Facebookの浄化と挽回を期するMessengerのデザイン変更

FacebookのMessengerがデザイン変更されたが、どこが変わったのかに気づく人は少ないだろう。この1週間テストをしてきた私でも、ほとんどわからなかった。なんとなく、閉塞感が薄れた感じがしただけだ。だからこそFacebookは、今朝(10月24日)サンフランシスコのダウンタウンにできた新しいオフィスで朝食付の記者発表イベントを開催し、30人の報道関係者を集めたのだろう。そこには、インスタ映えする「ドーナッツの壁」も用意されていた。タブの数が減り、背景はカラーグラデーションとなり、ロゴが丸くなった程度の、わずかな変更ではあるが、Facebookはこれを機に、はっきりと前向きな新しいサイクルに切り替えたいと熱望している。

古いMessengerと新しいMessenger

Facebookがグループチャット・アプリBelugaを買収して、Messengerとして提供し始めてから7年。これまで機能を増やすことだけに専念してきた。5つのナビゲーションバーのボタン、最大で9つのタブ、ストーリー、ゲーム、ビジネスと増え、Messengerの本来の目的である友だちとのチャットという意味合いがボヤケてきた感がある。「機能を追加し、また別の機能を追加し、それらが積み上がってゆきました」と、Messengerの責任者Stan Chudnovskyは話す。「このまま積み上げてゆくか、 それとも、基本に戻って新しい何かの上に、シンプルでパワフルな機能を追加できる基礎を作るか」

機能満載の古いMessenger

しかし、今すぐ古いデザインを根っこから引き抜き、大規模なオーバーホールを行うことまでは考えていない。「13億人のユーザーを怒らせずに、新しいものを立ち上げるのは不可能です」とChudnovskyは私に話してくれた。「ユーザーにとって本当に本当に大切な使い方を妨げてしまうような行動を、ユーザー自身が取らないよう、テストを重ねるには大変な時間がかかります。しかしその挙げ句、変更を喜んでくれる人はいません。現状維持を望むのが普通です」

そのようなわけでGoogleは、本日から数週間をかけて、世界中でMessengerの控えめなデザイン変更を実施してゆく。画面はシンプルになり、空白部分が増えた。重複箇所が少なくなり、カジュアルな雰囲気になった。それでは、このアプリのビフォー・アンド・アフターを解説しよう。

古いMessenger

これまでは、画面の下に5つのメインのナビゲーションボタンが並んでいた。実際に役に立つ「チャット」セクションの間に、「ストーリー」と、カオスな「ピープル」セクションがあり、電話、グループチャット、オンライン中の「友達」のタブがある。その間にカメラのボタンがあり、しきりに「ストーリー」を投稿しろと言ってくる。ビジネスとユーティリティーのアプリを探すための「ゲーム」と「発見」タブもある。

新しいMessenger

新しいMessenger V4では、ナビゲーションボタンは3つになった。カメラボタンは「ストーリー」の上の「チャット」セクションの中のチャット画面に移動した。「ピープル」にはログイン中の「友達」のリストが組み込まれ、「発見」にはゲームとビジネスが統合された。「ストーリー」は「チャット」と「ピープル」の両方に配置された。ここには、3億人のユーザーに、もっともっとSnapchatのパクリ機能を使わせようとするFacebookの魂胆が見える。

Messengerでは、毎月、ビジネスでは100億件の会話が、ゲームでは17億件の会話が交わされている。どちらも収益につながるものだが、アプリの本来の目的とは外れるため整理された。さらに、Messengerユーザーのおよそ3分の1にあたる4億人が、毎月、ビデオまたは音声での通話をしているが、これらの通話はチャットのスレッドの中からアクセスするようになっているので、Facebookは電話ボタンを全体的に廃止した。

以前ほど目立たないが、従来の機能はすべて残されている。新機能としては、チャットのスレッドに好きなカラーグラデーションを選んでカスタマイズできるというものがある。メッセージを急いでスクロールするときでも、吹き出しの中のグラデーションが確認できる。しかし、要望が多い「ダークモード」の採用は、まだ少し先になる。Facebookによれば、眩さを低減して夜間でも目に優しい画面にする機能を、数週間以内に追加するとのことだ。

もうひとつ、Messengerのロゴがソフトな感じになった。吹き出しと稲妻の模様の鋭い角が丸くなった。このデザインは、Snapchatに対抗して、Messengerは楽しくて、フレンドリーで、しかも速いということを主張しているようだ。

Messenger作戦司令室

情報漏えい、選挙妨害、フェイクニュースが元で引き起こされる暴力事件など、スキャンダルの悪循環に苦しむFacebookにとって、それはMessengerだけの問題ではない。文字通り、またいろいろな意味においてもFacebook全体の問題だ。きれいにして、反撃する。それが、元の状態に戻りたいというFacebookの願望を表している。

その点においてFacebookは、先週、ひとつの成果をあげた。数十人の記者(私も含め)を選挙対策用の「War Room」(作戦司令室)に招き、慌ただしく取材をさせ、宣伝に協力させた。今回のMessengerの発表会では、Facebookが「シンプル」という言葉を我々の頭に植え付けようとしていたため、ちょっとデジャヴュ感があった。Chudnovskyは、Facebookが5月の段階でデザイン変更の話を報道機関に流していたことも話していた。「F8でプレビューしましたが、そのときは作業に取りかかったばかりでした」

これを機に、全社をあげてインターフェイスの掃除をして欲しいと願う。Facebookのメインのアプリには、いい加減なものが多い。たとえば、あまりみんなが欲しがっていないのに、ナビゲーションバーに押し込まれたFacebook Watchだ。Messengerでは、チャットにカメラやゲームをねじ込むことを止めたが、「ストーリー」のボタンは、永遠に消えて欲しいと願う人もいるなか、2つに増えた。ユーザーに何を提示するかよりも、ユーザーが何を求めているかを考えたほうが、Facebookは世界に貢献できるはずだ。

イベント後わずか1時間でニュースを配信しようと、多くの記者はその場に残り、Facebook社内にいながらFacebookの記事を書くことになった。Chudnovskyは、このイベントは、報道を通してユーザーを教育すること以上に、ピクセル単位の細かい仕事をしてきたチームの努力を称えるためのものだと話していた。「これほどの会社で、ロゴひとつ変えるのに、どれだけの会議を開かなければならないか、おわかりでしょう」

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(翻訳:金井哲夫)