う
  • カフェなどでの接客・運搬:客の案内、注文品を棚に載せて運搬。自然な声かけで臨機応変な接客をする

棚の部分はOriHimeのイメージに合わせて曲線で構成され、木材の棚板で温かみを出している。デザインは、歴代OriHimeのデザインを担当しているオリィ研究所の共同創設者・代表取締役CEOの吉藤健太朗氏と、工業デザイナーで「クリエイティブ・コミュニケーター」の根津孝太氏が協同で行っている。

OriHime Porterは、アルミフレームのシャープさと木のやさしい質感を活かしたデザインにより、お店やオフィスの雰囲気になじませやすい。棚板は8種類のカラーリングから選択できる

OriHime Porterは、アルミフレームのシャープさと木のやさしい質感を活かしたデザインにより、お店やオフィスの雰囲気になじませやすい。棚板も、8種類のカラーリングから選択できる

「OriHime Porter」の仕様

  • サイズ:H1300mm×W370mm×D360mm
  • 本体重量:約16kg(OriHime本体・付属iPadディスプレイ含む)
  • 積載スペース:内寸W315mm×D350mm×3段
  • 最大積載重量:1棚あたり最大5kg、全体で10kgを超えないこと
  • 移動速度:時速約1~2km程度
  • 稼働時間:連続8時間(利用方法によって異なる)
  • 写真は試作品のため詳細が異なる可能性がある

オリィ研究所では、ロボット開発以外にもOriHimeを核とした各種製品やサービスを展開している。たとえば、外出困難者のための就労支援サービス「AVATAR GUIL」(アバターギルド)、重度障害者が目や指のわずかな動きだけでコミュニケーションがとれる意思疎通装置「OriHime eye+Switch」(オリヒメアイプラススイッチ)など。

OriHimeはサブスクリプションの形で提供されており、「OriHime Porter」導入に関する問い合わせはこちらから行える。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:オリィ研究所遠隔操作 / リモートコントロール(用語)テレプレゼンス(用語)日本(国・地域)

修理や相談などの顧客対応をリモートで実現するHelp Lightningが8.5億円を調達

米国アラバマ州バーミンガムに本社を置くHelp Lightning(ヘルプ・ライトニング)が、同社のサービスを売り込み始めてから4年。いまやその契約顧客数は100社を越えた。その中にはフォーチュン500企業であるCox Communications(コックス・コミュニケーションズ)、Siemens(シーメンス)、Boston Scientific(ボストン・サイエンティフィック)なども含まれている。

そしていま同社は、販売とマーケティングの取り組みを拡大し、製品の改良を続けるために、Resolve Growth Partnersからの追加の800万ドル(8億5300万ドル)の資金を得た。

同社が売り込むテクノロジーを最初に発明したのは、アラバマ大学バーミンガムの脳神経外科医のBart Guthrie(バート・ガスリー)氏だった。彼は遠隔手術を支援できるようにテレプレゼンステクノロジーを改善する方法を模索していたのだ。

ガスリー氏が開発したのは、専門家がサービスの修理から手術に至るまで、すべてをリモートで監視・管理・支援できるように、ビデオストリームを受け手の手元のディスプレイに合成できるテクノロジーだ。

「強力なビデオ通話だと考えてみてください」と語るのはHelp LightningのCEOであるGary York(ゲイリー・ヨーク)氏だ。連続起業家である同氏は、同社のテクノロジーの商業化を支援するために、ガスリー氏によって4年前に同社に招かれた人物だ。

このテクノロジーは任意のAndroidもしくはiOSデバイスで利用することが可能で、モバイルブラウザーを介してアクセスできる。同社は現在、Cox(コックス)、キヤノン、Unisys(ユニシス)、Boston Scientific(ボストン・サイエンティフィック)など100社を超える顧客を抱える。ヨーク氏によれば、その利用はパンデミックの登場以来急増している。

「利用量は4倍になりました」とヨーク氏はいう。

例えば、米国3位のデジタルケーブルテレビプロバイダーであるCox Communicationsはこのテクノロジーを使用して、顧客の自宅訪問サービスに代わる遠隔トラブルシューティングサービスを提供している。 シーメンスの場合は、医療画像処理や検査機器を修理するサービス技術者が、Help Lightningを使用して専門家と連携してリアルタイムでトラブルシューティングができる。ヨーク氏は利用料金についてはコメントしなかったが、同社は使用量に基づいて個別に見積を提供すると述べた。

「1年以上にわたって遠隔専門技術提供ソフトウェア市場を評価した結果、Help Lightningが顧客から高く評価されるのにふさわしい、高度に差別化されたソリューションを構築できたことは明らかです」と声明で語ったのはResolveのマネージングディレクターで共同創業者のJit Sinha(ジット・シンハ)氏だ。「Help Lightningは、この急速に台頭している市場の成功を、さらに推進できる大きなチャンスを握っています。ゲイリー・ヨーク氏ならびにその素晴らしいチームとパートナーシップを結べることを、うれしく思っています」。

画像クレジット: Help Lighning

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(翻訳:sako)