英国政府、ポルノサイトの年齢確認の復活なるか?

英国政府は、インターネットプラットフォームのコンテンツに関する包括的な規則を定めた次期法案に、ポルノサイトの年齢制限の設置義務を新たに追加することを発表した。これは、子どもがポルノにアクセスしたり、偶然見つけたりすることを防ぐために、アダルトサイトに「年齢認証技術」の使用を義務付けるという政府の長年の目標の復活である。

デジタル・メディア・文化・スポーツ省(DCMS)は「セーファー・インターネット・デー」に合わせてこの発表を行い、子どもの保護に関する大衆的なレトリックを強化している。

DCMSによると、未成年者のアクセスを防ぐためのポルノサイトに対する法的義務は、ポルノサイトをOnline Safety Bill(オンライン安全法案)の対象にすることで実現されるという。オンライン安全法案は、2021年5月に政府が制定した、でに非常に広範な法案を、さらに拡大するものである。

この法案は当初、ユーザーが作成したコンテンツに付随するさまざまな「害悪」に焦点を当てていた。しかし、児童安全の活動家は、実際のポルノを提案された法的義務の対象外とすれば制度全体が弱体化すると警告し、政府もその点を認めたようだ。

Chris Philp(クリス・フィルプ)デジタル大臣は声明の中で次のように述べる。「子どもはあまりにも簡単にオンラインでポルノにアクセスできます。保護者が『子どもはオンラインで見てはいけないものを見ないように保護されている』という安心感をもてるようにしなければなりません」。

「私たちは現在、オンライン安全法案を強化し、すべてのポルノサイトに適用して、子どもたちにとってインターネットをもっと安全な場所にするという目的を達成しようとしています」。

DCMSによると、今回の法案には、ポルノサイトはどのような年齢認証技術を使用して、利用者が18歳以上であることを「確実に」確認する必要があるかは明記されていないという。

DCMSは「成人側が、安全な年齢認証技術を使用してクレジットカードを所持していることや18歳以上であることを証明したり、第三者サービスに政府のデータと照らし合わせて年齢を確認することなどが考えられる」と提案している。

「新しい法的義務をどのように遵守するかを決める責任は企業自身にあります。Ofcom(英国放送通信庁)は、ユーザーデータの処理を最小限に抑えることができる、幅広い年齢認証技術の利用を企業に推奨する可能性があります」と政府は延べ、次のように続ける。「 この法案は、特定のソリューションの使用は義務付けていません。イノベーションと、将来のより効果的なテクノロジーの開発と利用を可能にする柔軟性が不可欠だからです」。

児童安全の活動家は、オンライン安全法案のさらなる拡大を求めているが、市民の自由権やデジタル権(個人がデジタルコンテンツにアクセスする権利)を訴える活動家たちは、個人の権利や自由に対するリスクを引き続き警告し、あらゆる種類のインターネットコンテンツを規制するという大規模な計画の実現性にも疑問を投げかけている。彼らによると、この法案は、オンライン上の表現を萎縮させる恐れがあると同時に、英国でのデジタルビジネスの障壁にもなりかねないという。

後者についてはともかく、現在検討されているように、ポルノサイトへの年齢確認の義務化や、何らかの形で年齢確認を行い責任を軽減するようプラットフォームに働きかける「注意義務」制度などを盛り込んだ法案が実際に成立すれば、少なくとも年齢認証業界は大きな収益を上げることになりそうだ。

プライバシーや市民的自由に関する批判に対応するために、DCMSのプレスリリースでは、ポルノサイトが導入を義務付けられる年齢認証技術は「完全な身元確認は必要としない」としている。

また、ユーザーが身分証明書などを使って年齢を証明する必要がある「かもしれない」としながらも、企業が導入するソリューションでは「年齢確認の目的とは無関係のデータを処理または保存してはならない」と規定している。

(DCMSのプレスリリースは)「現在利用可能なソリューションには、携帯電話会社が保有する情報とユーザーの年齢を照合する方法、クレジットカードを使って照合する方法、パスポートデータなど政府が保有するデータを含むデータベースを使って照合する方法などがある」として「使用する年齢認証技術は、安全かつ効果的で、プライバシーを保護するものでなければならない」と強調する。

DCMSは、年齢認証技術を「使用または構築」する企業は、英国のデータ保護規制を遵守する必要があり、さもなければ英国個人情報保護監督機関(ICO)から強制措置を受ける可能性があると指摘する。

