写真左より、TRUNK CEOの西元涼氏、同CTOの布田隆介氏
求人情報サイトなどを運営するディップは、3月13日に学生向けの就業トレーニングサービスを提供するスタートアップのTRUNKを持分法適用関連会社化すると発表した。出資比率や取得金額などは非公開。
ところで、このTRUNKというスタートアップを知っているという読者は少ないだろう。彼らはこれまで外部調達などを行っておらず、メディアへの露出も極端に少なかったからだ。そこでTechCrunch Japanでは、TRUNKの代表取締役である西元涼氏、同CTOの布田隆介氏に同社のビジネスモデルを聞いた。
企業が提供する生のトレーニングを受けられる
TRUNKは学生に向けてエンジニアやデザイナーなど12職種の養成コースを提供するスタートアップだ。コースは現在12種類あり、それらはすべてオフラインで提供される。また、コースの中には企業との提携によって提供するものもあり、それらのコースを受講する学生は実際にその企業のオフィスに行って教育を受けることになる。そのため、TRUNKは単なる教育コンテンツだけでなく、「職業体験」の機会を学生に与えていると言える。
加えて、TRUNKは学生のために就職活動で使えるWebレジュメも発行。コースを修了することで、学んだことを「自分がもつスキル」としてアピールすることができる。提携済みの企業へのインターンも準備しており、学ぶだけではなく、就職することにも重点を置いている。一方の企業は、TRUNKと手を組むことで自分が提供する教育コースに来たやる気のある候補者を効率的に探すことができる。
TRUNK代表取締役の西元涼氏は、「TRUNKの提携先企業には2つのタイプの企業がある。1つは、インターンに応募してくる学生の数は多いが『少人数のやる気のある学生と会いたい』という企業。もう一方は、そもそも知名度がなくインターンの数が集まらない企業です。TRUNKはそれらの企業の課題を解決できる」と話す。
「学生完全無料」という信念
そんなTRUNKの最も大きな特徴は、同社は学生に対してこれらのコースを完全無料で提供しているという点だ。収益源は、提携先企業から受け取る年間180万円のサービス利用料だ。聞けば、「完全学生無料」というTRUNKの創業当初からの信念は、西元氏の原体験に基づいているという。
西元氏が学生のとき、父親が経営する企業が破綻。西元氏は自身で学費を負担しながら大学に通った。「生まれた環境に関係なく、やる気次第で誰でも活躍できるサービスを作りたいと思った」(西元氏)
この信念を守るため、これまでのTRUNKはあえて「外部資金を入れない」という選択をした。今回のディップによる株式取得が同社にとって初めての外部調達だ。
もちろん、学生にも月額で課金するほうがマネタイズ面では良い。しかし、外部からの圧力などで信念を曲げたくなかったとTRUNK取締役CTOの布田隆介氏は話す。
「創業当時のメンバーは西元と私を含め3名。当初は西元だけが正社員で、他のメンバーは副業社員だった。会社の売上が上がって給料が払えるようになったら徐々に2人を正社員化すると最初から決めていた」(布田氏)
TRUNKの創業は2015年7月。現在では提携企業数はmixi、GMO、エウレカなど約50社、受講する学生数は年間5000人にまで成長した。「ビジネスもやっと安定し、『お金さえあれば解決できる課題』が増えてきたため、外部調達を行うことにした」(布田氏)
今回新たな資金を調達したTRUNKは今後、受講できるユーザーの対象年齢を29歳にまで広げたり、オンライン講座を導入することで遠隔の学生でも教育を受けられるようなサービス開発に取り組むという。また、自治体との連携で主婦層への職業訓練を提供するサービスもはじめる予定だ。