現場向け動画教育プラットフォーム「tebiki」開発のピナクルズが総額3億円調達、工場や店舗での業務効率化を目指す

現場向け動画教育プラットフォーム「tebiki」を開発・提供するピナクルズは8月15日、シードラウンドでの第三者割当増資による資金調達を明らかにした。引受先は、グロービス・キャピタル・パートナーズ。なお2019年以前に、有安伸宏氏、辻 庸介氏、赤坂 優氏の3人のエンジェル投資家からも出資を受けており、調達総額は3億円となる。

同社が提供しているtebikiは、小売や製造、物流、介護、飲食などの店舗や工場、現場などで働く従業員向けの教育動画プラットフォーム。各業種での日常的な業務を動画と字幕で説明することで、日本人はもちろん外国人労働者に理解しやすい動画を作ることができる。tebikiにはグーグルの音声認識APIと翻訳APIが組み込まれており、日本語音声のテキスト化とその日本語テキストの多言語への翻訳が可能だ。

動画はスマートフォンやタブレット端末で視聴できるほか、動画閲覧データを自動解析してどの従業員がどこまで習熟したかを可視化できるので、リアルタイムで教育の進捗管理も可能とのこと。

今回調達した資金は、主にチームの拡大に投下するとのこと。具体的には、開発、営業、カスタマーサクセス、マーケティング、コーポレートなどの全職種で人材を積極的に採用する計画だ。

同社の代表取締役を務める貴山 敬氏は、三菱商事に勤務していた時代に食品会社の工場長を務めていた経験があり、そのときの工場内での業務効率の問題点がtebikiの開発につながったという。業種によっては半数、3分の2以上が外国人労働者という現場が多い中、業務内容をその都度言葉で教えるのは限界があり、スタッフの理解度も深まらないという問題があったそうだ。

tebikiでは、作成した動画に○、×やブザー音など動画編集が簡単にでき、失敗例と成功例の動画を同時に見せることで、従業員の理解度が深まるとのこと。また音声だけを後から吹き替えることも可能なので、重要なポイントについては動画と音声で強調することもできる。

字幕の自動翻訳の精度について貴山氏は「Google翻訳を使っているため、内容によっては誤訳はありますが、実際の現場では動画と一緒に見るため精度はそれほど問題にはなっていません。むしろ正確性よりもメンテナンス性が重要」と説明する。同氏によると、2分程度の短尺の動画のほうが現場スタッフの理解度が高まるそうで、そうした短尺動画をシリーズにまとめて連続視聴できる機能も備えている。現場スタッフが動画を視聴したかどうかは、各人の自己申告に委ねているということだが「これまでのデータを見る限り、自己申告が正しいことが多く、逆にチェック機能を複雑することでUXの低下につながるほうがデメリット」とのこと。

現場向けの動画サービスとしてスタディストの「Teachme Biz」などが競合になると考えられる。貴山氏はこの点について「手順書ツールのTeachme Bizとはサービスの方向性が少し異なります。tebikiは動画編集に重点を置いており、動画をいかにわかりやすく見せるかという点にこだわっています」と語る。

さらに「実際のところ競合を意識する段階ではない」とも語る。というのも「各業界の現場のDXは非常に遅れており、スマートフォンやタブレット端末を使った動画教育の引き合いは非常に高く、国内の潜在需要をまだまだ掘り起こす段階にある。最大のライバルはWordとExcelで、この環境から現場を引き剥がしてDXを進めることが重要です」と貴山氏。なお現在の顧客は、既存顧客からの紹介や、ウェブ検索でtebikiの存在を知って使い始めた企業が多いとのこと。「現場でもDXの遅れは認識しており、解決するための方法を探している企業がとても多い」とのことだ。

tebikiは現在は、日本人が日本人や外国人のスタッフに作業手順を動画で教えるツールだが、今後は外国人が外国人スタッフに教えられるようにUI/UXの開発も進めたいとしている。日本企業は東南アジアなどに工場拠点を設けることも多いので、そういった企業との協力しながら海外進出も視野入れているようだ。

余談だが社名のピナクルズは、世界の国立公園好きの貴山氏が米国カリフォルニア州のピナクルズ国立公園から名付けたそうだ。