しかし、政府が同時に国内のデータ保護体制の簡易化を検討していることは注目に値する。DCMSは、人々のプライバシーを低下させることで、デジタルビジネスの「革新」を促進するかもしれないと示唆しているが、より明白な影響、すなわち、商業的なデータマイニングを野放しにした場合、個人のデータ侵害や誤用のリスクは大幅に拡大し、セキュリティ違反やスキャンダルのパイプラインを並べることで、デジタルサービスに対する国民の不信感を確実に高めることになる、という点を考慮していない。

DCMSは、英国の既存の個人情報保護法は、年齢・身元確認の義務化などにともなうポルノユーザーやインターネットユーザーの不正な追跡を防ぐことができると主張しているが、ICOがアドテックによるインターネットユーザーの不正な追跡をまったく阻止できなかったことを考えると、DCMSの主張も批判的に検討する必要がある。ICOが方針を180度転換し、英国のポルノユーザーが私的に楽しむ権利を強固に守るために、注意が大好きで企業に優しい規制当局がポルノサイトの年齢確認基準を積極的に尋問することを想像すると、控えめに言っても相当の不信の停止(批判を一時停止し、非現実なものを受け入れること)が必要がある。

しかし、政府のプレスリリースにはこのような詳細は書かれていない。むしろDCMSは、提案されているオンライントラッキングの拡大を「オンラインでの年齢確認は、オンラインギャンブルや年齢制限のある販売など、他のオンライン分野ではますます一般的になっている」として単に常態化しようとしている。

その上で「業界と協力して、企業が年齢認証技術を利用する際に従うべき強固な基準を策定し、Ofcomもオンラインの安全体制を監督する際にそれを利用できることを期待している」と述べる (つまり「産業界が年齢認証技術をどのように利用するかについては、我々が産業界と協力して考えるから、ユーザーが心配する必要はない」というのが政府の方針なのだ。えーっと……)。

英国政府は以前、ポルノサイトに年齢確認を義務付けようとしたことがある。しかし、年齢確認を義務化することは技術的にも規制的にも困難であり、また、アダルトサイトの利用者全員に本人確認を求めることはプライバシーの観点からも問題があるとの批判を受け、2019年にこの計画をひっそりと取り下げざるを得なかった。それにもかかわらず、政府は、このコンセプトを、すでに準備中のオンライン上の有害性に対するより包括的なアプローチに組み込めるように取り組むとしている。

このような「ポルノブロック」の波乱に満ちた過去や、拡大し続けるオンライン安全法案の範囲と野放図な表現の制限をめぐる現在の論争にもかかわらず、DCMSは法案の見直しを提案するのではなく、さらに項目を追加してインターネットコンテンツの規制を倍増しようとしている。

2月5日、DCMSの国務長官であるNadine Dorries(ナディン・ドリーズ)は、メディアのインタビューに応じ、犯罪コンテンツに新たに追加された項目について言及した。それにはオンラインでの麻薬や武器の取引、密入国、リベンジポルノ、詐欺、自殺の助長、売春を扇動・管理して利益を得ることなどが含まれ、取り締まりを強化するために法案の文言に追加されるという。

同氏は、オンラインやデジタルデバイスを使用したDV(ドメスティックバイオレンス)や強姦・殺害の脅迫に対処するために、新たな刑罰を法案に追加することも発表した。

この追加により、対象となるプラットフォームでは、積極的に識別して削除することが求められるコンテンツの種類が大幅に拡大される(単にユーザーからの問題コンテンツの報告に対応するだけには留まらない)。

つまり、これまでプラットフォームが何十年にもわたって享受してきた法的責任体制が大きく変わることになり、プラットフォームの運営やコスト、オンライン上の言論に大きな影響を与えることになる。

DCMSは2月4日に発表したプレスリリースで、次のように示唆している。「優先度の高い犯罪に積極的に取り組むために、企業は自社サービスの特徴、機能、アルゴリズムが、これらの犯罪への遭遇を防止し、これらのコンテンツの利用時間を最小限に抑えるように設計されていることを確認する必要があります」「これは、自動または人力によるコンテンツの修正、違法な検索ワードの禁止、疑わしいユーザーの検出、利用を禁止されたユーザーが新しいアカウントを作成できないようにするための効果的なシステムの導入などで実現可能です」。

