オンライン融資の「クレジットエンジン」がSTORES.jpと提携――資金の前貸しサービスを開始

1月30日に500 Starups Japanフリービットインベストメントなどから総額1億1000万円の資金調達のほか、オンライン融資サービス「LENDY(レンディ)」のベータ版の提供を開始したクレジットエンジン。同社に新たな動きがあったようだ。

ネットショップ開設サービス「STORES.jp」を提供するブラケットと業務提携を結び、STORES.jpのユーザーを対象とした融資サービス「マエガリ」の提供を5月8日から開始していた。

借入金は3種類、返済方法は2タイプ

LENDYは中小企業、個人事業主向けのオンライン融資サービス。独自のアルゴリズムによって、財務情報や信用情報に加え、オンライン会計データ・ECサイトデータ・オンラインバンキングデータ・タブレット型POSレジデータなどのオンラインデータをリアルタイムで継続的に分析しているため、10〜15分ほどで審査が完了する。面倒な書類作成は不要だ。

新サービスのマエガリは、LENDYで開発したオンライン融資機能をプラットフォームとしてSTORES.jpのユーザーに提供するというもの。

実際のイメージ

具体的には、STORES.jpを利用するユーザーの管理画面にマエガリの登録導線が設置され、登録するとSTORES.jpでの売上データが自動的に連携。これにより、面倒な手続きをすることなく、事業に必要な資金を調達できる。

10万円、50万円、100万円の3種類。返済期限は6か月間と決まっているが、ユーザーは毎月返済、一括返済のどちらかを選択可能となっている。また担保の必要もなく、最短2営業日で振込みが行われるという。

海外では2014年5月にSquare(スクエア)が返済期限なしの小売店向けの事業資金の前貸しサービス「Square Capital」を正式開始している。これはSquareが自社の決済サービスでの売上実績などを元に独自に与信調査をして資金を提供するというモデルだが、マエガリもこれと同じく、独自に持つデータ(とSTORES.jpのデータ)での与信調査を行っているというかたちだ。

クレジットエンジンはブラケットとの業務提携を機に、今後もプラットフォーマーとしてオンライン融資機能を法人に提供していき、中小企業や個人事業主の方々の事業運営を支援していく予定とのこと。

「STORES.jp」提供のブラケットがスタートトゥデイからMBO、創業者の光本氏は会長に

創業者で取締役会長となる光本勇介氏(左)と代表取締役兼CEOの塚原文奈氏(右)

創業者で取締役会長となる光本勇介氏(左)と代表取締役兼CEOの塚原文奈氏(右)

オンラインストア作成サービスの「STORES.jp」を主軸にサービスを開発するブラケット。同社は10月3日、マネジメント・バイアウト(MBO:経営陣が、事業の継続を前提として自社などの株式を取得する取引)を実施してスタートトゥデイから全株式を取得したことを明らかにした。

またこれと合わせて、代表取締役の交代も実施した。創業者で代表取締役兼CEOだった光本勇介氏が取締役会長になり、取締役を務めていた塚原文奈氏が新たに代表取締役兼CEOに就任する。塚原氏は2012年にブラケット参画後、光本氏とともにSTORES.jpの成長に寄与してきた人物だ。今後光本氏は新規事業を担当。塚原氏がSTORES.jpを中心とした既存事業を率いる。

ブラケットは2008年10月の設立。まだ「シェアリングエコノミー」なんて言葉が出てくる前にカーシェアリングサービス「CaFoRe」をスタート、靴のカスタマイズEC「Shoes of Prey」の日本版を展開するなどしてきた。2012年9月には現在の主力事業であるSTORES.jpをローンチ。その後2013年7月にはファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが株式交換による完全子会社化を実施した。なおブラケットはスタートトゥデイによる子会社化まで、外部資本を入れることなく事業を育ててきた。

MBOの金額は非公開だが、これは今後スタートトゥデイの開示で明らかになるだろう。株式は今後100%ブラケットの経営陣が保有する。スタートトゥデイによる子会社化は現金ではなく株式交換で行われており、同社の株価は当時の約3倍。当時の株価ベースでは約6億円での買収だったが、ブラケット側は単純計算すれば当時の3倍の金額を得たことになっているはずだ。

STORES.jpのユーザー数はスタートトゥデイ傘下で大きく成長。間もなく80万人に到達するところだという。また金額は非公開ながら流通額も右肩上がりの成長を見せ、営業利益ベースでは2015年10月以降は単月黒字を実現している。「これまでは投資を続けて来たが、いよいよ利益を回収できるフェーズになってきた。するかしないかは全く別の話にはなるが、ビジネス的なゴールとしては上場を狙える過程にも入っている状況」(光本氏)

STORES.jpのユーザー数、流通額、売上・利益の推移

STORES.jpのユーザー数、流通額、売上・利益の推移

スタートトゥデイとの協業ビジネスも手がけていたが、STORES.jpの成長スピートがより加速する中で、「スタートトゥデイは上場企業。悪いことではないが、決断には時間が必要になるケースもある。それであれば一度離れて、ベンチャー的なスピードで判断ができるのがいい」(光本氏)という結論に至った。スタートトゥデイ側もブラケットの判断に共感。円満なかたちでのMBOとなったそうだ。

では今後STORES.jpはどのような展開を進めるのか。光本、塚原両氏は、STORES.jpのユーザーベースをハブに、各種のサービスを提供していく構想を語る。

「今まではストアオーナーが集まってきて、1人1人の売上が立つようになってきた。この(約80万人という)パイを元に収益を出せる仕組み、規模感を生かせる施策をやっていく」(塚原氏)

「やっとまとまった流通額も集まってきた。来店数も結構なもので、毎日何かしらが売れている。するとSTORES.jpの店舗にお金が貯まり、モノが動く。そういったところに1つ1つ関われることがある。それは物流や決済、広告、金融、そういう領域だ。Squareも決済サービスだったが、加盟店ごとの数字が見えるので融資サービスも開始した。だがそれは加盟店が集まっているからこそ。STORES.jpをハブにして事業展開をしていける」(光本氏)

もう少し詳しく聞いたところ、そう遠くない時期に何かしらのかたちで決済サービスの提供を検討しているようだった。STORES.jpの競合サービスを提供するBASEも決済サービス「PAY.JP」を立ち上げているが、同様のサービスが提供されることになるのだろうか(STORES.jpでもすでにID決済サービスは提供済みだ)。ただし「(ブラケット社自体が)PayPalみたいなものを目指すわけではない」(光本氏)とのことなので、外部の決済サービスと組み、STORES.jpのユーザーベースを活用したサービスを提供していくことも考えられる。