法案で提案されている、この高度に規制されたコンテンツモデレーション体制(コンテンツをチェック・評価して不適切なものを除外する体制)を実施するために手段には、規制に準拠していないプラットフォームに対して最大で全世界の年間売上高の10%という大規模な金銭的罰則が含まれている。また、テロリズムや児童の性的搾取、自殺の助長や詐欺などの増え続ける害悪から人々を守ることができないアルゴリズムやプロセスが発見された場合、上級管理職に対しては懲役刑が科せられる可能性もある。

この法案には、英国の新しいインターネットコンテンツ規制機関であるOfcomにサイトをブロックする権限を与え、英国内でアクセスできないようにすることも含まれている(ということは、これは年齢認証技術を促進するだけではなく、VPNサービスの急成長も後押しすることになるはずだ)。

規制により創出されるかもしれないニッチなビジネスチャンスとしては、政府はエンド・ツー・エンドの暗号化サービスに組み込むことができる技術の開発を奨励しようとしている、という点が挙げられる。この技術では、監視を回避するために強固に暗号化されたコンテンツでも児童の性的虐待に関する情報をスキャンできるようにすることで、法律が適用されるようになる(ただし、ある種の違法なコンテンツをスキャンできるようになれば、他の犯罪や単に有害なコンテンツをチェックする機能を追加しようとする政治的圧力に抵抗するのは難しくなるだろう)。

1つの法律(実際には多くの二次的な法律も存在する)で非常に多くの複雑で微妙な問題を解決しようとすることは、本来ならば政治的な自殺行為であるはずだ。しかし、終わりの見えないコンテンツスキャンダルのおかげでハイテク企業を無責任な利益追求者として描くことが容易になった今、政府はこの法律に過度に単純化した「児童保護」という要素を付け加え、長く待たされたFacebook(フェイスブック)などを「調教」することに対する大衆的な支持を得られる理想的な状況を作り出したのである。

この法案の「ありとあらゆるものを詰め込んだ」性質と曖昧な定義が相まって、結果を予測することは非常に困難になった。連動する要件すべてが実際に何を意味するのかについての明確な指針の欠落は、この提案を推し進める閣僚にさらなる援護射撃となっている。

今回の追加提案の前にオンライン安全法案を精査した2つの議会委員会は、多くの懸念を表明しており、最近では、DCMS委員会が「この提案は言論の保護と有害性への取り組みに欠ける」と警告している

12月には、別の議会委員会が、ビッグテックによる自主規制の時代に終止符を打つという政府の広範な目的を支持しながらも、一連の変更を要求した。

政府は、児童保護活動家から寄せられたポルノサイトへのアクセスに関する広範な懸念とともに、これらの意見を最新の追加法案に反映させたとしている。

画像クレジット:Harshil Shah / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

英国が子どものためのオンライン安全法案の草案を発表

英政府が、オンライン上のコンテンツや言論を規制しようと長きにわたって議論を進めてきた(子どもの)「安全確保」計画を公開した。

Online Safety Bill(オンライン安全法案)制定に向けた動きは、数年にわたって続いていた。以前の計画では、子どもがオンライン上の不適切なコンテンツにさらされることを防ぐ目的もあり、英国内でオンラインのポルノにアクセスする際の年齢確認を義務化する試みがあったが、こちらは非現実的として広く批判され、ひっそりと取り下げられた

当時の英政府は、オンライン上のさまざまな危険を規制する包括的な法案の策定に注力すると述べた。今回、それが達成された様子だ。

145ページにわたるオンライン安全法案は、123枚の補足資料と146枚のインパクト評価とともに、gov.uk(英政府の公式ウェブサイト)のこちらのウェブサイトにて公開されている。

本草案では、ユーザーがオンライン上で違法および / または有害なコンテンツにさらされる危険を防ぐため、ユーザーが生成したコンテンツの管理義務をデジタルサービスプロバイダーに課している。

英政府はこの計画を世界においても「画期的」なものと位置付け「テクノロジー企業が新時代で負う義務の先駆けであり、オンライン界に公平さと責任をもたらすもの」と主張している。

批評家は、プラットフォームによる過度な検閲を促すことで表現の自由が脅かされるだけでなく、提出法案がデジタル企業にとって法務および業務上大きな負担となるため、技術革新の減退につながる可能性があると警鐘を鳴らしている。

議論が本格化するのは、これからだ。

本法案は今後、下院議員による合同委員会で徹底的に調べられたのち、年内には最終版が正式に議会に提出される。

本法案が施行されるまでどのくらいの時間がかかるのかはまだ不透明だが、英政府は議会の過半数を獲得しているため、世間で大騒動が起きたり与党内で多数が反対に回ったりしない限り、オンライン安全法案は確実に制定の道をたどるだろう。

デジタル相のOliver Dowden(オリバー・ダウデン)氏は声明でこう述べている。「本日発表した画期的な法案は、英国が世界を率いるリーダーであることを示すものだ。この法案はテクノロジー企業が新時代で負う義務の先駆けであり、オンライン界に公平さと責任をもたらすものである」。

「私たちは、我々の権利を保護する新たな措置を通じてインターネット上で子どもたちを守り、ソーシャルメディアで見られる人種差別的発言を厳しく取り締まることで、真に民主的なデジタル時代を切り開いていく」。

英政府がオンライン安全法案の草案を作成する上で要した期間の長さは、法によって「インターネットを規制」する試みがいかに困難かという点を裏づけている。

DCMS(デジタル・文化・メディア・スポーツ省)の広報担当者は、以前「インターネットを安全にしようとする政府の奮闘」についてうっかり漏らしたことがある。英国のオンライン安全法案をめぐる勝者と敗者が誰になるのか、現在はまだ疑問だ。

安全性か、民主主義か

本計画に関するプレスリリースにて、デジタル・文化・メディア・スポーツ省はこの「歴史的な法令」が「子どもたちの安全を守り、人種差別を撤廃し、オンライン上の民主主義を保護する」と主張する。

とはいえ、壮大な目標がいくつも並んでいることからわかるように、関連する分野の範囲はとても広いだ。規定の間で矛盾が生まれ、法令の一貫性が失われてしまえば、失敗のリスクも非常に高い。デジタル企業の業務にも、必要なコンテンツにアクセスしようとするインターネットユーザーにとっても足かせとなってしまう。

本法案は広範囲に適用される模様だ。大手のテクノロジー企業やソーシャルメディアサイトにとどまらず、ユーザーが生成するコンテンツをホストしたり、単にオンラインで人と対話するサービスを提供したりするさまざまなウェブサイト、アプリ、サービスが対象となる。

サービスの領域では、違法コンテンツおよび(大手サービスの場合は)有害なコンテンツを削除および / または制限する法的義務が課せられ、ユーザーを保護する義務を怠った場合は多額の罰金が命じられる可能性がある。さらには、子どもの性的搾取に該当するコンテンツについては、警察に報告する義務も課せられる。

放送メディアと通信分野の取り締まりを担当する英国の通信監視機関Ofcom(オフコム)は、本計画にて英国内のインターネットコンテンツの監視機関としての役割も担う予定だ。

オフコムはユーザー保護の新しい義務を怠った企業に対し、最大1800万ポンド(約28億円)または世界売上高の10%(のどちらか高額な方)を罰金として科す権限を持つ。

この監視機関は、サイトへのアクセスをブロックする権限も有するため、プラットフォーム全体を検閲する可能性も潜んでいる。

厳格なインターネット規制の制定を支持する活動家の一部は、役員階級の目を有害コンテンツ防止策の遵守にしっかりと向けるため、CEOに対する刑事制裁も法案に含めるよう英政府に圧力をかけている。大臣らはここまで厳格な措置の制定は予定していないものの、デジタル・文化・メディア・スポーツ省は、将来的には刑事犯罪での役員の起訴も検討するとし、こう補足している。「テクノロジー企業が安全性向上のための取り組みを強化しない場合、この措置を追って導入する可能性もある」。

インターネット上のプラットフォームに対する規制強化については、英国内の世論は大きく賛成に傾いている一方で、問題となるのは具体的な計画の詳細だ。

本計画は英政府が私有企業に言論の取り締まりをさせることになるため、人権活動家や技術政策の専門家らは、当初から本計画がオンライン上の表現を委縮させるのではないかと警告を重ねてきた。

法律の専門家も同様に、この枠組みの非現実性について警鐘を鳴らしている。「有害」といった概念、さらには新たに「民主的に重要」と位置づけられるコンテンツ(英政府は特定のプラットフォームに対し、これを保護する特別な義務を課そうとしている)の定義が困難なためだ。

わかりやすいリスクとしては、デジタル企業が負う膨大な法的責任の不透明さが挙げられる。英国内のスタートアップ企業の革新に加え、サービス提供状況は大きな影響を受けることとなる。

2019年のホワイトペーパーで公開された法案の前身には、表題に「有害」という単語が使われていた。その後、この単語はより穏やかな「安全」に置き換えられたわけだが、法的な面での不透明さは解消されていない。

法案の主眼は依然として「有害」とされる漠然とした何かを抑制することに向けられている。オンライン上のアクティビティにさまざまな形で関連または関係しているものが対象で、なかには違法なコンテンツもあれば単に不快なコンテンツも含まれる(対象の大半は、Instagramなどのプラットフォーム上で自殺に関するコンテンツが子どもにさらされた事例など、注目を浴びたメディア報道に基づいている)。

具体的な内容としては、いじめや暴言(オンライン荒らし)から、違法コンテンツ(子どもの性的搾取)の流布、単に子どもが見るには不適切なコンテンツ(合法ポルノ)まで多岐に及ぶ。

最新の草案を見ると、ある特定のオンライン詐欺(恋愛詐欺)もまた、英政府が法令で規制しようとしている危険の1つのようだ。

包括的な「有害」コンテンツの枠組みを作る英国のアプローチは、欧州連合のDigital Service Act(デジタルサービス法)とは対照的だ。デジタルサービス法は欧州連合のデジタル規則を改訂する目的でオンライン安全法案と並行して策定が進められており、こちらは違法コンテンツに注意が集中している。内容としては、連合内で違法コンテンツの報告手続きを統一すること、そしてeコマース市場で危険な商品が販売されているリスクに対処すべく、顧客の本人確認を必須とすることだ。

英国の法案がオンライン上の表現に影響を及ぼしかねないとする批判に対し、英政府は本日、人々がオンラインで自由に表現する権利を強化する措置を追加で講じると発表した。

また、この措置は英国におけるジャーナリズムの保護に加え、政治に関する民主的な議論を保護する役割も果たすという。

しかし、こうした条項が本来の法案と相反しているように見えることから、このアプローチにはすでに疑問の声が上がっている。

例えば、報道コンテンツの取り扱い方をめぐるデジタル・文化・メディア・スポーツ省の議論によると、ニュース発行社の公式ウェブサイトは法令の対象にはならない(サイトに投稿される読者のコメントも対象外)こと、また対象サービスにて共有された「一般に認知されているニュース発行社」の記事は、報道以外のコンテンツに適用される法的義務からは除外されることがわかっている。

プラットフォームに、報道コンテンツへのアクセスを保護する法的義務があるのは事実だ。(「つまり、『デジタルプラットフォーム』はコンテンツのモデレーションを実施する際にジャーナリズムの重要性を考慮しなければならないということだ。削除されたコンテンツについてはジャーナリストの控訴手続きを迅速に行い、報道コンテンツを恣意的に削除した場合はオフコムから責任を問われることとなる」とデジタル・文化・メディア・スポーツ省は述べている)

しかし一方で、英政府は「市民ジャーナリストのコンテンツはプロのジャーナリストによるコンテンツと同様の保護を受ける」とも述べているのだ。とすると「一般に認知されている」ニュース発行者(対象外)と市民ジャーナリスト(こちらも対象外)、そして単にインターネット上にブログ記事やコンテンツを投稿しているおじさん(おそらく対象?)のそれぞれの線引きは具体的にどのように行われるのか、見方は人によってさまざまだろう。

政治的発言を保護する取り組みは、デジタルサービスにおけるコンテンツモデレーションを複雑化することにもなる。例えば、人種差別的な意見を持つ過激派集団は、自身のヘイトスピーチや差別発言を「政治的意見」としてごまかすこともできるからだ(人種差別主義で有名な活動家も自らを「ジャーナリスト」と名乗るかもしれない)。

デジタル・文化・メディア・スポーツ省の声明によると、企業は「特定の政治的意見に対する差別をしてはならず、所属政党に関わらず、多様な政治的意見を平等に保護しなければならない」という。

「こうしたコンテンツを保護する政策は明確かつ現実的な規定と条件によって定める必要があり、企業がこの政策に従わない場合はオフコムによる強制措置を受けることになる」声明はさらに続く。「コンテンツのモデレーションを行う際は、企業は該当コンテンツが共有されている政治的背景を考慮する他、民主的に重要な場合はそれを高度に保護する必要がある」。

プラットフォームはこうした相いれない条件をすべてバランスよく遵守する責任を負うことになるというわけだ。今後、オフコムが表現の自由を尊重する形でコンテンツモデレーションを行うための行動規範が作成される予定だが、企業が何かミスをした場合はいつでもオフコムから多額の罰金を科せられる危険がある。

興味深いことに、英政府はFacebook(フェイスブック)が考案した「監督委員会」モデルを好意的に受け止めているようだ。この監督委員会では、委員らが「複雑な」コンテンツモデレーションの事例について判断を下す他、発言のニュアンスの取り違いやコンテンツの不必要な削除を招く恐れがあるとして、AIフィルターの過度な使用を抑制している(以前、テロ関連のコンテンツの削除を高速化する目的で、英政府がプラットフォームに対してAIツールの導入を強く求めていたことを踏まえると、非常に興味深い動きといえる)。

「本法案は英国に住む人々がオンライン上で自由に表現し、多元的かつ率直な議論に参加する権利を徹底的に保護する」デジタル・文化・メディア・スポーツ省はこう続けている。「対象に含まれる企業はすべて、自らの責任を果たすうえで表現の自由の保護を考慮に入れ、必要な措置を取らなければならない。これらの対策はオフコムが作成する行動規範で定められるものの、背景情報が重要となる複雑な事例については、人間の監視官を含める必要がある場合も想定される」。

「企業のサービスを利用する人には、正当な理由なくコンテンツが削除された場合に即座に控訴手続きを行う手段を用意する他、不当にコンテンツが削除された場合は、企業は該当コンテンツを再公開しなければならない。ユーザーはまた、オフコムに控訴することができ、こうした告訴はオフコムのホライズン・スキャニング、調査、および強制措置の大部分を形成する」声明はさらに続く。

「カテゴリー1のサービス『最大かつ最も一般的なサービス』には、追加の義務が課せられる。これらのサービスは表現の自由に与える影響について最新の評価を実施してそれを公開し、マイナスの影響がある場合はそれを最小限に抑える対策を行動で示さなければならない。これらの措置はオンライン企業の対策が限定的になるリスクを取り除く他、オンライン安全性の義務を果たすためにコンテンツを過度に削除する事態を防ぐものである。後者の例としては、AIのモデレーション技術が風刺などの無害なコンテンツを誤って有害と判断してしまう場合などが挙げられる」。

本計画においてわかりにくい別の要素は、法案にいわゆる「ユーザーが生成する詐欺」(偽の投資機会についてのソーシャルメディアでの投稿や、デーティングアプリでの恋愛詐欺など)への対応策が含まれていながら、広告、メール、偽ウェブサイトなどを使って行われるオンライン上の詐欺行為は対象外だという点だ。デジタル・文化・メディア・スポーツ省によると「本法案はユーザーが生成するコンテンツにおける危険に焦点を当てている」。

とはいえ、インターネットユーザーが簡単かつ低コストでオンライン広告を作成し、掲載できる(基本的に、Facebookをはじめとするプラットフォームは料金を払う人なら誰にでも広告ターゲティングツールを提供している)のなら、広告による詐欺を規制から除外する理由はあるのだろうか?

どうやら、ここでの線引きは無意味なようだ。数ドル(数百円)払って虚偽の情報を広めようとする詐欺行為は、無料のFacebookページで秘密の投資アドバイスをうたう投稿をする詐欺行為と比べて何ら変わりはない。

つまり、線引きがランダムでずさんな場合、規則の一貫性やわかりやすさが失われ、抜け穴が存在しやすくなるリスクが生まれてしまうのだ。

並行して、英政府は特に大手テクノロジー企業を規制するため、競争を促す壮大な事前規制制度の考案を進めている。大手プラットフォームの規制制度と、有害なデジタルコンテンツを広範囲で規制するオンライン安全法案の2つの枠組みがある中、双方で義務の矛盾や重複が生まれないようにする難題は、まだ前途に立ちはだかっている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:イギリス子どもデジタル・文化・メディア・スポーツ省SNS

画像クレジット:Aping Vision / STS / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)